54ーディさん再来
森に出掛けた次の日、朝からレオ兄が鳥さん達の小屋を作っているのだ。近所のおじさんにもらった木で、トンテンカンと柵を作っている。
小屋というよりも、逃げられないように庭に柵を作るだけなのだけど。いつまでも庭先に、縄で繋いでおくわけにはいかない。可哀そうだし。
なので今日は、取り敢えず柵だけだ。今後、少しずつ屋根を作る予定なのだ。
俺も何かお手伝いしようと、レオ兄の直ぐそばにいる。
「ねえ、れおにい」
「ん? ロロ、どうした?」
「れおにいとりあねえは、あがらないの?」
「冒険者のランクの事かな?」
「しょう」
単純な疑問だったのだ。一緒にダンジョンに挑んでいた、フィーネやマティはランクが上がったのだ。
だから、レオ兄とリア姉も上がるのではないかと思ったのだ。
「ロロ、EランクからDランクに上がるより、DランクからCランクに上がる方が難しいんだよ」
「しょうなの?」
「そうなんだよ」
「ふぅ〜ん」
なんだか、納得できないのだ。
「Dランクの冒険者と、Cランクの冒険者だと強さが別格なんだ」
「ほぉ〜」
じゃあ、SSランクのディさんなんて化け物級じゃないのか?
「こんにちは〜!」
噂のディさんがやって来たのだ。今日もキラッキラで、見目麗しい。ディさんの周りまでピカピカしている気がするのだ。
「でぃしゃん、こんちは〜」
と、俺は手をフリフリしたのだが、俺より後ろに繋がれているコッコちゃんをガン見しているのだ。
マイペースに、コケッと鳴きながらテケテケと歩き回っている。
「えッ!? フォリコッコじゃない!? どうしたんだい?」
「ふふん。ちゅかまえた」
「いつの間に!? しかも4羽も!」
森に行ったんだよ〜、て説明したのだ。
「なんだ〜! 森に行くなら、僕にも声を掛けてくれたら良かったのにぃ」
どうしてだ? 仲間に入りたかったのか? もしかして、ディさんは寂しがり屋さんなのか?
「アハハハ、ロロ違うよ」
「ロロ、僕達エルフはね、森人と呼ばれているんだ」
「ほぉ〜」
……で?
「あ〜、ディさん。ロロは分かってないですよ」
「え? そう? ロロ、エルフは森に生きる種族なんだ。エルフの国も森の奥深くにあるしね」
「へぇ〜」
よく分からん。けど、コッコちゃんよりもディさんの喜びそうなものがあるのだ。
「でぃしゃん、こっち」
おいでおいでと、手をフリフリと手招きしてディさんをニコ兄の畑に連れて行った。
「な、な、なんて事だよ! どうしたんだ!?」
「森でとったのら」
あの時、ニコ兄が採っていた薬草なのだ。もう綺麗に畑に植えられている。
ニコ兄が丹精込めて耕した畑に、しっかりと根付き葉っぱも生き生きとしている。
今朝もしっかりお水をもらって、色艶もいい。
ディさんなら、びっくりすると思ったのだ。案の定、地面に伏せて薬草の直ぐ近くに顔を寄せてガン見している。綺麗なお顔に土がついちゃうぞ。
「凄い……感動だ! ニコはどこ? どこ行った!?」
「にこにいは、畑のおてちゅだいなのら」
「ええーッ! いないの!? 話を聞きたかったなぁ」
残念でしたね〜。
そして幸せそうに、特盛サラダを食べているディさん。キラッキラなディさん。
とうとう自分で野菜を収穫して、サラダを作ったのだ。今日は特盛サラダのトッピングに、ププーの実も載せてある。
「ここのお野菜が1番だよ〜。ププーの実もあるなんて、スペシャルだ〜」
そりゃあ、よかったのだ。
「ロロ、もう少しで柵が出来上がるよ」
「おおー、こっこちゃんいれる?」
「うん、午後から入れて放してみようね」
「まさか、あのフォリコッコを捕まえてくるなんてね」
俺にしてみれば、どうして今まで飼おうと思わなかった? て、感じなのだ。
弱いし、飛べないし、賢いからこっちの言っている事も理解できる。飼いやすいと思うのだ。
「ロロ、捕まえられなかったんだよ」
「こんろから、おしゅわりでいっぱちゅなのら」
「アハハハ、そうだね」
「え? 何? 何?」
ディさんに、コッコちゃんの捕まえ方を教えてあげよう。
「え……」
「おしゅわりなのら」
「えぇーッ!?」
うんうん、と頷く俺。どうだい、画期的だろう? 誰も思いつかないだろう?
「ププーの実が生っている今がチャンスですよ」
「しょう、ちゃんしゅなのら」
「フォリコッコが、実を食べに出てくるから」
「しょうしょう。出てくるのら」
「アハハハ! だからって、普通そこで『お座り』なんて思いつかないよ! ロロは面白いなぁ」
ん? そうなのか?
「れも、お手々もださなきゃらめなのら」
「ん? 手を?」
「そうなんですよ。お座りって言う時に、掌をフォリコッコに向けるんです」
「ちょっと待って。それって、テイムしてるんじゃない?」
テイム? また知らない言葉が出てきたのだ。
テイムとは、獣や魔獣を味方として使役する事をいうのだそうだ。
「テイミングとも言われるけどね、こっちの力量で、テイムできる獣や魔獣の強さが違ってくるんだ」
こっちの力量とは? 魔力量をいうらしい。コッコちゃんなら弱いから誰でも出来るんじゃないかな? だって、ちびっ子の俺でも苦労せずにできたのだから。
「ロロ、そんな事はないんだよ。テイムされる方も受け入れなきゃできないんだ。力業では駄目なんだ」
ほうほう、なるほど~。でも、コッコちゃんは俺やレオ兄にも懐いているから、2人でテイムしているのかなぁ? ならまたレオ兄に、ギルドで登録してもらわなきゃなのだ。
「ふふふ、ロロは可愛いね~」
ん? 話が変わったぞ? どうした?
お読みいただき有難うございます!
『お座り』でテイムしちゃうとは、エルフのディさんも驚きです。^^;
宜しければ、評価やブクマをして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。