514ーそれぞれの役割
レオ兄がいつもそうしているのを、ディさんは知っていたらしい。
「その経験と、何より精霊眼で見たレオの魔法適性でっす」
「だよね、レオとロロはとても魔力が多い。ロロもハンカチやリボンに付与しているだろう? だからだよ」
本当は、もう少し大きくなってからって思っていたのだけど。とディさんが言った。
まだちびっ子だから、魔力量を増やすのを優先させる方がいいのだって。よく分からないけど。
「小手先の器用さを覚えるより、基本的なことをね」
そう言いながら、バシコーンとウインクをした。だからディさんのウインクは破壊力があるから、滅多なことでは発動しない方がいいと思う。目がチカチカするぞ。
それまで黙って聞いていた伯母様が、そっと手を上げて言った。
「では、私はお義母様と一緒にポーションをできるだけ作っておきますわ」
「そうね、そうしましょう」
「私も手伝います」
お祖母様と伯母様、エルのお母様のティーナさんが一致団結だ。
「いえ、ルイーゼ様はロロとレオと一緒に付与の特訓でっす」
「え? 私がですか? もうおばあちゃんですけど」
「おやおや、関係ありませんよ。四兄弟の魔力が多いのは母上の遺伝でっす。その母上はルイーゼ様の能力を受け継いでいるのでっす」
ちなみに、ルイーゼ様ってお祖母様のことだ。家族が多いからお名前を覚えるのも大変だ。
「クロエの……そうですか。なら私も一生懸命やらせていただきますわ」
「はい、そうしましょう」
「クリスティー先生、ディさん、俺は何もできないのか?」
ニコ兄が、悲しそうな表情をしていた。俺は自分のことでいっぱいで、ずっと手を繋いでいてくれたニコ兄の気持ちを考えていなかった。
ニコ兄だって役に立ちたいはずなのに。俺よりずっと、悔しいはずなのに。
「ニコには、ポーションに挑戦してもらいまっす」
「ポーションって……俺、作ったことないぞ」
「レオやロロが作っていたからだよね」
「ディさん……だって俺、レオ兄やロロほど魔力操作できないし」
「そうだね、少し前はそうだった」
少し前はとディさんは言った。分かった、俺はそこで気が付いた。ニコ兄はディさんと出会った頃は、魔力操作の練習なんてしていなかった。きっと練習するつもりも、そんなになかったのだろう。
だけど、お墓参りに行ってからニコ兄は変わった。帰りにちょっと練習しただけで、魔力操作をマスターした。それに、畑で色々試しだした。こうしたら土がフカフカになるとか、水やりが楽になるとか。
教会の畑を見てもらった時に、俺は驚いたもの。いつの間に、そんなことができるようになったのかって。
「ですので、ローゼ様、ティーナ様、ニコに教えてください」
「ええ、お任せください」
「ニコならできるわ。いつもニコが薬草畑に、魔法で水やりをしているのを見ていたもの」
「おう! 俺、頑張るから!」
ふむふむ、良い感じにまとまってきた。
「ええーん! 私はすることがないじゃないー!」
ああ、また泣いてる。ロッテ姉は討伐隊だろう? だって剣が使えるのだから。
「そうですね、ロッテは皆と一緒に特訓いたしましょう」
「ええー! 特訓ですか!?」
「クリスティー先生、私もです!」
「はい、そうですね」
リア姉はやる気だぞ。お転婆さんなりに、300年前の辺境伯令嬢に感化されたのかも知れない。
「そうですね、今は言い伝わっていないのですが、少しお話ししておきましょう」
そう言って、クリスティー先生がお話してくれた。
ひとまとめに俺たちは300年前と思っているけど、リア姉が言っている辺境伯のご令嬢が魔族と戦ったのはその20年前らしい。
「その時から魔族は侵略を考えていたのでしょうね」
王城や王都を侵略しようとしていたらしい。気がつけば当時の王族たちが精神干渉されていた。
それに気付き、精神干渉をされていた者たちを解呪し王城を奪還した。そして一度は魔族をやっつけたと思ったのに、翌日もっと大きくなって王城を半壊させて魔族が復活したらしい。
「その時に皆と一致団結して、最後は令嬢の大魔法で討伐したのでっす」
「クリスティー先生、剣ではなく魔法なのですか?」
「ええ、そうでっす。魔族というのは大抵物理攻撃をしても、超回復をしてきます。例えば、片腕をぶった切ったとしても、また生えてくるのでっす。にょきにょきと」
げげげ! 腕がにょきにょきだって!
「ぴぇッ!」
「ひょーッ!」
聞いていた俺とエルは、ちょっとお尻を浮かせてしまうほどびっくりした。だって腕が生えてくるのだって。そんなの無敵じゃないか。
「ですので、魔法でとどめを刺したのですね」
「姉上、魔法だって」
「レオ、私だって!」
いやいや、リア姉といったら体力派だろう? 青い炎の魔法が使えるけど、でもそれだけじゃ駄目ってことだろう? だって『大魔法』ってクリスティー先生が言ったもの。
「ですから、リア。あなたはディと特訓でっす」
「はい! クリスティー先生」
「はい、良いお返事でっす」
ニッコリとしたクリスティー先生。なんだか学校の先生みたいだ。
これですることは決まった。と思っていたのだけど。
「ぼくは?」
おっと、エルを忘れていた。さあ、特訓だ! と思っていたら、エルは何も言われてない。




