51ーお休みは終わり
鳥さん達は、あっという間にププーの実を食べ終わった。そしたら、目をキラーンと光らせたかと思ったら、4羽で一斉にププーの実が生っている木にキックをし出したのだ。
「コッコー!」
「コケッコッコー!」
「コケー!」
「コッコッコー!」
うわぁ~、まるでカンフーなのだ。飛び蹴りなのだ。
蹴り出した鳥さん達は、手をバタつかせてアチョーッと叫ぶ代わりに、コケーッ! と鳴いている。
さっきまでの、おとぼけ鳥さんとは別人……いや、別鳥なのだ。
「やだー! 可笑しい~」
「アハハハ! そんなに食べたいんだ」
「キックしてるぞ」
「ふふふふ」
「これは新しい発見ですね」
みんな4羽の鳥さんに注目だ。
そのうちププーの実が1個、コロンと落ちて来た。すると4羽がそれに群がる。
バキィッと足で踏んづけて割り、黄色い嘴でツンツンと突きながら実を皮ごと食べている。足で割るっていうのも、足癖が悪い。
「うまうまらから、しゅきなんらね~」
「ロロ、呑気だな」
「にこにい、しょう?」
「そうだよ。でも良かったな。連れて帰れそうだな」
「ね~」
この後、ププーの実を2個食べて鳥さん達は満足したらしい。
大人しく『コッコッコ』と鳴きながら俺の足元に寄って来た。本当に、危機感も警戒心もない鳥さんなのだ。
「ロロに懐いちゃったかな?」
「れおにい、しょう?」
「ああ、このまま連れて帰ろう」
「うん」
ところで、ププーの実以外にこの鳥さんは何を食べるのかな?
「主に草だね」
なら、大丈夫だ。飼えるのだ。
1羽で何個卵を産むのかなぁ? ピカの話だと、毎日複数個産むらしいし。4羽も捕まえちゃったから多いかもね。
「近所の何軒かに分ける?」
「姉上、そうするにしても先ずはうちで飼ってみなきゃ」
「そうね」
「すごいわね、魔鳥を飼うなんて」
「普通は思いつかないよ」
ふふん、そうかなぁ~。へへへ~。
「ロロ、得意気だね」
そりゃあ、美味しいお肉と卵をゲットしたのだから。
森からの帰り道、俺はピカに乗せてもらっていた。
鳥さん達は、レオ兄が縄を持っている。それが、大人しく付いて来るのだ。コッコッコッコと、鳴きながらだけどね。
でも、魔獣が出てくると素早くレオ兄の後ろに隠れている。本当に、弱いらしいのだ。あんなに飛び蹴りできるのに。
鳥さん達は、初めて森から出たのだろう。森を出た時に、『コッコー!』と立ち止まって鳴いていたのだ。羽をバタバタさせている。
驚いているのか、感動しているのか、そんな感じだった。
「俺達とうとう森を出たぜ」
と、でも話してんのかなぁ? とっても表情豊かな鳥さん達なのだ。良い子だ。慣れてくると、ちょっぴり可愛い。
「こっこちゃん、おりこうしゃんなのら」
「ロロ、コッコちゃん?」
「しょう、とりしゃん」
「アハハハ、コッコちゃんかぁ」
「んふふ」
「楽しそうだね」
「うん、今日はとってもたのしかったのら」
「それは良かった」
お魚やププーの実も沢山採った。それに、リア姉がお肉も欲しいと言って、兎さんも狩っていた。
「今日のばんごはんは、ごちしょうなのら」
「そうだね」
家に帰るとマリーやユーリアが待っていた。そして、驚いていた。
「まあまあまあまあ! 鳥さんですか!?」
「えぇ!? 魔鳥!? お魚捕りに行ったんじゃないの!?」
マリーの『まあまあ』がいつもより多い。
そりゃそうだよね~。予定には全くなかった鳥さんを連れて帰ってきたのだ。しかも、狩ったのではなく、生きたまんまなのだ。
「フィーネ様達も食べていかれますよね!?」
「マリー、ありがとう」
「ごちそうになるよ」
「はいはい、ゆっくりしていってくださいな」
キッチンに、ピカがドサッと出した。お魚とププーの実だ。
「ユーリア、この実が超美味しいんだ」
「そうなの? 食べた事ないわ」
「だろう? 俺も今日初めて食べた」
そんな事を言いながら、みんなで夕飯の用意だ。
「ユーリア、ご近所にお裾分けしてきてちょうだい」
「は~い」
お魚とププーの実をお裾分けなのだ。そうそう、そうだ。
「まりー、びおじいにももっていく」
「まあ、教会にですか?」
「うん、みんなよろこぶ」
「そうですね、そうしましょう」
そうそう、美味しいものはみんなで食べよう。ピカに、収納してもらっておくと傷まないし。
お魚は、マリーがムニエルにしてくれた。身の色もそうだけど、サーモンみたいでとっても美味しかったのだ。兎肉のシチューもある。
それにデザートは、ププーの実だ。マリーとユーリアが美味しくてびっくりしていたのだ。まだ、お仕事から帰っていないエルザの分も取っておかないとね。
その日はとっても賑やかだった。
今日は朝から、ずっと楽しかったのだ。
初めて森に行った。初めて魔魚を見た、食べた。ププーの実も初めて食べた。
それに、鳥さんだ。今はお外で仲良く眠っている。小屋が出来るまで、縄は付けたままだ。
初めての事を沢山経験したのだ。
フィーネとマティも、沢山食べて楽しそうに笑っていた。少し前はダンジョンを攻略するんだと、無理をして大怪我をしていたとは思えない良い笑顔なのだ。
「また一緒に出掛けましょうね~!」
「今日は楽しかった! 有難う!」
そう言って、帰って行った。
そして、2人の休暇は終わった。
「次の長期休暇にまた来るわ」
「また一緒にダンジョンに潜りましょう」
と言って、学園に戻って行ったのだ。
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