496ーリアの魔力量
だって当たり前のように、リア姉が練習しろなんて言うから。
「なによ、笑ったわね」
「だって姉上、アハハハ」
とうとう、レオ兄が声を上げて笑ってしまった。本当に、リア姉がそれを言うか? て、俺たちは思った。
お墓参りに行くまで、魔法の練習なんてまともにしなかったリア姉が。
それを考えると、リア姉の成長は目を見張るものがある。
「れおにい、りあねえが、かちゅやくしたって」
「そうだよ、魔鳥の卵がびっしりあった巣を凄い炎で焼いたんだ」
「ひょぉーッ! しゅごいのら!」
そんなこと、お墓参り前にはできなかっただろうに。
「コツを掴めばできるわよ」
あ、リア姉ったら無自覚で天才っぽいことを言っている。でもリア姉もお母様の血を継いで、魔力は高いのだろう。
「もう、魔力切れにならないかとヒヤヒヤしたよ」
「レオ、そんなのならないわよ!」
「わふ」
「アハハハ!」
「ねえ、ピカは何て言ったの!?」
「ぎりぎりらったって」
「え、そうなの?」
あらら、自分で分かっていないらしい。これはもっと練習しないと駄目だね。
「れおにい、らめらめらね」
「ふふふ、そうだね」
「俺、レオ兄みたいになれるように練習しよう」
「ニコ! どういう意味よ!」
ふふふ、無事で良かった。こんな話ができて良かった。本当に、心配だった。
そこにお祖父様が深刻そうな顔をしてやって来た。
「レオ、少し良いか? 今日のことなんだが」
「はい、お祖父様」
一緒に行ってしまった。なんだろう? もう巣は焼いたのだろう? なのに、お祖父様はどうしてあんな顔をしているのだ?
とってもヤバそうな顔だった。そんなに思うくらいに、大きな巣だったということなのかな?
「ちょっとね、クリスティー先生に相談しないといけないことがあるんですって」
「え、なんだろう? クリスティー先生ってエルフの先生だよな」
「そうね」
「くりしゅてぃーせんせいは、こえーじょ」
ふふふ、エルったらまた言ってる。クリスティー先生の授業を抜け出して、追いかけられたとか言っていたね。
「さあさあ皆様、休憩してくださいな。中にお茶をご用意してますよ」
マリーが呼びにきた。はいはい、お邸の中に入ろうねと移動していた時に、ロッテ姉が走ってきた。
「リア!」
大きな声で呼びながら、リア姉に両手を広げて抱きついた。
「ロッテ、大丈夫よ」
「だってぇ、心配だったのよーぅ! ええーん!」
泣き虫ロッテ姉は、号泣だ。リア姉から離れそうもない。
「あー、ろってねえは、いちゅもああなんら」
「ふふふ、しんぱいらったのら」
「しょうらけろな、ええーんってなくんら」
本当に、ええーん! て大きな声で泣いている。俺より泣いてるぞ。それってどうなんだ?
リア姉がまるでお姉さんみたいに、ロッテ姉の肩をポンポンとしている。困った顔をしながら苦笑いだ。
「私も行きたかったの! 本当に心配だったの! ええーん!」
「もう、ロッテったら大丈夫だって」
ずっと年下の俺が見ても、ロッテ姉って可愛らしい。リア姉のことが心配でこんなに泣いているロッテ姉を見ていると、ちょっぴり微笑ましく思ってしまう。良い子だよね、なんてさ。
そんな生温かい空気をぶった切ったのは、マリーだ。
「はいはい、ロッテ様もお邸に入りましょう」
「うう……マリー、分かったわよぅ」
三人で歩いて行く。そのすぐ後ろを俺たちが行く。ふとお空を見てみると、あんなに魔鳥さんでいっぱいだったお邸の上のお空が、少し暗くなってきていた。
夜の匂いが混じりだした風が、そよそよ~っと俺の短い前髪を揺らしていく。ほんの数時間の出来事だったのに、とっても長く感じた。
「ふぅ~」
「ろろ、ろうした?」
「もうゆうごはんの、じかんなのら」
「しょうらな」
「なんだ、ロロはお腹が空いたのか?」
「にこにい、ちょっとらけ」
だってなんだかまだ俺の小さなお胸が、いっぱいで夕ご飯どころじゃない。だけど、習慣って怖いのだ。
――キュルルル~
「あ……」
「ろろの、おなかのおとらな」
「なんだよ、お腹空いてんじゃないか! アハハハ!」
みんなで笑えて良かった。一時はどうなるかと思った。
あの女神がわざわざ教えてくれるくらいだ。あんなにたくさんの魔鳥が襲ってくるなんて、思いもしなかった。
これっていくら教えてくれてたって、驚いてしまう。
巣にはきっと、もっとたくさんの魔鳥がいたのではないかな? リア姉がそんなに大きな炎で焼くくらいなのだから。
それに卵ってどうなのだ? もし気付かなくて、それが全部孵っていたらと思うとゾッとする。
ピカが、魔力切れになるまでギリギリだったと言っていた。リア姉も魔力量は多いとディさんが言っていたもの。どれだけ焼いたのか。
そんなことを考えると、本当に無事で良かったと思う。
「ロロ、どうした?」
「にこにい、りあねえが、ぎりぎりまれ、ほのおでやいたんらって」
「そう言ってたな」
「しょんなにおおきな『す』らったのら。きっとまちょうも、いっぱいいたのら」
「ああ、そうだろうな」
「ぶじれ、よかったのら」
「本当にな。けど、ピカもいるんだ。リア姉もレオ兄も強いぞ」
「うん」
そうなんだけど、それでも心配なことには変わりない。
「わふ」
「うん、ぴか」
ピカが大丈夫だよって言ってくれた。僕が助けるほどでもなかったよって。




