493-やるのら!
「ロロ坊ちゃま!」
「ロロ!」
「ろろ!」
みんな俺を呼んでるけど、大丈夫だ。まだ部屋を目掛けて飛んでくる魔鳥はいない。きっとこっちに気付いていない。
「あった、ちゅえ!」
テーブルに置いていた魔法杖を手にする。ふと後ろを見ると、ニコ兄とエルも走ってきていた。
結局みんな並んで、バルコニーがある大きな窓からお外を見ている。
お邸の上空を覆うくらいの数の魔鳥が、ホバリングして待機している。目線の先は、お邸の前庭だ。そこにきっとお祖母様やテオさんたちがいるのだろう。兵士さんたちもきっと出ているはずだ。
俺たちが部屋の中から見ていると、庭から二つの大きな風の刃が魔鳥目掛けて飛んだ。まるで死神が持っている大鎌のように、魔鳥に襲い掛かる。
「あ! あれ! じいじと、とうしゃまら!」
エルは分かるのか? えっと、伯父様とフィンさんの風属性魔法ってことかな?
「旦那様とフィン様も応戦されているのでしょう。お二人は風属性魔法を使われますから」
ウォルターさんが解説してくれた。よく知っているのだね。俺は全然知らないのだけど。
風属性魔法といえば、レオ兄だ。やっぱ使う魔法の属性も似ているのかな。
俺も風の刃を出せるぞ。ディさんが作ってくれたこの魔法杖を使うと威力は増大だ。
「よし! やるのら!」
そう言いながら、決意の拳を掲げる。
「おー!」
エルも一緒になって拳を上げている。手にはエルのピコピコハンマーを握りしめて。
「ロロ、エル、駄目だぞ! 前と違って今日は数が多すぎる!」
そんなことを言いながら、ニコ兄だって手にしっかりと、ピコピコハンマーを持っているじゃないか。
「坊ちゃま! 危険ですよ!」
「駄目です、坊ちゃま!」
マリーとウォルターさんが止めるけど、このままただ隠れているのは嫌だ。みんな魔鳥と戦ってお邸を守っているのに、俺たちだけ逃げるのか?
リア姉とレオ兄は大丈夫だろうか? こっちにまでこんな数の魔鳥が飛んできている。なら巣の方はどうなのだ? ピカが付いて行っているから、大丈夫だと思うけど。
「キュル」
「あー! ちろ、おねがいなのら!」
「キュルン!」
そうだった。ピカだけじゃない。チロだって凄いのだ。
チロの体がペカーッと光った。これでみんなに身体強化と防御力アップをしてくれている。それにサシェがあるから、防御は完璧だ。
「ロロ、今のチロはあれだよな!」
「しょうなのら! つよつよなのら!」
「いみわかんねーじょ」
エルったら分かって。とにかく、ちょっぴり強くなっているはずだ。
バルコニーに出ようと大きな窓に手を掛ける。
「ロロ、外に出るのか?」
「にこにい、こうげきしゅるのら!」
「絶対に、前に出過ぎないって約束できるか!?」
「ええー」
「でないと、こうげきれきないじょ!」
「危ないって言ってるだろう!? 約束できないなら、窓は開けないぞ!」
こんなところで、ニコ兄に止められちゃった。これは仕方がない。
「やくしょくしゅるのら」
「おー、しゅるじょ」
「絶対だからな!」
うんうん、と頷きながらニコ兄を見つめる。
仕方ないといった感じを醸し出しながら、窓を開けてくれた。でも、俺は分かっている。ニコ兄だって、やる気なのだ。
開けてもらった窓から、トコトコとバルコニーに出る。お外に出ると、鼻をつく臭いがした。鉄のような、獣臭のような?
「くちゃいのら」
「ほら、伯父様たちがもう何羽も倒してるんだ」
ニコ兄が冷静に状況を見ている。下を見ると、確かに魔鳥が彼方此方に落ちていた。羽がバッサリと切られたもの、首ちょんぱのもの、だからこの臭いなのだろう。
それでも上空にはまだ沢山の魔鳥がいる。次々に翼を畳み、弾丸のように攻撃してくる。
――ボボーン!
え……。俺はちょっと呆気にとられちゃった。あんなに駄目だと俺を止めていたニコ兄が、まさかの先制攻撃をしていた。
ピコピコハンマーを振り下ろして、魔力の衝撃派みたいなのを飛ばしている。
「もう一回だ!」
――ボボボーン!
「にこにい! じゅるいのら!」
「ぼくもやるじょ! とおッ!」
――チュン!
エルもニコ兄の真似をしてピコピコハンマーを振るけど、まだ慣れていないから魔鳥に届かない。
いやいや、衝撃派みたいなのが飛んだだけでも凄いぞ。やっぱエルは魔法の才能がある。
苦手といいながらも、お祖母様にちゃんと教わっているのだろう。
「くっしょー! とどかねー!」
とっても悔しそうにしているエル。飛ばす前に、もっと魔力を集めれば良いと思うのだよ。
だから魔力制御できるようにならなきゃと言っているのに。
「ロロ! 何ボーッとしてるんだ!」
おっと、そうだった。俺ってばいつもこんな時に違うことを考えてしまう。どうしてだろう? 注意力が散漫だ。
「やるのら! えいやーッ!」
俺は身体全体を使って、短い魔法杖を振り下ろした。これって腕だけで良いと思うのだけど、ついね。力が入って身体全部で振ってしまう。
魔法杖はちゃんと反応して、大きな風の刃が魔鳥の群れの間をぐる~ッと一周する。
ボトボトと落ちる魔鳥を、下で待ち受けているのは剣を構えた兵士さんたちだ。バッサリと切って止めを刺している。
良い連携だ。俺たちはとにかく魔鳥を落とそう。




