473ー完成
ピコピコハンマーが乾くまで数日。しっかり中まで乾かさないといけないから。と言ってるのに、毎日お祖父様は聞いてくる。
「ロロ、最初と色が違うぞ。もう良いのではないか?」
「らめ」
色までチェックしているらしい。毎日何度も見ているからと、エルが危機感を抱いていた。お祖父様は余程楽しみなのだろう。
身体が大きくて強くて立派な剣を使うお祖父様なのに、こんなところはとっても可愛らしい。毎日ピコピコハンマーの前でエルと攻防戦が繰り広げられている。
「おおじいじ、らめ」
「らめ、えるのらから」
「おう、分かっているぞ!」
本当に分かっているのか怪しい。だから毎日ピコピコハンマーの前でエルと一緒に腕を組んで立ちはだかり、お祖父様を牽制している。
「大旦那様も分かっておられると思いますよ。珍しいから興味があるのでしょう」
毎日俺とエルの側で、穏やかな表情をして攻防戦を見守っているウォルターさんがそう言う。
「ちげー、あれはじぇったいに、ねらってるじょ」
「おやおや」
ウォルターさんはチロに治してもらってから、すっかり元気になって毎日俺たちちびっ子の見守り担当だ。
前にエルと黙って冒険に出てから、俺とエルには見守り担当が付いている。信用がないのだ。だって、やらかしちゃってるから。
「うぉるたーしゃん、ちゅいてなくても、らいじょぶなのら」
「しょうらじょ。みはってなくてもいいじょ」
エルったら『見張ってる』と言ってしまった。俺はわざわざ見守りと言っているのに。
「こちらでは、私の仕事はありませんからね。私も仲間に入れてください」
「しょうか?」
「はい、そうですよ」
うまいことを言ってるけど、実質見張っている。
そんな数日のお祖父様とエルの攻防戦を経て、ピコピコハンマーが乾いた。どどんとお披露目だ。
「おおじいじ、しょっからうごいたら、らめ!」
「エル! 近くで見たいんだ!」
「じぇったいに、てをだしゃない?」
「おう! 約束しよう!」
「おとことおとこの、やくしょくらじょ!」
「もちろんだ!」
ピコピコハンマーで、そんなに盛り上がってくれて俺は嬉しいよ。しかもお祖父様だけじゃなく、伯父様やテオさんまで見にきている。ウォルターさんも少し離れて見ている。見守り担当だからね。
「ロロ、できたのか?」
「おじしゃま、かんしぇいなのら」
まずは俺が手に取り、完璧に乾いているか確認する。下から見たり横から見たり。うん、大丈夫そうだ。
「える、ふってみる?」
「いいのか!?」
だってエルに作ったのだもの。最初はエルだ。
ピコピコハンマーを手渡すと、エルが両手で持った。
「え……ろろ、かるいんらな」
「しょうなのら。けろ、かたくてちゅよい」
「よし!」
エルがピコピコハンマーを掲げ、両手で思い切り振り下ろす。
「とおッ!」
勢いよく空を切る。でも、叩いてないからね。
「エル、腰が入ってないな!」
「おおじいじ、しょこじゃねー」
ぷぷぷ、お祖父様は触りたくて仕方ないらしい。手がワシャワシャと変な動きをしている。
「父上、大人気ない……」
「何を言う! 興味があるだろうが!」
「アハハハ! エル、地面を叩いてみないとだ」
「え、ておにい。しょうか?」
「そうだよ。な、ロロ。お手本を見せてやってくれよ」
え? お手本も何も、ただ地面を叩くだけだ。
「ぴか、らして」
「わふん」
ピカがコロンと俺のピコピコハンマーを出してくれる。そこにニコ兄がやってきた。
「なんだ、乾いたのか?」
「にこにい、しょうらのら」
「みんな集まっているから何かと思った」
ニコ兄がいるなら、もう一緒に叩くしかないじゃないか。
「にこにいも、ばしこーんて」
「俺も叩くのか?」
「いっしょに、しゅるのら」
だってきっと、ウケると思うよ。思わずニマニマしてしまう。
「ピカ、俺のも出してくれ」
「わふ」
ニコ兄のピコピコハンマーもコロンと。ふふふ、面白くなってきた。
「ほう、少しずつ形が違うんだな」
「父上、それより音ですよ。音」
「テオ、音って土で作ったものなのだろう?」
「そうですけど、まあ見ていてください」
テオさんは知ってるものね。あの予想外の音を。
俺はしゃがみ込んで、地面を軽く叩く。
――キュポン!
そして、ニコ兄も一叩き。
――ボボン!
「アハハハ! なんだその音は!?」
「ね、面白いでしょう?」
あれれ? ウォルターさんが前に出てきたぞ。キラッキラした目で見つめてくる。
「ニコ坊ちゃん、ロロ坊ちゃん、なんて楽しい音ですか!? それはロロ坊ちゃんが考えられたのですか?」
「ちがうのら。なんれかわからないけろ、おとがしゅるのら」
「おやおや!」
もしかして、ウォルターさんも叩いてみたいのかな? ん? やってみるか?
「ウォルターしゃん、やってみる?」
「よろしいのですか? 是非!」
やっぱやってみたかったのだね。貸してあげよう。
ウォルターさんが、期待に満ちた表情で地面を叩いた。
――パコン
「「え……?」」
思わずニコ兄と一緒に驚いてしまった。あのおマヌケな音がしないぞ。どうしてだ?
「ロロ、これはレオ兄案件だな」
「しょうなのら」
二人で腕を組んで考えるポーズだ。ニコ兄も様になっているではないか。
お読みいただき有難うございます!
応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。
ピコピコハンマーが続いてますが(^◇^;)
ウォルターさんが叩いてもあの音は鳴りませんでした。さて、どうしてでしょうね。
ちょっぴり、引っ張りすぎかな? とも思うのですが、次回をお待ちください。
もう4巻をお読みいただいた方もおられるようです。ありがとうございます!
webにはなかったお話が登場しました。巻末の書き下ろしも力を入れてまして、webには書いていなかったことが明らかになってます。
四英雄も登場しました。
まだの方は是非お手に取っていただけると嬉しいです(*ˊᵕˋ*)ꕤ*.゜
よろしくお願いいたします!




