47ーご無沙汰です〜
仕方がない。だって今日は沢山歩いたし、お腹いっぱいだし。ププーの実も沢山食べたし。
「わふん」
「ぴか、しょう?」
「わふ」
無理しないでもたれて寝るといいよ。と、言ってくれている。
「シールドの中で少し寝るといいよ」
「うん、れおにい」
俺は両手を出す。レオ兄が抱っこして連れて行ってくれる。
「わふ」
「うん、ぴか」
「キュルン」
横たわったピカにもたれる。尻尾で包んでもらって、俺はモフモフに埋もれる。チロも一緒だ。
ピカの毛は極上の手触りなのだ。少し高めの体温も気持ちいい。ピカの鼓動も安心するのだ。
「安心しな、みんな直ぐそばにいるからね」
レオ兄が頭をそっと撫でてくれる。
もう目を開けていられない。瞼が重い。俺は抗えなくて、ゆっくりと目を閉じた。
ああ、眠ってしまうのが勿体ない。今日は本当に楽しいなぁ。
そんな事を、眠る寸前に思っていたのだ。
あれれ? 俺は森の中で眠った筈なのだ。なのに、周りを見るとお花畑なのだ。遠くには小川がサラサラと流れている。
これは……そうだ、覚えているぞ。あの泣き虫女神の世界なのだ。
「ご無沙汰ですぅーーッ!」
そう言いながら両手を広げて抱きついてきたので、ヒョイと避けたら顔面からスライディングしていたのだ。やっぱ、どんくさい。
「ぶぶぶぶーッ!」
スライディングしながら叫んでいる。本当にこれで主神なのだから、大丈夫なのか?
もっとちゃんとしようぜ。威厳というものが皆無なのだ。
「わふ」
「ぴか、しょう?」
「わふん」
ピカに温かい目で見守ってほしい。なんて言われた。
見守るのは俺じゃなく女神の方なのだ。なんか違うのだ。
立ち上がって復活したらしい。額とお鼻のてっぺんが赤くなっている。擦りむいたか? ポーションあげようか? いやいや、女神だし。自分で治せるだろう。
折角の美人さんなのに、台無しなのだ。
「今日はみなさん一緒で、とっても楽しそうで良かったですぅ~!」
「うん、たのしいのら」
「で、ピカちゃん」
と、言ってニッコリとしながら両手を出す女神。
「わふ?」
「もう、ピカちゃんったら〜」
「わふわふ?」
その手は何なのだ?
「ピカちゃんは、沢山ププーの実を収納しているのですぅ~!」
「しょれで?」
「ギャン! 塩対応!」
また訳の分からない事を言って仰け反っているのだ。その性格は直す方がいいぞぅ。
「私も美味しい美味しいププーの実を食べてみたいのですぅ~!」
「…………」
ほんと、飽きれちゃうよね~。
まさか、その為に連れて来たのか? 俺が寝た事を利用してさ。
「そ、そ、そんな訳ないのですぅ~」
どもっているし、目が泳いでいるのだ。
「ぴか、欲しいんらって」
「わふぅ」
仕方がないなぁ~、て感じでピカがコロンと1個、ププーの実を出した。
「えぇーッ! ピカちゃん、1個だけですかぁ~!?」
「わふぅ」
また1個、コロン。
「有難うなのですぅ~!」
両手に1個ずつププーの実を持って小躍りしている。やっぱ女神らしくない。
なんだ、2個でいいのか。
「もういい?」
「1度食べて見たかったのです~! って、違うなのです~!」
「なんら?」
「まさか、ピカが狙われるなんてぇ! ほんっとぉに、申し訳ないですーッ!」
ピッカピカで綺麗な髪を靡かせながら、ガバッと頭を下げる女神。
領主のご令嬢に、目を付けられた事を言っているのだろう。
「あれは仕方ないのら」
「そう言って頂けるとぉ、嬉しいのです。でも、しっかりロロを守っているようで安心したのです」
「うん、ぴかはたよりになるのら」
「ロロもいい子なのです~!」
はいはい、いちいちテンションが高い。今日は号泣していないだけマシか。
「チロもまだまだ赤ちゃんなのです」
「うん、じゅっと寝てるのら」
「でも可愛がってくれて嬉しいです」
「うん、かわいいのら」
「ピカだけじゃなく、きっとチロも役に立つ時が来るのです! ロロもまだ辛抱なのです!」
辛抱って何なのだ? そう思っていたのだ。
◇◇◇
「ん~……」
「ロロ、目が覚めたか?」
「あれ? にこにい」
「おう」
目を開けると、ニコ兄がそばにいた。
採った薬草を並べて根っこに葉っぱを巻いているのだ。
「わふん」
ピカ、そうだよな? あの女神に呼ばれていたよね? 夢じゃないよな?
「わふわふ」
ププーの実を2個取られた。と、言っている。2個くらい構わないのだ。沢山採ったのに。
「わふ?」
「しょうらよ」
「わふぅ」
ピカは、一体どれだけ食べようと思っていたのだ?
「わふッ」
沢山食べるんだって。はいはい、分かったよ。美味しいもんね。
「キュル」
「ちろも起きた?」
「キュルン」
「良く寝てたぞ」
「うん、良くねたのら」
ん~ッ! と、体を伸ばす。地面の上だったけど、ピカにもたれていたから体は痛くないのだ。
「にこにい、なにしてるのら?」
ニコ兄の横から、ヒョイと顔を出して覗いてみる。ニコ兄は、本当に植物が好きなのだな。薬草を触る手がとっても繊細で丁寧なのだ。
「ん? こうしてな、根っこを守っているんだ」
「へぇ~。あれ? れおにいとりあねえは?」
「夕飯の肉を狩りに行ったぞ」
「え、お魚あるのに?」
「おう、肉も欲しいってリア姉が言い出したからな」
「しょう」
リア姉、良く食べるな。
お読みいただき有難うございます。
久しぶりに女神の登場です。
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