43ー森にレッツゴー
今日も一緒にお出掛けだ。朝からうちに来るそうなのだ。
早めに朝食を食べてから、俺達は其々に準備をしている。
「ニコ、ロロ、お出掛けする準備はできた?」
「レオ兄、できたぞ!」
「まら、ちょっとまって」
俺はソファーにテンと座って、ゴソゴソとポシェットの中をお片付けしている。持って行く荷物を準備中なのだ。それをニコ兄が覗きに来た。
「ロロ、何してんだ?」
「にこにい、ぽーしょんら。いちゅもより多めにもっていこうと思って」
俺は両手にポーションの小瓶を握りしめている。それをポシェットに入れたいのだ。
「その小さなポシェットに入るか?」
「はいんないのら」
「ロロ、ピカが持っているから大丈夫よ」
「しょうらった」
リア姉に言われてしまった。俺はお出掛け用のいつも肩から掛けている小さなポシェットに、無理矢理ポーションを何本も入れようとしていたのだ。
そうだった、ピカが沢山持っていたのだ。今日はピカもチロも一緒だ。
「ちろ、中にはいる?」
「キュルン」
チロがホッとした様に、俺のポシェットに入っていった。
さっきから『そんなに入れたらボクが入る場所なくなっちゃうよ』と言いたそうな目で見ていたのだ。
今日はどこにお出掛けかというと、例の姉弟と一緒に森の中にある川まで行くのだ。
川でお魚を捕る事と、川辺にこの時期の短い間しか生っていないププーの実を採りに行くのだ。
俺は森の中に行くのは初めてなのだ。
「お弁当ですよ。ピカに預けますね」
「マリー、有難う。今日はお留守番よろしくね」
「はいはい。気を付けて行ってらしてください。晩御飯はお魚ですね」
「ハハハ、釣れなかったらごめんだけど」
「レオ、大丈夫よ。今の時期は産卵の為に沢山いるっていうもの」
「そうですよ、楽しみにしていますね」
魚といっても魚の魔獣……いや魔魚と言うのかな? 普通のお魚さんではないのだ。
身はサーモンのようにピンク色をしていて、ほどよい脂身が美味しい。今の時期は卵を持っている。その卵もプチプチして美味しいのだ。
森の中を流れる川で産卵し、卵から孵ると海に向かって下っていく。そして、産卵の時期にまた森まで戻ってくるのだ。
今日はそのお魚を狙っている。少し前からレオ兄が釣り竿を作っていたのだ。
俺は網を持って行こうかなぁ。網ならちびっ子の俺でも捕れないかなぁ。虫取りに使っていた網を手に持つ。
よし、準備は万端なのだ。ちょっと手を腰に当てて立つ。満足なのだ。ふふん。
「ロロ、駄目だよ。魔魚だからね、そんな虫取り網だと危ないよ」
「え、しょう?」
「そうだよ」
魚といっても魔魚だ。なんでも、釣ったら直ぐに締めないと噛みつかれるらしい。大きな鋭い牙があるのだ。こわいこわい。
それと、もう1つ。ププーの実なのだ。
森を流れる川辺の一部にしか自生していなくて、実が生っている時期も短い。直ぐに熟れ過ぎて落ちてしまうのだ。
落ちてしまうと、もう蘞味が強くなって食べられたもんじゃなくなるらしい。
そのププーの実、1つが20センチ位あって楕円形をしている。熟れて食べごろになると綺麗なピンク色になるのだ。
果肉はとっても甘い香りがするので、森にいる獣も食べにくる。しかもププーの実が生る木は、低木なので獣も採りやすい。だから余計に手に入らない。
中に黒くて大きめの種があるけど、味は『森のカスタードクリーム』と呼ばれるくらいに甘くて美味しいらしい。
是非とも、食べてみたいのだ。いかん、涎がでりゅじょ。食べた事ないのに。
「おはよう~!」
「おはようございます」
フィーネとマティがやって来たのだ。
「おはよ~」
と、出迎えて手をふりふりする。
「ロロ、今日も可愛いわ」
そう言って直ぐに俺を抱き上げる。フィーネはリア姉みたいにスリスリしないから良いのだ。お腹はぷにぷにされちゃうけど。
「あらあら、おはようございます」
「マリー、おはよう。今日は沢山捕ってくるわね」
「はいはい、楽しみにしていますよ」
もう馴染んだものだ。
「じゃあ、行きましょう」
「姉上、忘れ物はない?」
「大丈夫よ」
「ニコ、ロロ、行くよ」
「おう!」
「おぉー!」
俺は歩く気満々なのだ。なのに……
「ロロ、今日は森まで行くからね。森に入ったらピカに乗せてもらうんだよ」
「えぇ~、れおにい歩けるのら」
「森は危ないし足元も悪いから駄目だよ」
「わかったのら」
それでも、初めて行く森がとっても楽しみなのだ。
いつもリア姉とレオ兄が、お肉を捕って来てくれる森だ。どんなところなのか見てみたかったのだ。
さあ、張り切って行こう!……と、思っていた時もあったのだ。
「ピカ……のせて」
「わふん」
「ありがと」
ピカが伏せをして俺が乗りやすくしてくれる。森に入る前に俺はリタイアだ。
「ロロ、張り切り過ぎちゃったかな?」
と、レオ兄が抱き上げてピカに乗せてくれた。
「れおにい、ボクおしょいから」
「それは仕方ないよ。まだちびっ子だからね」
「しょう? れも、にこにいはおしょくないのら」
「ロロ、俺はもうちびっ子じゃないぞ」
「えぇ~」
「アハハハ、ニコは毎日畑作業をしているから体力があるんだろうね」
「なりゅほろ~」
「へへん、楽勝だぜ」
「にこにい、かっちょいい」
「そうか? そうだろう?」
「うん」
「アハハハ」
「レオ兄、何で笑うんだよ!」
平和なのだ。もう森が目の前だ。ちょっぴりドキドキするのだ。
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ロロくんは可愛くて書いていても楽しいです。
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