39ー大怪我
「わふッ」
「しょう?」
「わふわふ」
「もうしゅこし、まつのら」
「わふん」
ピカが、お腹が空いたから早く帰ろうと言っていたのだ。こんな時なのに呑気なのだ。
「まあまあ。このお茶、美味しいですね~」
あ、マリーも呑気だったのだ。
「でも、たまたまロロが通り掛かって良かったわよね」
「本当だ。あの怪我だとポーションがないとマズイだろうね」
「いっぱい血がでてたのら」
「ロロ、見たの?」
「うん、ちょびっとらけ」
「そう、見なくていいわよ」
「ロロはまだちびっ子だから、驚いただろう?」
「うん、ちょびっとらけ」
「まあまあ、このクッキー美味しいですよ」
マリー、本当に呑気なのだ。
「ぴか、たべる?」
「わふん」
「ん」
ピカにクッキーをあげる。大きなお口でパクンと食べた。サクサクと良い音をたてて食べる。
「ピカ、お腹が空いたのか?」
「わふ」
「しょうなのら。らから早くかえりたいって」
「アハハハ。そうなのか」
呑気な話をしていたのだ。そしたら廊下から、ドタドタと歩く大きな音が聞こえてギルマスが入ってきた。
「待たせたな! いやぁ、本当に助かった! ありがとうよ!」
そう言いながら、頭をガシガシと撫でられたのだ。大きな手でゴツゴツとしていた。
「ギルマス、ポーションの料金は払ってくれるの?」
「もちろんだぞ! 中級ポーションの価格で支払うからな」
ラッキーなのだ。合計4本のお買い上げだ。いやいや、それよりもだ。
「ぎるます、たしゅかった?」
「あ? 怪我人か? おう、助かったぞ。ロロの作ったポーションの効果はスゲーぞ!」
そりゃ、良かったよ。まだ若そうな女の人だったし。助かって良かったのだ。
ギルマスが言うには、1本を深い傷に直接振りかけて、もう1本は飲ませたらしい。
すると、あら不思議。傷口がペカーンと光って、あっという間に塞がったんだって。
傷がなかったかの様に、跡も残らず綺麗に消えたらしい。
あのポーションが無かったら危なかったそうだ。間に合って良かったのだ。
どうしてあんなに酷い怪我をしたのだ? 冒険者ってそんなに危険がいっぱいなのか?
なら、リア姉とレオ兄が心配だ。とってもとっても心配なのだ。
レオ兄と作ったポーションの性能は分かった。そのポーションで助かった人がいる。
それはいいのだ。うん、助かって本当に良かった良かった。でもだ。
「りあねえとれおにいも、けがしゅる?」
俺はそれが心配なのだ。もしもリア姉やレオ兄が、あんな大怪我をしたらと思うとゾッとする。
いつもポーションを、持っていると分かっていても怖いのだ。
「そうだね。全くないとは言えないよ。でも、あんなに大怪我をする様な事はしないから大丈夫だ。心配いらないよ」
「ほんちょ?」
「本当だよ。僕がちゃんと見ているからね」
じゃあやっぱリア姉は、突っ込んで行くタイプなのだ。
「ちょっと、レオ。そんな言い方したら、私が危ない事をするみたいじゃない」
「アハハハ、しないけどね。でも、姉上は猪突猛進だから」
ああ、やっぱそうなのだ。そうだろうなぁとは思っていたのだ。
だって性格がね。真っ直ぐだし、責任感強いし。思い込んだら……て、とこあるし。
「ロロ、心配しなくても大丈夫だよ」
「ん、れもまたぽーしょんちゅくる」
「うん、有難う」
「ロロったら可愛い!」
ああ、抱きついてきてリア姉のお膝に座らされちゃったぞ。
俺のムチムチボディーに手を回して、ほっぺをスリスリしてくる。お外では止めてほしいのだ。
「あれはな、無謀な事をしたからだ。まだEランクなのに、ダンジョンの中層まで潜ったらしいんだ」
「Eランクで!? それは無茶だ」
「だろう? 焦っているのは分かるんだがな。命あっての物種だ。今回だって、偶々同じ層に冒険者がいたから助かったんだ」
「あの人達って、最近よく見かける様になったよね。貴族なんだろう?」
レオ兄はよく見ている。貴族かぁ。最近、貴族をよく思わない出来事があったばかりだ。
俺達だって、元貴族なのだ。
「おう、王都側にある隣町の貴族だ。今、学園が休みだろ? それでこっちのダンジョンに、潜りに来ているんだ。功を焦ったんだな」
「へぇ〜」
「なぁにぃ? お家の都合とかかしら?」
「ま、そんなとこだろうよ」
と、いうのも。貴族の家には、文官家系と武官家系があるんだって。
その家のモットーみたいなのがあるのだそうだ。
文官家系なら、例えばどれだけ情勢に詳しくなれるか、外国語を習得できるか等を休み中に勉強するんだって。
休みの間、実際に文官に付いて見習い研修をしたり、留学を義務付けたりしている家もあるらしい。
武官家系は、言わずもがな。そのまんまなのだ。どれだけ強くなれるかだ。
だから武官家系の子は、学園時代にギルドカードを発行してもらい魔獣討伐に出る。ダンジョンなら、何層までクリアできるか頑張るそうなのだ。
「でも令嬢なのに? 騎士団に入れる訳じゃないよね」
「な、お貴族様は何考えてんだか」
「そんなのギルマス、決まってるじゃない」
「お? リアは分かるのか?」
「それくらい分かるわよ。対抗勢力の何処そこの家には負けるな、とか言われてんじゃない?」
「けッ、馬鹿らしいぜ。それで命を落としてたら元も子もないぜ」
リア姉やレオ兄も、貴族だった時はそんな事を言われていたのかなぁ?
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