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☆第6回ESN大賞W受賞☆11/4④発売☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第1章 ルルンデで生活するのら

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37ーちょっと待ってね

「こうして見ていると普通のちびっ子なんだがな」

「あらあら、ロロ坊ちゃまは普通の坊ちゃまよ」

「坊ちゃまって呼んでる事が普通じゃないだろうが」

「そんな事ないわ。どうなっても坊ちゃまは坊ちゃまよ」

「マリー、世話になったんだな」

「ええ、とっても。私が1番大変な時に拾って下さったのよ。そのおかげで大した苦労もせずにやって来れたわ」

「そうか……」


 俺はそんな話をしているのも知らず、走る事で一所懸命だった。手を引いてくれるけど、だからといって早くは走れない。

 でも、なんだか楽しいぞぅ。


「キャハハハ!」

「ロロ! 笑ってないで走るんだよ!」

「うん! キャハハハ!」

「だからぁ、何で笑うんだよ! アハハハ!」


 俺達の笑い声が、教会の裏庭に響いていた。俺にとっては、とっても楽しい時間だったのだ。

 教会で沢山走って、マリーと手を繋いでトコトコと歩く帰り道なのだ。


「ロロ坊ちゃま、沢山遊びましたね」

「うん、楽しかったのら」

「ふふふ。沢山走ったから疲れてませんか?」

「らいじょぶなのら」

「ふわぁ〜ふ」


 あれれ? ピカはまだ寝足りないのかな? 欠伸しながら歩いている。

 マリーはゆっくりと俺のペースで歩いてくれる。だからなかなか進まないのだ。

 街の中心部に差し掛かると、広場に並んだ屋台から良い匂いがする。

 

「まりー、帰ったら夕ごはんなのら」

「はい、お腹空きましたか?」

「うん」

「今日は何にしましょう」

「ん~、にこにいのお野菜がたくさん入ったしゅーぷ」

「はいはい」


 取り留めのない話をしながら、ポテポテと歩いていたのだ。


「あらあら? 坊ちゃま、何かギルドの前に人集りができていますよ」


 マリーがそう言うので、ギルドの方を見たのだ。でも、俺はちびっ子だからあんまりよく見えなかった。大人が多くて先まで見えないのだ。

 ちびっ子の視界は思ったより悪い。


「しょう? みえないのら」

「坊ちゃま、人が多くて危ないから抱っこしましょう」

「うん。ぴか、はぐれたらだめなのら」

「わふッ」


 俺はマリーに両手を出す。

 抱っこしてもらったから、目線が高くなってやっと見えた。確かにギルドの前に人が沢山いるのが見える。

 その中で、前に見た事のある人を見つけた。ギルドの制服だから直ぐに分かったのだ。


「まりー、ぎるどのおねーしゃんら」


 前にリア姉とレオ兄と一緒にギルドへ行った時に案内してくれたおねーさんだ。お茶も出してくれた。


「え? そうですか?」

「うん、あしょこ」

「あらあら、本当ですね。あの制服はそうですね。ギルドで何かあったんでしょうか?」

「りあねえとれおにいは、らいじょぶかな?」

「お2人はきっと大丈夫ですよ」

「うん」


 何もなかったら良いんだけど。なんて思いながら、マリーに抱っこされながら、ボ~ッと見ていた。

 そしたら、不意におねーさんと目がバチコンと合ったのだ。

 おねーさんが『アァッ!』て顔をしている。取り敢えず、ふりふりと手を振っておこう。


「ロロ君! ピカちゃん!」


 え、呼ばれてしまったのだ。ピカまで呼ばれた。


「坊ちゃま、呼ばれましたね」

「ね~」

「わふぅ」


 マリーはギルドのおねーさんの方へと歩いて行く。どんどん人が多くなる。

 ギルドの入口付近は冒険者や野次馬でいっぱいだ。こんな状態のところを、ちびっ子の俺が歩いていたら潰されてしまうのだ。

 ピカは人の足を避けながら離れずに付いて来ている。


「いいところに来てくれたわ! ロロ君、今日もポーション持ってる?」

「うん、もってる」

「良かったわ! ギルマス! ロロ君がポーション持ってるそうですよ!」

「何だとッ!? ロロか!」


 どこにいるのか分からないのに、ギルマスの大きな声だけ聞こえる。どんだけデカイ声を出しているんだ?

 おねーさん、俺がポーション持っているってよく覚えていたのだ。

 すると、ギルドの中から人混みをかき分けながら、ドタドタと大慌てでギルマスが出て来た。


「ロロ!」

「あい、こんちは~」


 と、フリフリしていた手を、ガシィッと握られてしまったのだ。デカイ手だ。力が強くて、ちょびっと痛い。


「悪い! ポーションくれねーか! もちろん金は払う!」

「ロロ坊ちゃま、何かあったみたいですね」

「まりー、しょうらね」

「怪我人でしょうか?」

「ね~」


 俺とマリーが呑気な話をしているから、ギルマスが焦れている。足をジタバタさせそうな勢いだ。


「ロロ! 頼む、急いでいるんだ!」

「あい、分かっちゃ」


 俺は、肩から掛けているポシェットに手を突っ込む。えっとね……ちょっと待ってね。

 これはハンカチでぇ、これはさっき教会でもらった綺麗な石ころでぇ……小さな手で、ポシェットの底を探る。


「ロロ! ないのか?」

「あ、あった! あい」


 やっと俺は、ポーションの小瓶を出してギルマスに手渡す。


「すまねーな! おい、ロロに支払いをしてくれ!」

「はい、ギルマス!」


 なんか大変そうなのだ。別にお金は今すぐじゃなくてもいいのに。


「ロロ君、ギルドの中に入ってくれる?」

「あい」

「はいはい、行きましょうね」

「ぴか」

「わふ」


 代金をもらわなきゃと、マリーがいそいそとおねーさんの後を付いて行く。こんな時のマリーは迅速なのだ。


お読みいただき有難うございます。

今日のイチオシは、ロロの『しゅーぷ』れす!

宜しければ、評価やブクマをしていただけると嬉しいです。

宜しくお願いします!

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