表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/465

31ーティータイム?

「ユーリア、じゃあニコ坊ちゃまと行ってくれる?」

「もちろんよ、行ってくるわ!」

「よし、行こう!」

「待って、その前に……」


 またまたユーリアは冷静だったのだ。

 畑で作業をしている男の人に頼んで、一緒に見張ってもらう事にしたのだ。みんな知った顔だ。

 事情を話すと、なんて奴なんだと手に鎌を持ってやって来てくれた。

 これで、安心なのだ。ちょっと手に持っている鎌が怖いけど。

 そして、ニコ兄とユーリアが走って行った。俺は横にいたマリーのエプロンを掴む。


「まりー、だいじょぶ」

「はい、大丈夫ですね」

「わふ」

「ぴか、ちゅよい」

「本当ですね」


 男はまだ起きないから、畑で作業している皆も一緒にお茶を飲んでいたのだ。良い天気だな~なんて言いながらなのだ。なんて呑気なんだ。

 そこに、ヒュ~ッと風が吹いたかと思うと、ニコ兄とユーリアが立っていた。そして……


「ロロ! 大丈夫なのかい!?」


 昨日会ったエルフのディさんだ。風と共に現れたイケメンさんなのだ。キラッキラでサラッサラの、長いグリーンブロンドの髪を風に靡かせながら立っていた。


「でぃしゃん!」


 俺は、小さな手をフリフリと振った。いやいや、どうやって来たのだ? 風が吹いたらもう居たぞ? ディさんの魔法なのか?


「おや、ティータイムですか?」


 集まってくれている皆が、手にティーカップを持っているのでそう思うだろう。まるでお茶会だ。

 だが、違うのだ。決して優雅なティータイムなんかじゃないのだ。だって、直ぐそこの木には、不審な男を括りつけてある。


「あらあら、ロロ坊ちゃまをご存知ですか?」

「昨日会ったんだ。もしかして、マリーさんかな?」

「はい、マリーです」

「ロロ、連れてきた!」

「にこにい、でぃしゃん」

「そうなんだよ。『うまいルルンデ』に行ったら偶々いたんだ」

「話を聞いたら、ロロのお兄さんだっていうからね」

「にこにい」

「そうだってね、薬草を育てるのが上手なんだって?」

「えへへ、そんな事ないぜ」


 マリーが、まあまあお茶でも。と、お茶を出している。おかわりをしている人もいる。マリーさんの入れるお茶は美味しいね〜なんて話している。

 違う違う。お茶を飲む為に来てもらったのではない。本題を忘れているのだ。


「まりー、ちがうのら」

「あらあら、ロロ坊ちゃまどうしました?」


 マリーは呑気なのだ。ユーリアはあんなに冷静なのに。

 ちびっ子な俺は、ただ庭先でトコトコとマリーの後を付いていた。片手にクッキーを持ちながら。


「ああ、そうだった。男だね。ピカを攫いに来たって?」

「しょうしょう」


 そうだ。それが本題だ。忘れては駄目なのだ。

 ディさんが、木に括りつけられて気を失っている男を見る。俺もディさんの直ぐ側で同じ様に見る。なんも分からないけど、むむむ……と見ている。


「もう少ししたら、ギルマスもやって来るんだ。それまで待とうね。あ、マリーさんお茶頂きますね~」

「はいはい、どうぞ〜」


 突然、綺麗なエルフさんが現れたものだから、近所の奥様達までワラワラとやって来た。そしてまた、マリーが……


「はいはい、皆さんも一緒にお茶どうぞ〜」


 なんてお茶を振舞っている。クッキーの追加も出て来たぞ。庭先でみんなで、本格的にお茶会になってしまっている。違うのだ。なんだかとっても違うのだ。


「ロロ、ギルマスが衛兵を連れて来るんだ。それまでは何もできないからね」

「しょう?」

「そうなんだよ。しかし、思い切った手段に出たね~」


 あ、やっぱディさんも我儘令嬢の仕業だと思っているのだ。ニコ兄が、何か言ったのかな?


「あの流れでこのタイミングだから、皆そう思うよ」


 要するに、バッレバレって事らしいのだ。

 暫くして、数人の衛兵と一緒にギルマスがやって来たのだ。そして、ギルマスはまた大きな声で話している。


「なんだなんだ! こんな強硬手段にでるか!」

「ぎるます、こんちは~」

「おう。ロロ、無事か?」


 頭をガシガシとされた。座っていても大きいけど、ギルマスは立っていると山のように大きいのだ。ちびっ子の俺は、見上げなきゃならない。


「へいきなのら」

「良かったな。こいつか?」

「しょうなのら」


 ギルマスは縛っている男の足をバシコーンと蹴った。力任せの起こし方だ。痛そうなのだ。


「うッ……うぅ……えッ!?」


 目を覚ました男は、周りの人達を見て驚いている。沢山の人達が集まってお茶をしている。なんて場違いなんだ。

 そこに衛兵もいる。その上、自分はパンイチで縛られている。どうにもできないのだ。

 ギルマスの足に捕まり、横からヒョイと顔を出して男を見る。ピカを攫いに来たのだ。だから、ちょっぴり睨んでおこう。むむむ……。


「お前、領主様とこに頼まれたのか?」


 おぉっと、いきなりストレートに聞いたのだ。それで『そうだ』と返事する奴なんていないぞう。


「……」


 案の定、だんまりだ。当然だ。ギルマス、もう少し尋ね方を考えようよ。


「まあいい。調べると直ぐに分かる事だぞ。衛兵、連れて行ってくれ!」


 衛兵が男をそのまま連行しようとした。


「あらあら、この人の服ですよ」


 マリーは、肝が据わっているのかそれとも天然なのか? 衛兵に服を手渡しながら、お茶は如何ですか? なんて聞いている。マリー、お茶はもういいのだ。

 衛兵の1人が服を持ち、男はパンイチのまま連行されて行った。あの恰好のまま街の中を連行されるのだ。カッコ悪いし恥ずかしいぞ。


「俺は一緒に行く。ロロ、気をつけるんだぞ。これだけで済むとは思えないからな!」


 マジですか!? こんな失敗をしたのに、まだ仕掛けてくるのか?

 取り敢えず、俺はギルマスに小さな手をフリフリしておいた。片手にクッキーを持ったままだけど。

 それからディさんは、ずっと居たのだ。一緒に薬草を見て、感動していたのだ。


「凄いじゃないか! こんなに立派に育てるなんて! しかも効果が高い。こんなの珍しいよ!」


 と、薬草にスリスリしそうな勢いだった。目がキラキラしているのだ。ウホウホとちょっぴり小躍りしている。


お読み頂き有難うございます!

感想、有難うございます!とっても励みになります。

宜しければ、評価やブクマをして頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] パンイチ引回し [気になる点] エルフのウホウホダンス [一言] 面白いです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ