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29ー薬草畑

 目が覚めたら、家のベッドの中だったのだ。途中まで覚えている。

 ディさんと別れてから、確か……レオ兄に抱っこしてもらったのだ。

 どうやら、それから俺はスヤスヤと眠っていたらしい。


「わふ」

「ぴか……」


 ピカが俺の寝ているベッドにポプンと顎を乗せてきた。そして、ベロロンと大きな舌で俺を舐める。


「やめれ」

「わふッ」


 ピカの首元を両手でワシャワシャと撫でる。極上のモフモフ加減だ。尻尾をブンブン振っている。


「わふん」

「きもちいー?」

「わふ」

「ぴか、ばればれらったのら」

「わふ」

「あの女神しゃま、だめだめなのら」

「わふぅ」


 また、ベロロンと舐めてくる。そんな事を言わないでやって欲しいとでも言っているみたいだ。


「ばれてもよかった?」

「わふ」

「しょっか」

「わふん」


 どうやら、バレる事は想定内だったみたいだ。多分ね。

 隠すのにも無理がある。だって、ピカはどう考えても普通のワンちゃんじゃない。

 普通のワンちゃんは魔法を使ったり、なんでも収納できたりなんかしない。当然だ。しかも、ピカは大きい。俺を乗せられるくらいに大きいんだ。

 なら、知っている人がいる方が良いという事なのかな? それにしても……ちょっとお粗末なのだ。

 あの泣き虫女神、あんまり考えていないのではないか? と、思ってしまう。

 だって、主神といってもあれだから。泣き虫だし、ヘタレだし。いつもグダグダだし。

 レオ兄が、俺が寝ているベッドを覗き込んで声を掛けてきたのだ。


「ロロ、起きた?」

「うん、れおにい」

「オヤツがあるよ」

「たべるのら」

「よし、下に行こう」


 レオ兄が抱っこしてくれる。ギュッと抱きつく。寝起きは甘えん坊な俺なのだ。


「ロロ、今日ギルドで話した事は秘密だからね」

「ひみちゅ?」

「そう。誰にも話したら駄目だよ」

「わかったのら」

「良い子だ」


 レオ兄に抱っこされて降りて行ったのだ。


「ロロ、今日のおやつはスコーンだ。ベリーのジャムもあるぞ!」

「にこにい、美味ししょうなのら」


 レオ兄とニコ兄の間に座らせてもらう。いつもの俺の定位置だ。

 テーブルの上には、焼き立てのスコーンと前にニコ兄と一緒に摘んできたベリーで作ったジャムもある。


「さあさあ、食べてくださいね!」

「まりー、ありがと」

「はい、沢山食べてください」

「うん」


 俺は自分の手よりも大きいスコーンを持ってベリージャムをたっぷりと乗せて頬張る。マリーが作ると1個が大きい。マリーは大雑把なところがあるから。

 美味い。口の中にベリーが広がるのだ。


「うまうま」

「な、美味いよな」

「うん」


 ニコ兄も頬張って食べている。レオ兄もリア姉もだ。ピカとチロも貰って食べている。

 平和なのだ。俺は両親がいた時の記憶がないから分からない。でも、こんな平和も良いと思うのだ。この世界の俺も幸せなのだ。


 翌日からまたいつもの様に、リア姉とレオ兄はクエストを受ける為に出掛けて行った。エルザは『うまいルルンデ』へ。

 ニコ兄とユーリアは畑の手伝いへ出掛けていったのだ。


「ロロ坊ちゃま、薬草を見てみませんか? もう随分と大きくなっていますよ」

「うん、みる」


 マリーと一緒に、俺は家の横にある薬草畑を見に行く。そんなに大きな畑じゃないけど、ニコ兄がいつも水やりをして育てているのだ。

 ピカとチロも一緒なのだ。ピカとチロは俺から離れない。絶えず側にいる。俺を守ってくれているのだろう。

 外は今日も良い天気なのだ。お日様の優しい陽が射している。今日は綿菓子みたいじゃないけど、薄い雲も浮かんでいる。


「いいお天気なのら」

「はい、気持ち良いですね」


 ピカは畑の側で寝転びだした。小さな蝶々が、ヒラヒラとピカの周りを飛んでいる。チロは草の側でチョロチョロしている。寝場所を探しているのか?


「まりー、おっきいね~」

「はい、立派な薬草ですね」


 マリーと一緒に薬草畑の中をトコトコと歩く。ポーションに必要な薬草を少しずつ摘んでいく。沢山は採らない。少しだけだ。必要な分だけでいいのだ。


「ロロ坊ちゃま、あとどれが必要ですか?」

「えっとね~、あ……あっちのら」

「はいはい」


 マリーもよく分かっている。根っこからは採らない。下の葉っぱを少し残して摘んでいく。そうしておくと、また直ぐに成長するのだ。

 この家に住みだして直ぐの頃。まだニコ兄が薬草を育てだして間もない頃だ。

 最初の収穫で俺とマリーは、知らずに根っこから引き抜いてしまったのだ。それでニコ兄に叱られたのだ。


「覚えておくんだぞ、ロロ。薬草は根っこから採ったら駄目だ。下の葉一対を残して摘むんだ。そうしたらまた大きくなるからな」

「ほぉ~」


 ニコ兄が、どうしてそんな事を知っていたのか俺は知らないけど。とにかく畑の事はニコ兄が責任者なのだ。


「ニコ、よく勉強したね」

「俺だって役に立ちたいんだ」


 そんな話をレオ兄としていたのを覚えている。だから、ニコ兄も勉強したのだろう。

 最初は家で食べる分程度の野菜を植えようと話していたのだ。それを「薬草も植える! 俺が育てる!」と、ニコ兄が突然言い出したのだ。

 ニコ兄もニコ兄なりに考えていたのだろう。


「ニコにできるのかい? 薬草は野菜より育てるのが難しいよ」

「レオ兄、できるに決まってる!」


 どこからそんな自信があったのか分からないが、薬草も育てると言って聞かなかったのだ。宣言通り、ニコ兄は薬草を立派に育てた。


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