285ー魔法
よしッ! あの的を狙って杖を振る。
「たぁッ!」
魔法杖の先端にある魔石に俺の魔力が引っ張られて、凝縮されるような感じがあった。
その瞬間に、ビューッと風の刃が出て的に命中だ。
「上手だ。今のは風属性魔法だね。水属性も使えるかな?」
「うん、れきるのら。やぁッ!」
今度は水の刃が飛んだ。うん、とっても使い易いのだ。この杖無しの時よりもずっと、魔力がスムーズに流せて発動するのも楽だ。杖なしの時とは全然違う。
どれ程違うのかというと……ん~、分からない。
「でぃしゃん、これれ、しゃわしゃわ~もれきる?」
「うん、できるよ。コッコちゃんの小屋を洗っているヤツだね」
「しょうしょう。このちゅえ、とってもらくなのら」
「そうだろう? この杖と魔石で魔法を補助するし、増幅させる事もできるんだ。ロロがもっと大きく強くと思ったらそうできる」
「なるほろ~」
あれ? テオさんとジルさんが静かだぞ。退屈だったかな? 二人してボーッと見ている。
「ロロが使える魔法の属性は何なんだ?」
とっても真剣なお顔をしてテオさんが聞いてきた。けども。
「しらら~い」
「え?」
「ブフフ」
「アハハハ! ロロは気にしていないんだよ」
「いやいや、ディさん!」
魔法の属性、ふむ。お水とか風とかだよな。リア姉は炎を出せる。その事だとは分かるのだ。
「この兄弟はね、凄いんだよー」
ディさんがちゃんと分かっているみたいなのだ。ならお任せして、俺はもう少し杖を使ってみよう。練習なのだ。
「とぉッ!」
ボボボボッ! と、水の塊が飛んで行った。ほうほう、なるほど。
「やぁッ!」
ヒュンヒュンヒュン! 今度は風だ。ふむふむ。
「えいッ!」
ドドドドッ! 土の塊が飛んだ。へえ~。あとは炎なのだけど、今まで俺は炎を出した事がない。できるかな? 試してみよう。
「んんー、たぁッ!」
ボワッ! と丸い炎が飛んで行った。なんだ、できるのだ。
「ちょ、ちょ、ロロ!」
「ん? ておしゃん、ろうしたのら?」
「アハハハ! ロロ、どうかな?」
「うん! ちゅかいやしゅいのら! でぃしゃん、ありがと!」
「うん、良かった」
テオさんとジルさんを、置いてけぼりにしている感があるのだけど。
ディさんが態々俺の為に作ってくれた魔法の杖だ。とっても嬉しい。こんなのちびっ子用なんかだと勿体ない。大きくなっても、ずっとずっと大事にするのだ。
そして俺がいなくなったら、ちゃんとディさんのところに戻ってね。
「とんでもないな、ジル」
「ええ、テオ様」
ん? どうかしたのかな? 何だかテオさんとジルさんが、フリーズしている様に見える。
「ロロは凄いって事だ」
「れおにいは、もっとしゅごいのら」
「なんだって!?」
そうだよ、だって俺はレオ兄に教わったのだ。ディさんと仲良くなるまで魔法の師匠はレオ兄なのだ。
今も、レオ兄には全然敵わない。
魔法だけじゃない。ポーションを作るのだって、レオ兄には勝てないのだ。
「ロロとレオは歳が違うじゃない」
「でぃしゃん、けろれおにいは、しゅごいのら」
「うん、そうだね。レオはロロ達兄弟の中でも一番だ」
「ええー……これ以上なのか」
「テオ様、益々勿体ないですね。私達が通っていた学院の魔術科に入ると良いのにと思いますね」
「ああ、まったくだ」
魔術科なんてあるのか。え、この国の学園にもあるのかな?
俺は全然知らないけど。
「この国の学園には、魔術を専門で学ぶ学科はないんだ。この国では基本的な事は教わるけど、専門的な事になると学園を出てからになるね」
ほうほう、そうなのか。レオ兄は母様に教わったと話していたな。
「かーしゃま」
「ん? ロロどうしたの?」
「でぃしゃん、れおにいはかーしゃまに、おしょわったっていってたのら」
「そう、やっぱりロロ達のお母様は、魔法に秀でていたんだね」
確かお墓参りに行った時に、色々話してくれたのだ。
母様は魔法と勉強を、父様は剣と槍、弓を教えてくれたと。
魔法操作も、母様から教わった事だと教えてくれた。
「僕の祖母もそうだ。きっとロロの母上は僕の祖母に似たんだ」
「ておしゃん、しょう?」
「ああ、僕もお祖母様に魔法の基礎を教わったよ」
へえ~、そうなのか。お祖母様かぁ。どんな人なのだろう。母様の事だって覚えていないからなぁ。そういえば……
「ておしゃんのかーしゃまは、ろんなひとなのら?」
「母上か? そうだな、普段は明るい賑やかな人だけど父より厳しい時もあるな。少しおっちょこちょいかな」
「へえ~」
俺の母様はどんな人だったのだろう?
色々話は聞いたけど、覚えていないからあんまり想像できないのだ。
魔道具で見た母様は、とても優しそうだった。
「ロロのお母上は、とても優しい人だったと聞いている」
「ておしゃん、しょうなの?」
「ああ、いつも穏やかに微笑んでいたと」
赤ちゃんだった俺を抱っこしていた母もそうだった。
とっても優しいお顔をして、抱っこしている俺を見ていた。
「ふふふん」
「ロロ、どうした?」
「まろうぐれ、みたのら。ボクをらっこしている、かーしゃま。にっこりしていたのら」
「ロロ、寂しくはないのか?」
テオさんが、少し切なそうな表情をして聞いてきたのだ。
ボクがまだちびっ子だからかな? それなのに父様や母様がいないから。
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