283ー魔法杖ができたのら
マリーにもう何杯目かのお茶を入れてもらって、ドルフ爺も一緒に楽しく話している。
いつの間にか、僕達も同じように『ドルフ爺』と呼ぶようになっていた。
この人達が、四兄弟を助けてくれていたんだな。
「ドルフ爺も有難う」
「え? なんだ、急に」
「ロロ達を可愛がってくれて有難う」
「何言ってんだ。四人共可愛いんだ。うちは孫ももう大きくなったからな」
「ドルフ爺! 何サボってんだよ!」
麦わら帽子を被ったニコが、ドルフ爺を呼びに来た。陽によく焼けている。ドルフ爺に一番懐いているように見える。
「ニコ、サボってないぞ」
「サボってるじゃんか、なに優雅にお茶飲んでんだよ!」
ニコも逞しい。ニコに叱られて、ドルフ爺が畑に戻って行った。
良いところだ。平和で人が温かくて。皆が可愛がってくれるから、ロロも離れたくないのだろう。
「ふあ~」
「おはよう」
ディさんに抱っこされてロロが起きてきた。まだ大きな欠伸をしている。
ちょっぴり眠そうな目をして、ボーッとしてる。
「あらあら、ロロ坊ちゃま。果実水飲みますか?」
「うん、まりー。おのろからからら」
この舌足らずな喋り方がまた可愛らしい。思わず、頬が緩む。
「テオ様、可愛いですね」
「ああ、本当に。ちびっ子ってこんなに可愛いのか?」
「ふふふ、そうですね」
(ロロ視点に戻ります)
俺はマリーに果実水を貰って、コクコクと飲む。お昼寝の後は喉が渇くんだ。
「坊ちゃま、テオ様とジル様がお泊りされるそうですよ」
「ほんちょ?」
「ああ、明日からだけど良いかな?」
「うん、おとまりしゅるのら」
「ええー、いいなー」
ディさんは何を言っているのだ。毎日通ってくるなら、一緒に暮らせば良いのだ。大歓迎なのだよ。
「僕は朝に一度ギルドに顔を出さなきゃいけないんだよ。夜は領主様と話している事もあるんだ」
ほうほう、ディさんは色んなご用事があるから、ルルンデの街中に居る方が便利だという事だね。
ディさんはみんなに好かれているし、俺達が独り占めするわけにはいかないのだ。
「でぃしゃんも、いつれもおとまりしゅれば、いいのら」
「うん、ロロ。有難う」
その日もテオさんとジルさんは夕ご飯を食べて、ディさんと一緒に帰って行った。
明日からお泊りするというから楽しみなのだ。
俺が眠ってから、レオ兄達と何かお話ししていたみたいだけど。
難しい事はリア姉とレオ兄にお任せなのだ。
それより俺の魔法杖はどうなったのかな? 材料は見せてもらったけど。ディさん、忘れてないよね?
翌日リア姉とレオ兄が出掛けて行って、ニコ兄も畑に行った。
俺もいつも通りセルマ婆さんと一緒に、ピカに凭れて日向ぼっこだ。この季節で、日向ぼっこもないのだけど。日陰にいると丁度良い。
サワサワ~と、爽やかな風が俺の短い前髪を揺らして、畑の匂いのする風が通り過ぎて行く。
まだ日差しが強いわけでもない。丁度良い感じで気持ち良い。
でも日陰から日向を見ると、少し眩しい季節になったのだ。
「ロロー、おはよー!」
いつも通りピカピカの髪を靡かせて、ディさんのご出勤だ。テオさんとジルさんの姿も見える。
「いつも綺麗ね~」
「ね~」
と、セルマ婆さんとお顔を見合わせる。平和なのだ。
「ロロ、今日はプレゼントがあるんだ」
「でぃしゃん、ぷれれんと?」
「そうだよ。昨日言っていただろう?」
「あー! ちゅえ!?」
「そうだよ。作って来たんだ」
やった! ディさんは忘れていなかった。嬉しいのだ。
「みしぇて! でぃしゃん、みたいのら!」
「はいはい。ほらッ!」
腰に付けている小さなバッグから、短い杖を取り出した。
「ええぇッ!?」
またまたテオさんが驚いている。どうしてだ? 昨日も見たのに。ディさんのマジックバッグなのだ。
ディさんが作ってくれた俺の魔法杖。
持つところが世界樹の枝で出来ている。ディさんが彫ってくれたのかな? 持ち手の部分に、植物の蔓が巻き付いた様な彫刻がしてある。
その先はユニコーンの角だ。螺旋状の筋が入っている。真っ白ではなくて、ややグレーがかった黄色みのある淡い色。所謂アイボリーと言っても良いのかな?
昨日ディさんが、芯にフェニックスの羽根を使うと話していた。どうやって芯に入れるのか全く想像できない。ユニコーンの角は硬そうなのに。
それに、芯だから外側からは見えない。勿体ないのだ。
ユニコーンの角の先端に、緑色の小さな石が嵌めてあった。
「これは魔石だ。小さいけど、魔法を放つ時に補助してくれる。ロロの魔力に合わせて選んであるよ」
「へえー」
よく分からないのだけど、必要な物という事なのだろう。
「ロロ、持ってみて」
「うん。でぃしゃん、ありがと」
「うん、使い方を説明しようね」
使い方なんてあるのか? 杖なんだろう? これを持って、えいやぁーッてすれば良いのではないのか? ほら、ハリー〇ッターみたいにさ。
「先ず、ロロの魔力を登録するね」
ほう、魔力を登録とな?
「ロロ、杖に魔力を流せるかな?」
「うん、れきるのら」
俺が持つには少し大きい魔法杖。それを両手で持って、魔力を流す。すると、先端の魔石が光った。
「でぃしゃん、ペカーッて!」
「うん。ロロ、そのままだよ」
ディさんが杖に手を翳していた。
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今、改稿作業が佳境で個別にお返事出来ないので、この場をお借りして少しだけ頂いた感想についてお返事を。
多分、流して読まれているのだと思うのですが。
ブラックウルフの討伐について。
ブラックウルフやレッドウルフは『ウルフ種』の中で最強種だと書いております。全ての魔獣の中での最強種ではありません。また、ディさんはSSランクでしかもエルフなので、ウルフ種位は討伐できます。
ディさんはとっても強いのだと、ずっと書いてきたつもりだったのですが、伝わっていないようで残念です。
リアとレオも、他の冒険者達と一緒に倒したりしていますが、リアとレオだけが討伐していた訳ではありません。ギルマスや他の冒険者もその場にいました。
また、テオが通っていたのはリア達が通っていた『学園』ではありません。隣国にある『学院』に通っていました。
そこを早期卒業制度を利用して卒業しています。
テオがジルより冒険者ランクが低いのは、学院に通っていた為時間も取れなかったのだから仕方がないとジルは言ってますが、ジルも一緒に通っていました。
なので、それは何だよー、て感じの会話をしていました。
もっと皆様に読んで頂けるように頑張ります。
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