28ーロロを守りたい(レオ視点)
今日姉上とロロと一緒に、ギルドマスターに会いに行った。ピカとチロも一緒だ。
一緒に出掛ける事なんて、滅多にないからロロはご機嫌だった。いや、姉上もだ。ずっとロロを見つめてにやけている。
僕は単純に、ロロは付与魔法が使えると確認したかった事と、ピカやチロを登録する事しか考えていなかったんだ。
ギルマスの部屋に通された。そこまでは、想定内だ。だが、まさかエルフのあの人が来るとは思わなかったんだ。
冒険者の中では……いや、この国では有名なエルフのディディエ・サルトゥルスルさん。
近くで見たのは、初めてだけどなんて綺麗な人なんだ。エルフは総じて見目麗しいと言われているけど、こんなにとは思わなかった。
それに、優しくて温かい。俺達の事を黙っていてくれた。心配をしてくれた。
両親が亡くなってから、大人の人に心配をされるなんて忘れていた事だった。
僕達は元貴族だ。姉上はあの叔父から家を取り戻したいと思っている。それは姉上だけじゃなく、僕やニコもマリーもだ。
先ずは『貴族簿』を確認しようとしたんだ。僕と姉上が、この街に来て生活が落ち着いたら先ず最初にした事だ。
あの叔父が本物なのか調べようとしたんだ。
それには『貴族簿』を閲覧するのが1番確実だった。それ以外に僕達は、調べる術を知らなかったんだ。
『貴族簿』は、全ての貴族の事柄が詳細に書かれている。生死や相続、誰と婚姻したか、報告を義務付けられているんだ。
でも、それを見る事すらできなかった。僕達は、もう貴族じゃないからだ。
役所に行って閲覧の申請をしたんだ。でも、駄目だった。
ただの庶民が、しかもまだ子供がと言われた。いくら元貴族だと言っても、門前払いだったんだ。
姉上は窓口で粘った。家から持ち出した、伯爵家の紋章を見せても駄目だった。それどころか、盗んだのかと疑われてしまったんだ。
「姉上、今日は帰りましょう」
「レオ! だって……!」
姉上を、無理矢理連れ帰った事を覚えている。情けなかった。父上と母上がいなかったら僕達はなんて力がないんだ。
あの叔父だと言っていた奴、本当なのか? 父上に、弟がいるなんて聞いた事がない。
それにあのタイミングだ。父上と母上の葬儀が終わって直ぐにやって来た。
本当に弟なら、違うだろう? 葬儀に出るだろう?
なのに、父上を悔やむ言葉もなかった。
さっさと出て行けと、一点張りだったんだ。
姉上と僕は、冒険者を続けながらなんとか調べられないかと色々考えた。
学園に通っていた時の知り合いを頼ったりもした。僕達の代わりに、貴族簿を閲覧してきてくれないかと頼んだんだ。
皆、冷たかった。同じ学園に通っていたのに、まるで知らない人を見る様な目で見てくる。
家から追い出され、学園を辞め貴族ではなくなった僕達なんて相手にしたくないんだ。
「姉上、焦っても駄目です」
「じゃあ、どうすればいいのよ! 誰も何も聞いてくれないじゃない!」
「せめて……僕達がもっと大人だったら……」
でも、諦めた訳じゃないからな。必ず、本当の事を明らかにしてやる。何年掛かってもだ。
そう思いながら冒険者を続けていたんだ。
「焦ったら駄目だよ。君達はまだ子供だ」
初めて僕達の話を、親身になって聞いてくれた。それが、エルフのディさんだった。
「君達の母親の実家はどこなの?」
「確か……母上は侯爵家で、領地も遠いと聞いた事があります。それに、父上の方が家格が下で交流がなかったので……」
「そうか……それだけでは調べられないなぁ。とにかく、僕も何か調べてみるよ。でも僕はこの国の国民じゃないから、どれだけ調べられるか分からない。それでも調べてみるよ。だから、無茶をしない事だ。約束できるね?」
エルフのディさん。ロロのハンカチが縁で知り合った。マリー以外の大人で、信頼できる人ができた。
それだけでも、一歩前進かも知れない。
「びおじい、いいひとら」
「ロロ、そうなの?」
「うん。まりーとなかよし」
ロロはマリーと仲良しなら、良い人だと思っているのかな? 何が言いたいのだろう?
ディさんのスキルで、ロロは付与魔法が使えるとはっきりした。それよりも、ロロの加護だ。ピカやチロの事も本当に驚いた。
普通のワンちゃんじゃないとは思っていたけど、まさか神獣だなんて思いもしなかった。
ロロは守られているんだ。この世界の主神に守られている。
なら……どうして幼いロロから両親を奪ったんだ。
幼いロロは、両親の顔や温かさを覚えていないんだ。あんまりじゃないか。
「れおにい……だっこ」
「ロロ、眠いの?」
「うん」
「僕が抱っこしてあげるから寝なさい」
「うん」
朝からギルドに行って、疲れたのだろう。ディさんと別れて、家に帰ろうと歩いているとロロが甘えてきた。
ロロを抱き上げる。僕にもたれさせ、背中をトントンしてあげると直ぐにムニャムニャと眠る時のお口になった。
可愛い。まだ赤ちゃんぽさの残るロロが可愛くて仕方がない。両親の事を、覚えていないロロが不憫でならない。
「今日は驚く事ばかりだったわ。まさかロロがくれたリボンに、そんな効果があるなんて……」
「ふふふ……だから姉上、お守りだと言ったじゃない」
「そうだけど……本当にお守りだったのね」
「そうだよ。ロロの能力は高い。隠さなきゃ」
「そうね……」
「わふ」
「ピカも守ってくれているんだね。有難う」
「わふん」
そうか……だからあの日……父上と母上が死んだ日にピカは来たんだ。
ロロを守る為に……僕達も守られていたんだ。
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