270ーお客様
「やあ、こんにちは。楽しそうだね」
「まんどらごらなのら」
「え? マンドラゴラ!?」
「しょうなのら」
俺がピコピコハンマーで池の端を指す。
それを見た知らない人2人が、びっくりお目々になっていた。
「うわ、ジル。本当にマンドラゴラだ」
「びっくりですね、テオ様。私は初めて見ましたよ」
「いや、俺だって初めてだよ。抜いたら駄目なヤツだ」
しゃがみ込んで見ている。説明してあげよう。
「もう、ばしこーんしたから、へいきなのら」
「え? ば、バシコーン?」
「しょうなのら」
見せてあげよう。と、ヨイショとピカから降りる。
俺はそこにしゃがみ込み、ピコピコハンマーで地面をトントンと叩く。
――キュポン! キュポポン!
「ブフッ!」
「アハハハ!」
あ、笑ったね。笑えるよね、音が。でも強いのだぞ。
「それで気絶させたのか?」
「しょうなのら」
「てか、誰だよ? うちに用なのか?」
ニコ兄が、そう言った事で思い出した。
そうだった、知らない人だったのだ。
「君達に会いに来たんだ。2人だけなのかな?」
「りあねえとれおにいも、もうしゅぐかえってくるのら」
「ロロ、知らない人と喋ったら駄目だぞ」
「にこにい、しょう?」
「ああ、そうだぞ」
「君はお利口だね」
しゃがんで俺達と目線を合わせてくれる。悪い人じゃないと思うのだ。だって、レオ兄と同じ髪色をしているから。
「何? どうしたの? お客様かな?」
と、一応お客様のディさんが出て来た。フリフリのエプロンなんか着けている。きっとサラダを作っていたのだろう。それでも、綺麗なディさんだ。
「あ、あなたはサルトゥルスル様じゃないですか!?」
「え? そうだけど」
「感動です! まさかお会いできるなんて! パレード見てました!」
レオ兄と同じ髪色の人が、ディさんに握手を求めた。と言うか、無理矢理手を握ってブンブン振っている。
「テオ様、落ち着いてください」
「ジル、だって本物だぞ! サルトゥルスル様だぞ!」
「ええ、驚きました!」
二人とも、眼がキラキラしている。感動といった感じなのだろう。
うんうん、ディさんは有名人だからね。
でも突然だから、ディさんはちょっぴり引いているぞ。
「いやいや、君達誰なの?」
そう、誰なのだ? 俺達に会いに来たと言っていた。俺とニコ兄はキョトンとして見ていた。
「ああ、すみません。僕達は四兄弟を探して来たんです」
「『うまいルルンデ』で、ハンザさんって商人のお爺さんから聞いて来ました」
ハンザさん、お久しぶりなのだ。
四兄弟って俺達だよな? 有名になったものだ。やっぱパレードしたからかなぁ? ふふふん。
「ちびっ子の君は末っ子のロロアールド君かな? パレードでサルトゥルスル様と一緒に、馬車に乗っていたよね」
お? 俺の名前だ。この街ではロロとしか言っていない。どうして知っているのだろう? 怪しいのだ。
「ち、ちがうのら〜」
と、お返事してみた。でも、ちょっとだけ目が泳いでいる。片足もプランプランさせている。だって嘘だから。
「ブフフッ!」
え、笑われちゃった。
「ロロ、嘘だってバレてるぞ」
なんですと!?
「君は……ニコラウス君かな?」
「おう、そうだぜ」
え……ニコ兄、認めちゃった。いいのか? だって、知らない人なのに。
「ニコ! ロロ! ただいまー!」
「あ、りあねえ!」
リア姉とレオ兄が帰って来た。丁度良かったのだ。
「おきゃくしゃまなのら」
「お客様?」
「ロロ、知ってる人なの?」
「しららいひと~」
レオ兄が、頭を撫でてくれる。優しく、ただいま。て、言いながら。
「初めまして、君達を探していたんだ。僕はテオフォル・オードラン。君達の従兄弟に当たる」
え……!?
「オードランって、母上の……」
「そう、君達の母上のお兄さんの息子だ」
マジですか!? て、レオ兄は母様の旧姓を知っていたのか?
ディさんも驚いているけど……でも、オードランて名前は知っていたみたいなのだ。
「レオ、中に入ってもらおう」
「はい、ディさん。そうですね」
ちょっと待って、俺はバシコーンしていたのだ。
「どるふじい、まんどらごら」
「おう、ちゃんと処理しとくぞ」
「うん、おねがいなのら」
ドルフ爺に任せておこう。また食べるのかな?
「ロロ、またいたの?」
「りあねえ、しょうなのら」
「わふん」
「ピカ、あんまり早く走ったら駄目よ」
「わふ」
大丈夫なのだ。ピカはちゃんと加減してくれているのだ。
俺はテッテケテーと、先に走って家に入る。マリーに知らせなきゃ。
「まりー!」
「はいはい、ロロ坊ちゃま。お腹空きましたか? クッキーありますよ」
「うん! たべる! ちがうのら、おきゃくしゃまなのら」
「あらあら、そうなんですか?」
そうなのだ。マリーのエプロンの裾を握って後ろに隠れる。
悪い人じゃないと思うのだ。従兄弟だと言っていたし、ハンザさんが教えたくらいなのだし。でも思わずマリーの後ろに隠れちゃった。
「もしかして、君がマリーかな? やっぱり一緒だったんだね」
マリーの事も知っている。母様がお手紙でも出していたのかな?
それからマリーがお茶を出してくれて、俺とニコ兄はクッキーも出してもらって食べている。
俺とニコ兄は、ソファーの方じゃなくていつも食事をするテーブルだ。
「ロロ、あんまり食べたら夕ご飯食べられないぞ」
「らって、にこにい。おなかしゅいたのら」
ピカさんとチロも俺の足元で、食べている。
おや? そういえば、フォーちゃん達はどうしているのかな?




