263ー僕達の事 5(レオ視点)
姉上とそんな話をしていたら、フィーネがアッという顔をした。
「リアの元婚約者、私少し知っているわよ。学園で一時期噂になっていた事があるのよ」
「え、そうなの?」
なんだなんだ? と、大人達が興味深気な顔をしている。
それで僕は少し説明した。貴族簿が閲覧できなくて相談に行った時に、愛人になるのなら話を聞いてやると言われた事を話した。
「なんだそいつは!? まだ学生なのだろう!」
クリスさんが怒っている。そうだよな、普通そう思うだろう。まだ学生の分際で愛人なんて、有り得ない。
「その元婚約者よ。えっと、なんだったかしら?」
「姉上。中途半端に覚えているから」
「だってマティ、ざまぁ見ろって思ったのよ」
え? 何なんだろう? 少し興味が沸いてきた。
「僕が代わりに話しますよ。まあ、簡単に言うと学園を退学処分になったんです」
「「えぇッ!?」」
退学処分だって!? 一体何をしたらそんな事になるんだ!?
「そうそう、そうだわ。複数の女子生徒にしつこく言い寄っていたらしくて、連名で教師に訴えられたのよ」
「自分より身分が下の複数の令嬢に結構きわどい事をやっていて、脅迫紛いの事もしていたらしい。詳細は公表されていないけどね」
「えぇー、なにそれ」
「でしょう? そこからまだ余罪が出て来たみたいなの。どうやら女癖が悪かったのと、少しお馬鹿だったみたいね」
「なんだか言葉が出ないわ」
「あんなのと婚約解消して良かったのよ」
「でもそんな子息と、よく父上達は婚約を進めたよね」
「本当だわ、やっぱりお父様ったら何しているのかしら?」
だからそうじゃないって。
「それがご両親も知らなかったらしいよ。まさかうちの息子がってヤツだよ。夢にも思わなかったって」
「近頃の学園はどうなっているんだ? これは一度視察に入らせる方が良いか?」
王弟殿下まで呆れている。しかし、そんな人だったとは。ね、姉上。
「だからレオ。何よ」
「いや、婚約解消になって良かったね」
「本当だわ。そんな奴と婚姻できないわよ」
僕達がそんな話をしていた頃、ニコとロロは平和に畑の中を散歩していた。
外を見ると、みんな集まって下を見ているのが分かる。きっとプチゴーレムかフォーちゃん達がいるのだろう。
見ていて微笑ましい。またマンドラゴラじゃなければ良いのだけど。アハハハ。
◇◇◇
(ロロ視点に戻ります)
「ピヨピヨ」
「クック」
「ピヨヨ」
フォーちゃん達が俺の足元で喋っている。この子達も昨日見ていたから。
「ロロ、もしかしてフォーちゃん達は文句言ってんのか?」
「しょうなのら。わがままむしゅめらっていってるのら」
あ、言ってしまった。
リュシエンヌが、ガビーンと効果音がしそうな顔をしている。
「アハハハ、よく分かってんな!」
「わ、私、我儘じゃないわ!」
「え、我儘だろ」
「わがままなのら」
「あぶなかったのよぉ」
ララちゃんまで突っ込んでいる。ちびっ子にまで突っ込まれ、小さくなるかと思いきや。
「ちゃんと反省したの!」
堂々と反論してきたのだ。これはあれだね。逆ギレするタイプの人なのかも。
「なら、同じ事をしないようにな」
「分かっているわ」
「たかびしゃなのら」
「ちょっぴりえらしょうなのよ」
あ、しまった。またまた言ってしまった。ララちゃんと二人で、お顔を見合わせて笑った。
ふふふ、楽しいのだ。ね~っとララちゃんとにっこりだ。ララちゃんも、可愛いのに言うね。
それからニコ兄とリュシエンヌも一緒に畑の中をお散歩だ。
昨日は自分が自分がと、自己主張の強かったリュシエンヌさん。ニコ兄に言い訳なのか、謝罪なのか。
「本当に反省したの。ニコが助けてくれなかったら生きていなかったわ。有難う」
「おう、いいぜ。少しお利口になったんだな」
「えー、何その言い方」
「アハハハ」
うん、良い感じになったのだ。きっとリュシエンヌだって昨日は怖かったのだ。気が動転していたのだろうし。
ブラックウルフが迫って来た時には、もう駄目だと思っただろう。それさえも分からなくて、ただ恐怖だったのかも知れない。
ニコ兄が助けに入って……て、あれれ? もしかしてこれって吊り橋効果か?
ニコ兄がキラキラして見えちゃったのか?
皆でお昼を食べて帰る時にも、ニコ兄に言っていた。
「絶対に素敵なレディになるわ。だからまた会ってほしいの」
リュシエンヌがほっぺをほんのりとピンク色に染めながら、そう言って帰って行った。
ああしていればちょっぴり可愛いけど、でもララちゃんがやっぱ一番可愛い。
「ろろ、またあいにくるのよ〜!」
と手を振っていた。俺も手を振り返した。また会えるといいなと思ったのだ。
リア姉とレオ兄を見ると、いつも通りの表情をしているからお話は無事に済んだのだろう。
それより俺は、お昼ご飯を食べたらもう駄目なのだ。
「ふぁ~……」
「ロロ、もう眠いんだろう?」
「うん、レオ兄」
おいで、とレオ兄が抱っこしてくれてベッドへ連れて行ってくれる。
リア姉はまた剣を持ち出している。元気なのだ。
「ユーリア、薬草畑を手入れするぞ」
「はいはい」
「あらあら、麦わら帽子を被ってください」
「おー」
「はーい」
うん、ニコ兄もいつも通りだ。
ルルンデの街のお祭り『ルルウィン祭』は無事に終わった。
昼間はララちゃんと会って、ダンスを踊ってパレードもしちゃって、とっても楽しかったのだ。
夜はブラックウルフが出て来て、どうなるかと思ったけどなんとかなった。終わり良ければなのだ。
俺はスヤスヤと眠りについたのだ。




