257ー勢揃い
「ろろ~」
ララちゃんが、可愛い笑顔で俺に話しかける。
今日も可愛らしいフワリとしたワンピースに、ポニーテールのおリボンが揺れているのだ。
俺の手を当然の様に握ってくる。また会えて良かったのだ。
昨日はララちゃんも俺も帰りは眠ってしまったから。
小さなララちゃんがとても可愛い。その場だけ、明るくなったように見える。微笑ましくて、思わず笑顔になってしまうのだ。
「ララが今朝起きるなり、ロロに会いたいと言い出したんだよ。こんなに仲良くなるとはね」
と、クリスさんが言っていた。それはとても嬉しいのだ。
「ボクもあいたかったのら」
「ふふふ」
と、ララちゃんが嬉しそうに笑った。
出会いは、突然ララちゃんが俺の服を握っていた事だった。今にも泣きそうな顔をして、ギュッと俺の服の裾を小さな手で握っていた。
どうして俺だったのか分からないけど、これも縁なのかと思えるから不思議なのだ。
「ぴかちゃんも、おはよう」
「わふ」
「なんだ、朝からみんな揃って」
ドルフ爺だ。ドルフ爺は怖い者無しなのかな? 王弟殿下もいるのだけど。
「ドルフ爺、そう言わないでくれよ」
「殿下も何をしておられるのですか」
「いや、だってリカバマッシュを見たいだろう?」
「アハハハ、何ですかそれは」
あら、にこやかに話しているのだ。
「昨日はニコに、リュシエンヌの命を助けてもらった。有難う」
王弟殿下に深々と頭を下げられてしまって、驚いたのなんのって。ニコ兄がめちゃくちゃ慌てていた。見ている俺まで、変な汗が出そうだったのだ。
リュシエンヌが危ない時に、ニコ兄が身体を張って助けた。怖かったのだけど、かっちょよくて目が離せなかったのだ。
このリュシエンヌってお孫さん。俺を誘拐したあの令嬢に少し似ていると昨日は思った。だから関わりたくないなぁと思っていたのだ。でも、今日は少し違っていた。
戸惑いながら、いや恥ずかしがっていたのかな? ニコ兄にお礼を言っていた。これはカナリーさんに、きつく叱られたのだろうな。
「昨日は……助けてくれてありがとう」
「おう」
ふふふ、ニコ兄ったらなんてぶっきらぼうなのだ。照れているのかな?
次にやって来たのが、領主様とクラウス様だ。
「お、王弟殿下!? どうしてここに、いらっしゃるのですか!?」
王弟殿下がおられる事を知らなかったみたいで、驚いていたのだ。
「フォリコッコは大人しいのだな」
と、王弟殿下がコッコちゃん達の小屋の前でマジマジと見ていると、領主様が秘密を言っちゃったのだ。
「殿下、それだけではありませんよ。あの大きな亀は聖獣らしいですよ」
「なんだって!? 聖獣だと!?」
みんな揃って、クーちゃんの前に移動だ。でもクーちゃんはお昼寝中なのだ。身体をのべっと伸ばして、スピーッと寝息をたてて眠っている。クーちゃんの大きな甲羅の上には、子亀達が乗っていたりする。警戒感が全くない。
アハハハ、なんだかおかしいのだ。秘密なのだけど、王弟殿下なら良いのかな?
「レオ、あのプチゴーレムはどこにいるんだ?」
「プチゴーレム!? クリス、プチゴーレムと言ったか!?」
「今の時間は、畑のパトロールをしていると思いますよ」
「レオ! プチゴーレムが勝手に動くのか!?」
また王弟殿下が驚いている。忙しい人なのだ。驚いてばかりだ。
「はい、ロロが作ったんです。庭先で」
「ロロが!? に、庭先だとッ!?」
もう全然秘密になっていないけど、まあいいか。
「この家はどうなっているんだ!?」
「アハハハ! 殿下、ロロが連れているピカも神獣ですから」
「フォーゲル卿、そうなのか!?」
領主様もよく知っている。そりゃそうなのだ。例の事件は、その神獣のピカを手に入れようとした事が原因だったのだから。
でもあの時は、ピカが神獣だと公にはしないでいてくれた。それはとても助かった。
ピカと離れたくないのだ。
「君達とは、ちゃんと話しておかないとと思ってね」
「クリスさん、有難うございます」
きっと例の調査の申立ての事だろう。なら、俺はララちゃんと遊んでいよう。
「ろろ、おしゃんぽしゅるのよ」
「うん、ぴかにのる?」
「うん、のるのよ」
ピカさん、いいかな?
「わふん」
「ねえねえ、ロロ。畑に行くのかな?」
「うん、ららちゃんとおしゃんぽなのら」
「そう、僕も一緒に行くよ」
いつの間にかディさんは、いつもの麦わら帽子を被って首からタオルを掛けていた。もちろん、手には大きな籠を持っている。お野菜を収穫する気満々なのだ。
「ララちゃん、乗せてあげよう」
「あい、ありがとごしゃいましゅ」
「君はお利口さんだね~、誰かとえらい違いだ」
おっと、それは嫌味というものなのかな?
でもその嫌味の相手が、ディさんを見ているのだ。
カナリーさんの後ろから、身体半分だけを出してディさんの方を見ている。
昨日みたいに『私も』と言ってこない。昨日はカナリーさんが鬼の様にすっごく怒っていたから、叱られたのかも知れない。でも、怒るのはリュシエンヌが大事だからだよ。
ディさんは綺麗だから、女の子は憧れてしまうのだろう。だってキラキラして王子様みたいだから。
「リュシィ、私達は大切なお話があるの」
「お祖母さま、でも私……」
「俺が辺りを案内してやるよ」
お? ニコ兄がどうした? ニコ兄も優しいのだ。
「ニコ君だったかしら?」
「おう、ニコでいいぞ」
「ニコ、リュシィの相手をお願いしても良いかしら?」
「おう」
「ほら、リュシィ」
カナリーさんが、リュシエンヌの背中を押す。もじもじしながらニコ兄に言った。
「わ、私もこの周りを見てみたいわ。一緒にいてもいいかしら?」
「おう、案内してやるよ。ユーリア、予備の麦わら帽子あったよな?」
「ええ、持ってくるわ」
むふふふふ。にやけてしまったのだ。
お読みいただき有難うございます!
明日で第4章は終わりになります。予想以上に長くなってしまいました。
第5章も宜しくお願いします!
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宜しくお願いします。




