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251ールルウィン祭 夜の部 5

「ピヨピヨ!」


 早く戻るアルね! と、急かしてくる。


「まちゅのら。れおにいとどるふじいも、いっしょにもどるのら」


 側にいたディさんが、川向こうの遠くの方を見つめている。ディさんのエメラルド色した瞳が光った気がしたのだ。ペカーンてゴールドにさ。これは前にも見た覚えがある。

 あれだ、精霊眼で見ているんだ。

 遠くで血の様な真っ赤な目が見ているとは思いもしなかった。気付けるはずもなかった。

 泣き虫女神が立てたフラグの事も、すっかり忘れていたのだ。


「え……どうして!? 大変だ! みんな早く戻るんだ!」


 大きな声でディさんが、周りに呼びかけた。


「ディさん、どうした!?」

「ウィルさん、魔獣の群れがこっちに向かっている! みんなを避難させて!」

「なんだって!? 群れなのか!?」

「そうだよ! 早く!」


 そう言いながら、ディさんが俺をヒョイと抱き上げた。

 ララちゃんも、クリスさんが抱っこしている。


「れおにい! どるふじい!」

「レオ兄! ドルフ爺!」


 レオ兄とドルフ爺がまだなのだ。どうしよう!


「大丈夫だよ! ニコ! ロロ! 先に避難するんだ!」


 レオ兄も分かっているみたいなのだ。

 ここでやっと思い出した。俺は何度も泣き虫女神に教えてもらっていたのに。あまりにもお祭りが楽しいから、すっかり忘れていた。なんてこったい!


『夜は要注意ですよーぅ……よーぅ……よーぅ……』


 と、言っていた。態々教会で教えてくれたんだ。それに、その前も何か言っていたぞ。思い出せ。何だっけ? 確か……


『ピカちゃんとチロも連れて行くのですよ』


 大丈夫だ。ピカとチロはいつも一緒だ。それにディさんも一緒がいいと言っていなかったっけ?

 それからそれから、ずっと前に……そうだ! クーちゃんだ!

 クーちゃんのシールドが役に立つと言っていた時もあったのだ。


「れおにい! どるふじい! くーちゃんなのら!」


 ディさんに抱っこされながら、後ろに向かって俺は叫ぶ。


「ロロ、何言っているんだ!?」

「でぃしゃん、くーちゃんなのら!」

「だからクーちゃんがどうして……あ! 分かった! シールドだね!」

「しょうなのら!」


 でもまだクーちゃんを、荷車に乗せようとドルフ爺とレオ兄が担ぎ上げている。

 そんな事をしていると、川の上流の方から叫び声が聞こえてきた。魔獣に襲われているのだ。


「ディさん、ここを頼む! 私が行って来る!」

「分かった! 怪我人はテントに来るように言って!」

「おう!」


 と、王弟殿下が自ら走って行く。その後を追いかけて、護衛の人だろうか。男の人が何人も走って行く。

 早いのだ。あっちは任せておいて大丈夫だと思おう。


「ロロ、ポーション持っているよね?」

「ピカがたくしゃんもってるのら! チロもいるのら!」

「良かった。僕達はテントに急ごう」

「うん、いしょぐのら」


 俺はディさんに抱っこされているのだけど。


「みんな! テントに戻って! 急いで!」


 ディさんが大きな声で呼びかける。周りにいた人達は、何事なのかと分からないまま走ってテントへと急ぐ。

 ああ、本当になんで忘れていたのだろう。だって、今日は一日色んな事があって、とってもとっても楽しかった。なのに、夜にこんな事が起こるなんて。超ピンチなのだ。

 マリー達もフィーネ達もみんな一斉にテントへと急ぐ。

 やっとクーちゃんを乗せたらしいドルフ爺とレオ兄が、川を離れて追いかけて来る。

 でもクーちゃんが重いのだ。ドルフ爺が荷車を引いて、レオ兄が後ろから押して、それでも地面が砂利でなだらかな傾斜がついているからなかなか進まない。


「はやく! どるふじい、れおにい!」

「ロロ、ピカにポーション出してもらって!」

「わかったのら!」


 俺達はなんとかもうすぐテントだという場所まで戻って来た。

 川の上流の方から、物凄いスピードで移動して来る真っ赤な眼が幾つもあった。


「でぃしゃん、あれ!」

「ああ、先頭集団だろうね。本体はまだ離れた場所にいるんだ」

「しょんなにいるの!?」

「そうなんだよ、こんな事は異常だ。いくら防御壁の外だからといって、こんなに大きな群れが出てくる事なんて有り得ない」


 どういう事なのだ? とにかくなんとかしなくちゃ。

 やっとテントに着いた俺達は、ギルマスと合流する。


「ぴか、ぽーしょんじぇんぶらして」

「わふ」


 そんな事をしていると、ディさんが言った魔獣が目で確認できる距離まで迫っていた。

 だが、川向うで足踏みをしている。


「さっき結界を補強したばかりだからだ。こっち側へは渡って来られないはずだ」


 ディさんが魔法杖を出してしていたのは、やっぱ大切な事だったのだ。

 こっち側へは来られないと聞いて、ホッとした。今の内に怪我人を受け入れる準備をしようと思っていたのだ。なのに……


「嘘だろ、何なんだあれは!?」


 魔物を注視していたディさんが声を上げた。

 俺はその声に反応して、川の方を見る。目を疑った。直ぐには理解できなかった。

 何故なら、川の真上の空中に幾つもの禍々しい魔法陣の様な紋様が赤黒く浮き上がり黒い煙の様なものがモヤモヤと出ている。そこから魔物が出て来て、川のこっち側へと渡って来ていたんだ。

 よく見ると川の向こう側にいる魔物達が、その魔法陣を目掛けてジャンプして飛び込んでいる。

 あんなの見たのは初めてだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しいお祭りなのに魔獣の群れ現れるなんて大変‼️(≧∇≦) 呑気なクーちゃんだけど大好きなドルフ爺の為にもシールド頑張って〜 [一言] これからどうなる❓また新たなロロの力が現れる⁉️
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