229ーレオ兄のお話
自分達の家で育てたお花を使う人達も沢山いるらしい。その人達は、育てた花で作った花冠とレイを持って教会に行き、女神様の像に飾り付けて広場の鳥さんの像にも飾り付ける。
俺達は家で育てていない。だから教会で貰えるそうだ。
「どるふじいも、そだててないの?」
「ああ、俺は野菜専門だ」
だからその花を見た事がなかったのか。
「来年は俺が育てるぞ。植えるんだ」
「にこにい、しゅごいのら」
「任せろ。絶対に綺麗に咲かせてみせるぞ」
おお! 心強いのだ。て、でも来年なのだ。今年は教会で貰おう。
「ロロは朝早くに起きられるかな?」
「れおにい、おきるのら。おこして」
「うん、頑張って起きようね」
「うん!」
楽しみなのだ。もう明後日なのか。そうだよな、だって街中がお祭り一色になっているもの。
もう広場には屋台が並んで、建てられているのだ。
午前中にマンドラゴラ畑の柵を作り終えて、お昼ご飯の時にレオ兄がみんなに話があると言った。何だろう?
「僕達の貴族籍の事なんだ」
レオ兄からフィーネ達のお兄さんが、協力してくれる事になったと教えてもらった。どうやら明後日のお祭りにも来るのだと。
「ふぃーねもくるのら?」
「多分、お兄さんと一緒に来ると思うよ」
何故なら、武官家系では女神同様に崇めている四英雄のお祭りだから、フィーネ達だけじゃなくて武官家系の貴族達は来るらしい。
その調査の申立てに何名かの貴族の連名が必要なのも分かった。へぇ~、そうなのか。て、感じなのだけど。それよりも、俺が驚いたのはギルマスだ。
「ぎ、ぎ、ぎるましゅが!?」
「アハハハ! ロロ、どんだけ驚いてんだよ」
「らって、にこにい。ぎるましゅなのら」
「あれ? 知らなかったの? 知っていると思っていたよ」
なんだ、ディさんは知っていたらしい。
でも、あのギルマスだぞ。イケイケのオジサンのギルマス。
俺が初めてギルマスの部屋に行った時には、葉巻を吸っていた。
あの筋肉と、ツンツンした髪に大きなサングラスだぞ。貴族って感じなんてどこにもない。
あ、こんな事を言ってはいけないのだ。
「私も驚いちゃったわ」
「まあまあ、そうなのですね」
ほら、リア姉やマリーも驚いているのだ。
「でも、協力してくださるのなら良かったです」
マリーの言う通りなのだ。あと一人貴族をと言われても、俺達にそうそう貴族の知り合いなんていない。
いや、俺が知らないだけでリア姉やレオ兄にはいるのかな?
「ロロ、なあに?」
「りあねえと、れおにいに、きじょくのしりあいがいるの?」
「いるわけないじゃない」
「アハハハ、いないよ。だからどうしようかと思ったんだ」
なるほど、なら良かった。うんうん。
ギルマスが協力してくれて、それで調査の申立てができるのだろう? 進歩なのだ。
俺はそれよりも、フィーネのお兄さんに会うのが楽しみだったりする。話を聞いていると、良さそうな人ではないか?
「もしかしたら、お父上も来られるかも知れないらしい」
「え? そうなのか?」
熱血漢なのだって。人情に厚く、何にでも熱い人。それも良いじゃないか。
俺はリア姉とレオ兄に、年上の頼りになる人ができる事はとっても良いと思うのだ。
ディさんやドルフ爺がいるけども、それでも貴族ではない。
ディさんは何だか特別らしいのだけど、俺はよく知らない。
いつも俺達の為に、頑張ってくれているリア姉とレオ兄。相談できる人も必要なのだ。ふむふむ。
俺は腕を組み、片手を顎にやる。いつもの、シブいポーズなのだ。足はプランプランしちゃうけど。
「ロロ、また何か考えているんでしょう?」
「りあねえと、れおにいが、しょうらんれきるのはいいことなのら」
「ロロ、そんな事を思っていたのか」
レオ兄、何だ? 俺、変な事を言ったかな?
「ロロは時々、大人の様な事を言うね」
「本当だわ。私達の事を考えていたんでしょう?」
おやおや、だって中身は社会人だからね。て、それ程の歳でもなかったけど。
それでも、リア姉やレオ兄よりは年上だった。いつもはとっても3歳児なのだけど。
「ロロはしっかりしているし、優しい子だ。ニコもだ。みんな良い子だよ」
ディさんがまるで親の様な目で俺達を見て言った。
実際ディさんから見たら俺達なんて子供、いや孫? もしかして曾孫か? もっとか? ええ?
「ロロ、変な事は考えなくていいよ」
「あい」
バレちゃったのだ。どうしてだろう? 俺はどうやらお顔に出やすいらしい。
「あらあら、ご馳走を用意しておかないといけませんね!」
なんて、マリーが張り切ってしまっている。え? 家に来るわけではないのだろう? お祭りに来るのだろう?
「ん~、どうだろう? もしかして来るかもね」
「フィーネ達がいるものね」
なるほど。まあ、それでも良いじゃないか。
「ロロ、覚えているかな? ピカやチロ、プチゴーレム達は秘密なんだよ」
「あ、わしゅれてたのら」
それはいけない。ピンチだ。この家には秘密がいっぱいなのだ。
「ピカとチロはもうフィーネが知っているから、お兄さんは知っているかもね。でも、イッチー達は秘密だ」
「うん、ひみちゅ」
「けどさ、クラウス様は知っているぞ」
あ! そうだったのだ! いかん、いかんよ!




