227ー優れもの
「アハハハ! 可笑しい!」
「ね、最高じゃない!? しかも、硬いのに軽いんだよ」
だって作る時に、強く硬くと思って作ったのだもの。
俺の付与魔法(?)というものが、しっかりと働いてくれた結果なのだ。
俺が作った、ピコピコハンマー。
俺の思った通りに強く硬くなっていた。優れものなのに、この音だ。
何がどうしてこの音が、採用になったのかは全く分からない。もちろん作る時に、俺が想像していた訳でもない。
でも、まあ良いか。と、思うのだ。慣れてくると、なかなか可愛らしく思えてくるのだよ。
なにより、俺の手にぴったりのサイズで、しかも軽い。とっても軽いのだ。
だから俺はピコピコハンマーを持ったまま、手を掲げたりできるのだ。
「ロロ、そんなに軽いの? 土なのに?」
「しょうなのら。れおにいも、もってみるのら」
はい、とレオ兄に渡した。
それを手に持ったレオ兄。
「ブフフッ」
え? どうして笑うのだ? 今は笑うところではないぞぅ。
「これ、羽なんだね?」
「しょうなのら。こっこちゃんのお手々なのら」
「アハハハ! コッコちゃんかぁ」
「ね、凄いだろう? 見た?」
「はい、ディさん。こんなのが作れるなんて」
「そうなんだよ。ロロの才能が怖いよ」
何の話なのだ? 『見た?』と、ディさんが聞いていたから、多分鑑定眼の事なのだろう。
作った本人の俺が気付いていない事があるのかな?
また無意識で、俺は何かやっちゃったかな?
「ロロ、そうじゃないよ。これはとても凄いねって話だよ」
「でぃしゃん、しょう?」
「そうだよ。ロロは天才だ!」
「ええー」
それはとっても言い過ぎなのだ。
俺が使える土属性魔法なんて大した事がない。付与魔法だってそうだ。
俺独自の感じで付与しているのだから。ちゃんと教わりたいのだ。
「ロロ、これに魔力を流して叩けば、魔物だってやっつけられるよ」
「らって、でぃしゃん。まんどらごらも、まものなのら」
「アハハハ! そうだったねー」
何を言っているのだ? 俺はその魔物のマンドラゴラを、バシコーンしたくて作ったのだから当然なのだ。
「ロロ、マンドラゴラ持って行くぞ」
「うん、どるふじい」
「ドルフ爺、柵を作る方が良いよ」
「そうなんだけどなぁ」
「明日、僕が作ろうか?」
「レオ、僕も手伝うよ」
そうなのか? レオ兄は冒険者ギルドに行かなくても良いのかな? 一日、家にいるのかな?
いつもリア姉とレオ兄は、一日中いないから家にいるなら嬉しいのだ。
「レオ、じゃあ明日はお休みにするの?」
「姉上、いいかな?」
「いいわよ。ちゃんと話しておきたいし」
「そうだね」
何なのだろう? 何にしろ、明日はリア姉とレオ兄が家にいるのだ。
「れおにい、ボクもてちゅだうのら!」
「そう? じゃあ、手伝ってもらおうかな」
「うん!」
翌日、レオ兄はドルフ爺と一緒に、マンドラゴラ畑に柵を作っていた。
広く隙間を開けるとそこから出てしまう。ジャンプしたり登ったりはしないから、高さはそう必要ないだろう。
それでも、木でしっかりとした柵を作る。コッコちゃんの柵の方が適当なのではないか? と、思うくらいなのだ。
マンドラゴラの、体が通れない程度の隙間を空ける。ちゃんと開閉できる扉もつけてある。
コッコちゃんは自分で扉を開けて、お外に出て来る。まさか、マンドラゴラもそうなったりして。いやいや、それは困るのだ。
無害なコッコちゃんと違って、マンドラゴラは状態異常にしてしまうのだから。
「レオ、今年は祭りに行くんだろ?」
「うん、行くよ。ロロが張り切っているしね」
「なんだ、ロロ。そうなのか?」
「うん、じぇんぶみたいのら」
街の空気というか雰囲気が、お祭りが近くなってきたという感じなのだよ。
お花が道端に出されていたり、広場に屋台が設置され出したり。
教会では、ビオ爺が一生懸命お掃除をしていた。女神像を拭いているのだ。
そういえばニルスが『年に1回のビオ爺の出番だ』とか、話していた。
日に日に、ウキウキ感が増してくる。
俺は今から、とっても楽しみなのだ。
「夜には川へ行くのも知っているか?」
「びおじいに、きいたのら」
「その時に、クーちゃんも連れて行ってやりたいんだ。川なら行ってみたいらしい。クーちゃんは大きくて、池で泳げないからな」
なんですと!? クーちゃんも!? だって、クーちゃんは歩くのがとっても遅いのだ。
それに人も多いだろうと思うよ。そこにあんなに大きな亀さんが、ノッシノッシと歩いていて大丈夫なのか?
「だからクーちゃんを乗せる荷車を作ったんだ」
作った!? ドルフ爺が本気なのだ。きっとそんなところに、クーちゃんは惚れちゃったのだろう。
ドルフ爺は優しいし、なんでもできる。 俺だって、ここに来たばかりの頃はお世話になったのだし、今も変わらずお世話になっている。
もしかしてそれを作っていたから、マンドラゴラ畑の柵が後回しになっちゃったのか?
「少し上流に行けば人も少ないだろう」
「なら、いいんじゃない? クーちゃんと小亀も連れて行くの?」
「いや、小亀は流石に危ないから留守番だ。コッコちゃん達も留守番だしな。イッチー達とフォーちゃん達も留守番させるつもりだ。番犬じゃなくて、何ていうんだ? アハハハ」
大人しくお留守番をしてくれるのだろうか? ドルフ爺が此処にいるから、プチゴーレム達も側で見ている。




