214ー魔力を
確かに、動き出して直ぐの頃は、よくキャンキャンと魔力が欲しいと言って来ていた。俺はナデナデしながら、魔力を流したりしていたのだ。
それがお墓参りから、帰ってきた頃からだろうか。時々俺の近くには寄って来るけど、それだけだったのだ。だから俺も特別何かをする事はなくなった。
ディさんの見立てでは、プチゴーレム達に俺の魔力が充分に馴染んだから、近くにいるだけで補充できる感じになっているらしい。
お墓参りの時に、長い時間ずっと一緒にいたのが影響しているのかな?
いつそんな事を話していたのか、俺は全然知らなかったのだ。
「いっちーたちも、せいちょうしてるのら」
「うん、そうだね」
トコトコとレオ兄と畑の中を歩いていると、ドルフ爺がいた。その足元にはプチゴーレム達だ。
「あ、どるふじいといるんら」
「ドルフ爺は親分だね」
親分かぁ。リーダー? いや、チーフ。うぅー~ん、なんだかしっくりこない。やっぱ、ボスがいい。
「おう! 今朝は早いな!」
「うん、ロロが起きちゃったんだ」
「コッコちゃんとクーちゃんの餌を集めてきたぞ」
ドルフ爺がそう言った途端に、コケッコー! クック―! ピヨピヨ―! と、鳴きながら走り出したコッコちゃんファミリー。そんなに腹ペコだったのか?
走っているのを見ていると、親コッコちゃん達よりオレンジ色の子達の方が早く走っている。しかも、大きくなった。
「ロロ、色もだよ。薄くなってきただろう」
「ほんとら」
鮮やかなオレンジ色だったのに、今はそれが淡い色になっている。でも、他の雛達とは色が違う。
「ほかのひなは、もっとしろいのら」
「そうだね、もう殆ど白色になっているからね」
フォーちゃん達は大人になっても、真っ白にならないのではないかな? なりそうもないぞ。
今で丁度、親コッコちゃんの半分位の大きさになっている。まだまだ大きくなるのだ。
「どるふじい、ありがと」
「おう、良いってことよ。ロロ、教会のコッコちゃんの餌だけどな」
ほうほう。ドルフ爺の息子さんに頼むと相談していたのだ。
息子さんが朝早くに、市場で売る為に野菜を持って行く。その時にコッコちゃん達の分を、大きな籠に入れて教会の前に置いておいてくれる事になった。
「教会も雛が増えただろう? 子供達に運ばせるのも、危ないと思ったんだ」
「ありがと」
「おう、もうビオ爺と話はしてあるからな」
そんなに早く対応してくれたのか。それは子供達も助かるのだ。
「それでロロ。今日の午後に、ニコと一緒に孤児院へ行くぞ」
「しょうなの?」
「ああ、畑を見てみるさ」
「うん、じぇんじぇん、らめらめらったのら」
「そうか、そんなにか?」
「しょうなのら」
そうだよ。素人の俺が見ても駄目だと分かるのだ。多分、土も駄目なのだと思うぞ。
「きほんが、らめなのら」
「アハハハ! 基本ってか?」
「ほんとうなのら」
「ロロ、そうなの?」
「うん。じぇんじぇんらめ」
「アハハハ!」
何故かドルフ爺にうけてしまったのだ。
「ロロは、毎日畑を見ているから分かったんだろうよ」
「しょうなのら」
「えらいぞ。お利口だ」
ドルフ爺に頭をグリグリされた。これは撫でているつもりなのだ。
でも手が大きいし力も強いから、頭がグラングランして俺のお首がやられそうなのだ。
「ドルフ爺、力が強いよ」
「お? すまんすまん」
じゃあ一緒に行くから、お昼寝から起きたら声を掛けてくれと言って、ドルフ爺は畑へ歩いて行った。勿論、プチゴーレム達を引き連れてだ。朝から元気な、ドルフ爺とプチゴーレム達だ。
「ほら、今だってイッチー達はロロから魔力を貰っていたよ」
「しょうなの?」
「うん、見ていたからね」
レオ兄の鑑定眼なのだ。良いなぁ~、俺も精霊眼が無理でも鑑定眼が欲しい。
泣き虫女神さん、要相談なのだ。もう少し大きくならないと駄目なのかなぁ?
「坊ちゃま、食事にしましょうか」
それからいつもの様に、みんなで朝ごはんを食べたのだ。
もう少ししたら、ディさんがやって来るだろう。それまで俺は、少し軒下でセルマ婆さんと日向ぼっこだ。
もふもふしたピカさんに靠れて、2人でのんびりとしていたのだ。
「ロロ! セルマ婆さん! おはよう!」
今日も元気に出勤なのだ。キラッキラでサラッサラの、長いグリーンブロンドの髪を靡かせながら手を振っている。俺が刺繍したグリーンのおリボンも、毎日つけてくれている。お似合いで良かったのだ。
「でぃしゃんら」
「相変わらず綺麗ね~」
「ね~」
とっても、のんびりしているのだ。ちょっぴり暑くなってきたけど、まだ午前中は涼しいし軒下の陰に入っていると過ごしやすい。
俺は小さな手をフリフリとしながら迎える。
「おはよー」
「おはようございます~」
「今日も良いお天気だねー」
そのままディさんは、ヒョイと俺の隣に座る。ディさんが側に来るとふんわりと良い香りがするのだ。森林の様な、爽やかな香りだ。
「きょう、どるふじいとにこにいもいっしょに、きょうかいにいくのら」
「そうなの? 畑の事だよね」
「しょうなのら」
コッコちゃんのお野菜も、息子さんが持って行ってくれていると話す。
「ああ、それは昨日聞いたよ。ドルフ爺が直ぐに手配してくれて助かったよ」
そうなのか。俺は早い時間に眠ってしまうから知らなかったのだ。




