210ーよし、やるぞ
赤ちゃん亀達は興味津々で、チョロチョロとこっちにいるけどいいのかな?
「くーちゃん、あかちゃんかめさんの、いけなのら」
「まあー、そうなのねーぇ」
だから、池の大きさを見てほしい。
クーちゃんよりコッコちゃん達の方が、何だ何だ? と、俺の側に勢ぞろいして、お首をヒョコヒョコ動かしながら見ている。
相変わらず、コッコッコ、クックとお喋りしている。クーちゃんは呑気だからとか言っているのだ。
「充分なのよーぅ」
「じゃあ、掘ろうか。レオ、ニコ、ロロ」
「はい」
「ええー、どうするんだよ?」
「わからないのら」
良いお返事をしたのは、レオ兄だけだった。ニコ兄と俺は、何をどうすれば良いのか全く分からない。
「ニコ、ロロ、自分の中の魔力を意識するんだ。魔力を流して、地面を掘るんだよ」
レオ兄はよく分かっている。俺達に教えながら地面に手をつき、魔力を流してどんどん掘っていく。ディさんも、そうそうと頷いているのだ。
でも俺は、そう簡単に言われても直ぐにできるものでもない。
「むむむむ」
「マジかよ。レオ兄、スゲーな」
「アハハハ、でも土属性は使い慣れてないからなぁ」
それで慣れていないと仰る? 目の前の地面を、ガンガン掘っているのだけど。
「ほら、ニコ。頑張って」
「だってディさん、全然できないぞ」
「さっきレオが言っただろう? 自分の中の魔力に集中するんだ」
「よし、集中だな」
と、ニコ兄が集中したらしい。するとどうだ。地面がボコボコと言い出して、レオ兄程じゃないけど少しずつ地面を掘っていく。
ニコ兄もできてしまった。俺は焦っちゃうのだ。
掘った土は池の周りに積んでよ。と、ディさんが指示している。
「おー、慣れたら簡単だぞ」
「えー、にこにい。れきないのら」
レオ兄とニコ兄の側に並んでしゃがみ込み、小さな手で地面を触っているのだけど。
むむむむと、集中しているつもりなのだ。
「ロロ、イメージしてごらん? レオやニコが掘っているだろう? それを見ながらイメージするんだ」
「むむむむ」
イメージだね。よし、やるぞ! と、魔力を流す。土を掘るイメージ。すると、地面がポコッと掘れたのだ。ほんの少しなのだけど。
「あ、れきた?」
「うんうん、その調子だよ」
よしよし、なんとなく分かった。これはもっと沢山魔力を流しても良いのだね。
「よし、れきるのら」
「そっか、ロロはセーブしてしまっていたんだね」
ディさんの言う通りなのだ。俺はコッコちゃんの卵の件から、魔力をセーブする方に気を取られていたのかも知れない。
俺は魔力量が多いと言われたし、コッコちゃんの卵に流した時には、ほんの少しのつもりだったのに多かったらしいし。
今回はそんな事を考えずに、気持ちよくやってみよう。遠慮なく魔力を流すと、ボコボコとどんどん掘れていく。良い感じなのだ。
「ニコもロロも上手だ」
「ディさん、土属性って畑で使えるな」
「ニコ、だからそう言ってたじゃない」
そうなのだ。畑を耕したりする時にも使えると、前にディさんが話していたのだ。
ニコ兄は畑で作業する時に、便利な属性を持っているのに今まで全然使えなかった。だって魔力操作の練習をしていなかったから。
なのにお墓参りの帰り道で、それを簡単にマスターしてしまった。
だから、ニコ兄はきっと高い能力を持っているのだと俺は思うのだ。
3人で地面を掘ると、小さな丸い池ができた。ここにまだ水路から溝を掘らないといけない。
「こっちは水路から水を取る方で、あっちが池から流す方。どっちも傾斜を考えて、掘らないといけないよ。先に水を取る方だ」
ディさんが道筋を、また木の枝で印をつける。そこを掘っていくのだ。
水を取る方と、流す方で傾斜を変えないといけない。
「レオ、池の底と側面を硬められる?」
「はい、ディさん」
なんですと? そんな事もレオ兄はもうできるのか? 俺はレオ兄の隣でジッと見る。どうやってするのだろう?
見ていても全然分からない。だって、両手を地面についているだけなのだもの。俺も精霊眼があればなぁ。
「れおにい、ろうやってしゅるのら?」
「ん? 硬くなれーって思うんだ」
「ふむふむ」
「アハハハ!」
「れおにい、しんけんなのら!」
「アハハハ。ごめん、ごめん。でも本当だよ。硬くなれーって、思いながらイメージして魔力を流すんだ」
「なるほろー」
よし、俺も挑戦だ。だって俺はチャレンジャーなのだから。
地面に手をついて、イメージして、硬くなれー……て、ならないのだ。
「あれれ?」
「ロロ、付与する時と同じだよ」
「でぃしゃん、ふよ?」
「そう、ハンカチとかに付与する時に思うだろう?」
ああ、そうか。そう言う事なのか。よし、できるのだ。
プチゴーレムを作った時だ。俺は無意識で魔力を付与していた。あの感覚なのだ。
「むむむむ」
硬くなってね、お水をいれるから。ドロドロにならないように、硬くなれー。どうかな? できていると思うのだ。
「うん、ロロ。上手だ」
「ええー、ロロまで上手なのかよー」
「ニコ、ほら掘って」
「ディさん、分かってるって」
ニコ兄が溝を掘っている。傾斜を考えているか? あれはきっと考えていないぞぅ。
それでも、もう慣れたのかニコ兄がどんどん掘っていく。早いのだ。




