21ーギルドマスター
「ロロ、チロも連れて行くよ」
「うん」
俺がいつものお出掛けポーチを肩に掛けて準備をしていると、レオ兄が話しかけてきた。
「ロロが作ったポーションも持ってる?」
「ん、いれてる」
「よし、じゃあ行こう」
リア姉とレオ兄、それにピカも一緒に冒険者ギルドへお出掛けなのだ。チロはポーチの中でまた寝ている。ご飯を食べたら、直ぐに寝てしまうのだ。
「ロロいいなぁ〜、俺もギルドに行きたい」
「ニコは畑を頼むよ」
「レオ兄、分かってる! ユーリア行こう!」
「先に水やりしなきゃ」
バタバタとニコ兄とユーリアが出て行った。
「あらあら、お弁当を忘れているわ!」
慌ててマリーが追いかける。さっき並べて、準備していたのに忘れているのだ。
「アハハハ、ニコは落ち着きがないなぁ」
「レオ、ロロは私が抱っこするわ」
「りあねえ、あるくのら」
「え、姉様が抱っこしてあげるわ」
「いい、あるく」
ガビーン! て、顔しないでくれ。歩くくらいでどうしてそうなる?
「ロロ、疲れたら兄様に言うんだよ」
「ん、だいじょぶなのら」
だってギルドを通り過ぎて、教会まで歩いたから大丈夫なのだ。
「さあ、行こう。マリー、行ってくるよ」
「はい、お気をつけて」
マリーが家の前で、手を振ってくれた。俺も、フリフリと手を振り返すのだ。
俺が真ん中で、レオ兄とリア姉と手を繋いで歩く。ポテポテと歩みは遅い。ピカも合わせてゆっくりと歩いてくれる。
今日も良い天気だ。薄い青空に綿菓子みたいな雲がフワフワと浮いている。
時々ほっぺを撫でていくそよ風も気持ちいい。長閑なのだ。
前世の俺は、確かに生活は充実していた。仕事は突然無職になっちゃったし、両親とも疎遠だったけど趣味が楽しかった。
でも、こんな長閑な時間は無かったなぁ。青空を見て、雲が綿菓子みたいなんて思った事もなかったのだ。
そもそも、そんなに空を見ていなかった。時間があれば、下を向いてスマホやタブレットを触っていた。前世とは大違いだ。
「むふふ」
「ロロ、どうした?」
「いいお天気ら」
「そうね〜、雲が綿菓子みたいだわ」
「ね〜」
「わふ〜」
なんだ、リア姉も同じ事を考えていたのだ。
綿菓子みたいにフワフワとした美味しそうな雲だ。ピカもきっと同じ事を思っているのだ。
「姉上は食い気だね」
「なによぅ、いいじゃない。長閑だわ」
「そうだね」
ちょっぴり、ピカとチロが神使だってバレないか心配なのだ。でもヤバかったら昨夜眠っている間に、泣き虫女神が呼び付けただろうと思う。
あれだけ長い時間眠っていたのだ。呼び出す時間は、充分にあっただろう。それがなかったのだから大丈夫だろう。
ギルドまで行く途中、お天気は良いしいつもはいないリア姉やレオ兄と手を繋いでいた。俺はちょっぴり上機嫌でスキップしてしまったのだ。
「ロロ、可愛いぃ!」
「アハハハ。スキップになっていないよ」
「えへへ〜」
「わふん」
そんな事をしながら、ギルドに着いたら中は人でいっぱいだった。ちょっと男臭いか? でも、女の人の冒険者もチラホラ見かける。
みんな、剣や槍や弓を持っている。自分の身長と同じ位の、大きな剣を背負っている人もいる。
レオ兄は真っ直ぐに空いている受付カウンターへ歩いて行った。
「レオだけど、ギルドマスターに会いたいんだ。以前、相談していた事だって言ってもらえれば良いよ」
「はい、分かりました。少々お待ち下さい」
くぅ〜、俺はチビ過ぎてカウンターに届かないぞぉ。辛うじてお手々でカウンターの端っこを掴み、背伸びをして中を見てみる。
ギルドの制服なのかな? お揃いの服を着た人達がカウンターの中に何人もいた。
受付でクエストを受付する人達。奥でバタバタと書類を運んでいる人達。沢山の人が働いていたのだ。
「ロロ、人が多いから抱っこしようね」
「うん」
レオ兄に両手を出す。
「あたしが抱っこするわ」
横からヒョイと、リア姉に抱っこされた。漏れ無くほっぺにスリスリも付いてくる。うん、外ではやめてほしいのだ。
「姉上、大丈夫? 人が多いから気をつけなよ」
「大丈夫よ。鍛えているもの」
え、俺ってそんなに重い? 鍛えなきゃ抱っこが辛いとか?
「ロロ、重いのじゃないよ」
「そうよ~、ロロなら1日中だって抱っこしていられるわ!」
うん、それは遠慮しようかな。1日中ほっぺに、スリスリされそうだ。俺のふわむちほっぺが、すり減ってしまうのだ。
「レオさん、お待たせしました。ご案内しますね」
制服姿の、ちょっぴり綺麗なお姉さんが2階へと案内してくれる。
階段から見ると思ったよりも広い事が分かる。俺はちびっ子だから目線が低いのだ。だから、全体は見えなかったのだ。
ギルドに入って直ぐの場所にはテーブルと長椅子が幾つも並べてある。
そこで皆受けたクエストを確認していたり、食事をしたりしている。軽食を売っている売店もある。
その奥の壁には、クエストの紙がランク別にズラリと貼ってある。
それを持って正面にあるカウンターまで行って、クエストの受注を済ませるのだ。
カウンターの奥には何人もの人達が働いていた。
そのまた奥には、納品所と解体場のプレートがある。そこに討伐した魔獣等を納品して、現金に交換してもらったり解体してもらったりするらしい。
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お正月の番外編を考え中です。お楽しみに!
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