20ー旅人2人
「噂ですか?」
真面目な話はレオ兄担当だ。
みんなプリンに夢中だしね。卵の味がしっかりとする、昔ながらの手作りプリンといった感じだ。カラメルソースも美味しいぞぅ。
「おう。レベッカ様に目ぇ付けられたんだってな」
「バザーで一悶着ありました。でも、クラウス様が収めて下さって」
「らしいな。でも、あの令嬢はしつこいぞ。人のもんを欲しがるんだ。この街では有名だぞ」
レベッカという令嬢、今までに何度も今日と同じ様な騒ぎを起こしているらしい。
どんな言い掛かりを付けられるか分からない。だから、街に出て来たら皆避けるのだそうだ。
幸い、滅多に街にはやって来ない。それでも皆が知っているのだ。
「そうなんですか? じゃあやはり早めにピカを登録しておく方が良いですね」
「ああ、それがいい」
傍迷惑な令嬢なのだ。人の物を欲しがるとは、質が悪いのだ。
「ご主人、それは領主様のご令嬢の事か?」
急に話に入ってきた人がいた。深くフードを被っている男性の2人組。なんだか怪しいのだ。
「おう、旅の人かい?」
「ああ、人を探していてね」
「あんた達も気をつける方がいいぜ。何を言ってくるか分かんねーからな。初対面の見目の良い男に、いきなり連れて帰ると言った事もあるんだ」
「そんなになのか」
思わずニコ兄と2人で、プリンを食べていたスプーンを咥えてガン見してしまったのだ。
「ニコ、ロロ。いいから食べな」
それ以上、2人の男性は何も言ってこなかった。大人しく、別のテーブルで食事をしている。
何だったのだろう?
「レオ兄、怪しい奴か?」
「ニコ、そんな事を言っては駄目だよ。旅の人なのだろうね」
「れも、れおにいと同じ色らった」
「ロロ、色ってなんだい?」
「かみのいろら」
「そうなのか?」
そうなのだ。俺は皆より小さい。だから見る角度が皆より下なのだ。それで、チラッと見えたのだ。
レオ兄と同じような藍色の髪だったのだ。
「特に珍しい色じゃないからね」
そうなのか? 俺的にはあまり見ない色だと思っていたのだ。この世界の、髪色や瞳の色はとってもカラフルだ。
「ロロの髪色は綺麗だね。キラキラしているよ」
と、俺の髪を撫でる。レオ兄は王子様みたいなのだ。いつも優しい。
残念ながら、俺はお姫様じゃなくてちびっ子で男だけどな。
お腹がいっぱいになったら俺はもう駄目だ。朝からバザーで色々あったし、瞼が勝手に閉じてくるのだ。
「ああ、ロロ眠いんだね。抱っこしよう」
帰りはレオ兄が抱っこしてくれたらしい。目が覚めたらなんと朝だったのだ。
どれだけ寝ていたのだ? 夕飯食べてないぞ。
朝から出掛けて、疲れていたのかなぁ? 自分でも、驚いたのだ。
「わふ」
「ぴか……」
「わふん」
俺はピカを撫でる。ああ、ちょっと心配掛けてしまったのだな。すっごく寝ていたから。アハハ。
「わふ」
「らいじょぶ、元気ら」
ピカは優しいのだ。それにしても、よく寝たのだ。
「ロロ……起きたのか?」
レオ兄が、俺の横で伸びをした。寝起きのレオ兄を見るのは珍しい。いつも俺より早く起きるからだ。
「うん、れおにい」
「昨日は疲れたんだね」
ベッドの中で抱き寄せて撫でてくれる。レオ兄の匂いがする。安心するのだ。
いつもは俺が起きると、レオ兄はもう起きていてベッドにいない。今日はゆっくりなのだな。
「今日はね、一緒にギルドに行こう」
「えっと……ぴかのこと?」
「そうだよ。姉上と相談して、やっぱり今日行っておこうって事になったんだ。ピカはロロの犬だろう? 僕やリア姉で、従魔登録できないかも知れないから一緒に行こう。それと、ロロが刺繍したハンカチだ。ああ、良い機会だからポーションのランクも見てもらおう」
「はんかち……」
「そう。ロロは付与できるの?」
「ふ……? わかんない」
「そうか。ギルドマスターに見てもらっているから話を聞きに行こう」
「うん」
レオ兄が言うギルドとは、冒険者ギルドの事なのだ。リア姉とレオ兄は、この街に来て直ぐに登録した。どうして冒険者を選んだのかは知らないけど。
その時にニコ兄と俺も登録したかったのだけど、10歳になっていないからできなかった事を覚えている。
それ以来、行った事がないのだ。
「さあ、起きよう」
「うん」
レオ兄に抱っこされて、下へ降りていくともうみんな揃っていた。
「ロロ、おはよう。大丈夫?」
「りあねえ、元気ら」
「そう、良かったわ」
「ロロ、食べようぜ」
いつもの俺の椅子に座らせてもらう。ニコ兄はもうナイフとフォークを持っている。
「さあさあ、頂きましょうね」
今日もマリーの朝食を食べる。今日はふんわりトロトロなオムレツに、トマトを刻んだソースを掛けてあってウインナーも添えてある。
お野菜も一緒に食べる。りんごジュースが美味しいのだ。
いつもはリア姉とレオ兄が、バタバタしているのだけど今日はゆっくりなのだ。
1番早く食べ終えて、いつもの様にエルザが出掛けて行った。
ニコ兄とユーリアも出掛ける準備をしている。マリーのお弁当と、柑橘類の果汁とほんの少しだけお砂糖を混ぜた水を持って行く。
1日畑で作業しているから、健康的な肌色だ。2人共麦わら帽子がよく似合うのだ。
お読みいただき有難うございます。
もう年末ですね〜。皆様、お正月休みは何をされるのでしょう?
私はPCと睨めっこが決定しています。^^;
頑張りまっす!
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宜しくお願いします!