197ーコッコちゃんのお家
毎朝ドルフ爺の畑から、お野菜を持って来ているのだ。その時一緒に、売れないお野菜を持って来てもらえば良いのではないか?
なら、子供達やビオ爺でも貰いに行けるのだ。
「そうなんだ、知らなかったよ。それは良い考えだね。今日帰ったらドルフ爺に頼んでみよう」
うんうん、それが良いのだ。で、孤児院の裏にコッコちゃん達の小屋を作っているのかな?
「ロロ、見るか?」
「うん、みたいのら」
ビオ爺やディさんと一緒に、孤児院の裏に回る。
「あらあら、広いですね」
マリーが言った通り、思ったより広い家だった。3階建てで広いお庭もある。良い感じなのだ。
そこの1階を改装してコッコちゃん達の小屋にするらしい。でも昼間は、コッコちゃん達は自由にお外に出てしまう。
だから、この敷地全部を囲ってしまうらしい。道に面した方には柵に開口部を付けるが、普段は孤児院の裏からしか出入りできないようにしてしまうのだそうだ。
道に面した方は、卵を運び出す時だけに使うようにするらしい。防犯の事も考えると、その方が良い。
じゃあ、こっちのお庭にも畑が作れる。やっぱり、ドルフ爺の出番なのだ。
「森と同じような環境も作ってあげたいからね、庭に木も植えるんだ」
「しゅごいのら」
「だろう? 良い環境にしてあげないとね。僕達の都合で連れて来たんだから」
ディさんは優しいのだ。俺はそんな事なんて全然考えなかった。ただ、美味しい卵を毎日食べたい。それだけだったのだ。
俺の家の周りは畑が多い。木だってある。街の中心部から、少し離れているだけで長閑なのだ。だから、コッコちゃん達も自由にのびのびと過ごせている。
ルルンデの街中だと、そうはいかないらしい。
だって俺はコッコちゃんを、お散歩になんて連れて行った事がない。いつもコッコちゃん達は、自由に畑をウロウロしているから。でも、街ではそんな事はできない。
「ロロの家のコッコちゃんは自由だけどね」
その通り、とっても自由なのだ。近所の人達も、一緒に世話をしているからみんな知っている。
コッコちゃん達が、畑の中をウロウロしていても誰も何も言わない。誰かが気付けば、お水をあげていてくれたりする。
「やっぱにこにいと、どるふじいをちゅれてくるのら」
「そうだね」
孤児院の裏でディさんとそんな話をしていた。今大工さん達が、トンテンカンとコッコちゃんのお家をリフォーム中だ。
1階がコッコちゃん達だと言っていた。このお家は3階建てなのだ。
2階や3階にも人が入っているみただけど、どうするのだろう?
「上はここを管理してもらう人に、入ってもらう予定なんだ。常駐して見張りもしてもらう。まだ人選しているんだけどね」
それに将来的に、もっとストリートチルドレンを保護できた場合は孤児院だけでは手狭になる。こっちの家も使う予定らしい。
なるほど。とっても本格的なのだ。
「ロロ! 帰って来たのか!?」
これは、お久しぶりのニルスだ。覚えているかな? 孤児院の中では一番年長さんの猫獣人の男の子だ。いつも、俺の世話を焼いてくれる。
ニルスはコッコちゃんを、お座りさせた実力の持ち主なのだ。
首にタオルを掛けていて、麦わら帽子を被っている。よく日に焼けているなぁ。
「あれ? おでかけしてたの?」
「おう、冒険者ギルドでクエストを受けてたんだ」
「ひょぉー!」
そうだった。10歳になったから冒険者ギルドに登録して、クエストを受けるようになったと話していたのだ。ちょっぴり、かっちょいいぞぅ。
「でぃしゃん」
「大丈夫だよ。危ない事はしていないから」
「おう、そうだぞ。今日もお年寄りの家の庭で草引きだ」
「しょうなんら」
なら良かったのだ。まだ10歳なんてちびっ子仲間に入るのだ。ニコ兄と1歳しか変わらない。
なのに、まさか討伐依頼なんかを受けるのは危ないのだ。
「まりー、おみやげ」
「あらあら、そうでしたね」
肝心な事を忘れていた。今日はお土産を持って来たのだよ。
孤児院に戻り、厨房でピカがドドンと出した。お塩とハムとベーコンだ。塩漬け野菜もあるぞ。
「こんなに良いのか? これ、珍しい塩じゃないのか?」
「はいはい、それはね」
と、またマリーがビオ爺に説明したのだ。
お隣の領地で採れるお塩なのに、ルルンデでもそんなに流通していない。
ルルンデの街を通り越して、王都にある貴族ご用達のお店に行ってしまうのだ。
塩漬け野菜やハム類は、領地内でしか食べられない。運んでいる内に傷んでしまう。
今回はピカがいたから、新鮮なまま持って帰って来られた。
商人達はマジックバッグを持っていないのかな? 商人にこそ、必要なのではないかと俺は思うのだ。お高いらしいけど。
「ロロ、遊べるのか?」
俺は、マリーを見てみる。いいかなぁ?
「はいはい、構いませんよ」
「やった。あしょぶ!」
「よし!」
ニルスに手を引かれて庭に出る。ちびっ子も集まって来た。コッコちゃんまで、参加するぞと寄って来ている。
「いつもなんだよ。俺達が鬼ごっこしたりすると、一緒になって走るんだ」
ぶふふ。それはとっても可愛いのだ。
「じゃあ、ジャンケンするぞ」
おー、鬼ごっこだな。遊ぶと言っても、この世界はちびっ子の遊具なんてない。絵本でさえ、一部の貴族だけのものだ。
走って鬼ごっこをするくらいしかないのだ。それでも俺は楽しかった。家では、そんな事をして遊ばないから。




