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☆第6回ESN大賞W受賞☆11/4④発売☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第3章 領地に行ったのら

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189ー笑うのら

 映像は花畑から横に向きを変えた。白いチェアーのテーブルセット。その側で剣の稽古をしている、今より少しだけ幼いリア姉とレオ兄、それを見ているニコ兄が映った。剣の稽古をつけているのが、きっと父様だ。

 父様はリア姉や俺と同じ金髪の髪をかき上げながら、木剣を持っている。ニコ兄が楽しそうに笑っていた。

 ニコ、もっと離れないとあぶないよ。と、少し低めの優しそうな男の人の声が入っている。ああ、これが父様の声なのだ。

 そして、白いチェアーに座っていたのが、俺だろう赤ん坊を抱っこした母様だった。そのそばにはマリーもいる。

 レオ兄やニコ兄と同じ藍色の長い髪をそよ風に(なび)かせて、溶ける様な微笑みを浮かべ腕に抱いた俺を見つめている。その瞳はレオ兄や俺と同じラベンダー色をしていた。

 ふふふと笑いながら、リア姉達の方を見た。そして、映像を見ている俺達の方をゆっくりと向いたのだ。

 その映像の中にいる母様が、微笑みを浮かべながら呟くように話し出した。


「沢山笑いながら元気に育って欲しいわ。リア、レオ、ニコ、そしてロロ。4人は私達の宝物よ。笑っている時は一緒に笑いたい。泣いている時は抱きしめてあげたい。迷っている時はそっと背中を押してあげたい。忘れないで、私やお父様も貴方達を心から愛しているわ。ずっとずっといつまでも愛している」


 そう言って、抱っこしていた俺に優しくキスをした。

 奥様、ずっと皆様ご一緒ですよ。そう男の人の声が入っていた。

 そうですよ。皆様ずっと一緒です。と女の人の声もする。

 声を堪えながら、マリー達は泣いていた。この声はきっとマリーの息子さんとその奥さん、エルザとユーリアの両親の声だ。その声に反応して嗚咽が漏れる。

 そして、映像が終わった。

 その場にいるみんなが泣いていたのだ。

 突然亡くなった。突然家を追い出された。予期せぬ事だったけど、それでもなんとかルルンデの街で生活して来た。

 1年だ。たった1年だけど、リア姉達にとっては辛い1年だったに違いない。やっと生活が落ち着いてお墓参りに来る事ができた。

 そんな今までの感情が、堰を切るように一気に溢れ出したのだ。


「母上……父上」


 ニコ兄の肩を抱きながら、レオ兄も堪えていた涙が頬を伝っている。俺を横から抱きしめているリア姉だって、流した涙が光りながら零れ落ちている。


「う、うぇッ、ふぐぅッ、とーしゃまぁ! かーしゃまぁ! ボクはここにいる! ここにいるのら! げんきなのら! 毎日たのしいのら! うぇぇぇーーん! ああぁぁーーん!!」


 俺は号泣だ。だって、その前から何度も泣きそうになっていた。いや、最初から泣いていた。

 俺は覚えていない。でも確かにそこには父様と母様がいたのだ。

 俺を大切そうに、両手で抱っこしていた母様が映っていた。

 

「ロロ!」

「うえぇぇーん! かーしゃま! とーしゃまぁ!」

「ロロ! 俺達が一緒にいるぞ!」

「そうだよ、ロロ。みんな一緒だ」

「ロロ坊ちゃま」


 もう両親に会えないけど、この世にはいないけど。でもリア姉、レオ兄、ニコ兄がいる。

 マリーが、エルザが、ユーリアが。ルルンデに帰ったらディさんやドルフ爺だっている。

 だから、大丈夫だ。安心して欲しいのだ。

 俺はまだまだ泣き虫だけど、でも直ぐに笑ってみせる。みんな一緒だから。


『なんだよぉー! 泣けるじゃねーか!』


 ああ、場の空気をぶった切る奴がいたのだ。


『あんた! 空気を読みなさいよ!』


 ほらまた叱られている。泣き笑いになってしまうのだ。

 そうだ、笑うのだ。父様と母様に俺達の泣き顔だけを見せるのではなくて、みんなの笑顔を見せなきゃと思うのだ。


「しょうら、ぴか。ププーの実をたべるのら」

「わふ」

「ロロ、今なの?」

「らって、りあねえ。おはかれたべるって、のこしてたのら」

「はいはい、そうですね。食べましょう、みんなで食べましょう!」

「ロロには敵わないなぁ」


 レオ兄も笑顔になった。リア姉も、ニコ兄だってもう大丈夫だ。俺も笑うのだ。


「えへへ~」


 広くて青い空の下、みんな一緒だ。母様、父様、見てるかな? みんな一緒なのだ。

 そして、ロック鳥の奥さんが、持っていた魔道具なのだけど。


『あなた達が持っている方が良いわ』


 と、言ってロック鳥の奥さんがくれたのだ。


「実はね、他にも映像が映っているだろう魔道具が幾つかあるんだ。どうしても見る気になれなくて、ピカに持って貰ったままなんだよ」


 レオ兄がそう言った。そうか、両親が亡くなってレオ兄達だって、ショックからちゃんと抜け出せていなかったのかも知れない。

 それよりも、毎日の生活を安定させる事を優先したのだろう。

 それに……この1年、俺は沢山手を煩わせた。

 最初の頃は、よく泣いていた。誰かがそばにいないと駄目だった。

 俺は、1人が怖かった。世界の何もかもが怖くて、1人で家の外に出ることさえ怖かったのだ。

 あの頃は今よりもっと夜泣きをしていた。

 それが少しずつだけど、外へ出られるようになったのは、マリー達だけじゃなくてドルフ爺やセルマ婆さんのお陰でもあるのだ。

 マリーがお洗濯を干す時は側で見ていた。セルマ婆さんが日向ぼっこに誘ってくれた。ドルフ爺が、俺を抱っこして畑の中を散歩してくれた。そうやって、みんなに支えてもらって俺はなんとかやってきたのだ。


「れおにい、かえったらみたいのら」

「そうだね、みんなで一緒に見よう」


 みんなで一緒にだ。そこから一歩ずつ歩き出すのだ。俺達は一緒にいるのだから。


「とーしゃま、かーしゃま、またくるのら」


 俺は笑顔でそう言えるのだ。小さなお手々も振っておこう。


お読みいただき有難うございます!

今日のお話を書く為に、3章を書いてきました。泣いて頂けると幸いです。

感想も有難うございます。

応援して下さる方、良かったよ〜と思って下さる方は、是非下部にある☆マークで評価をして頂けると嬉しいでっす!

宜しくお願いします!

今日はお久しぶりのリリをどうぞ〜(๑˃̵ᴗ˂̵)/

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] はい、泣きました(´༎ຶོρ༎ຶོ`) 作者の陰謀にハマりました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`) 父様や母様の優しい笑顔や声が聞けて良かったですよね。( ; ; ) また…
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