177ースライム退治 3
リア姉が、スライムの残骸を炎で焼いている。後片付けだ。
「ピカ、ありがとう!」
「凄いよ、ピカのお陰であっという間だったね」
リア姉とレオ兄に褒められて、ちょっぴり胸を張っているピカさんだ。
炎が出せないから。なんて言っていたのに、褒められたら得意気にしている。
やっぱあの泣き虫女神に少し似ているのだ。
「わふう」
「なんれもないよ。ぴか、ありがと」
「わふ」
何か言ったかな? なんて言われたのだ。
ピカのお陰で、要領を掴んだリア姉とレオ兄。このままの勢いで、もう一つの川へとGOなのだ。でもね。
「れおにい、ねむねむなのら」
「ああ、そっか。ロロはお昼寝していないから」
「ロロ、馬車で寝てな」
「えぇー! にこにい、いやなのら」
そう、俺はもうお眠だったのだ。今日はロック鳥にも乗ったし、さっきスライムを踏ん付けたし、刺激が一杯だったからこの時間まで起きていられたのだ。
俺はいつもならお昼寝から起きている時間だ。体がなんだかポカポカするぞ。
「眠いからだよ。馬車で寝ているといいよ」
「れおにい、いやなのら。また踏むのら」
「とにかく次に行きましょう」
おう、リア姉はやる気なのだ。明日にしようって考えはなさそうだ。
馬車に乗ってもう1本の川へ移動する。無理、無理なのだ。もう起きていられない。
だって俺の気持ちとは関係なく、瞼が閉じてくるのだ。
「ふわぁ~……」
「姉上、魔力量は大丈夫なのか?」
「え? 分からないわよ」
「魔力の枯渇を起こしたりしないでよ」
「これくらい平気よ。まだまだいけるわ」
「本当かよ」
もう、リア姉は適当なのだ。だからディさんが言っていたように、ポカポカぐるぐるをしていれば良かったのだ。
馬車が揺れる。お尻が痛くなるような揺れなのだ。でも俺は眠い。眠気には抗えない。
「ロロ、クッション敷いて横になるといいよ」
「れおにい、おきてたいのら」
「無理だよ。もう目を開けていられないだろう?」
「んん……」
レオ兄の言う通りなのだ。いくら頑張っても目が閉じてしまう。
コテンとクッションの上に横になる。
ああ、でも見たいのだ。もしも、怪我をしたら俺が治さないと。と、思いながら眠ってしまったのだ。
◇◇◇
(レオ視点です)
ロロが眠った。お昼寝が必要だったのに、今日は色々あったから忘れてしまっていた。よく、頑張った方だ。
「ロロったら、可愛いわ」
「今日はロロ、はしゃいでいたからな」
「そう言うニコもだよ」
「俺はもう大きいから、頑張ったんだ」
「アハハハ、そうだね」
ロロには悪い事をしちゃったな。スライムの討伐は明日にすれば良かったかも。
でも明日にしてしまうと、またお墓参りに行くのが遅くなってしまう。
お昼を食べたらロロは寝てしまうから、お墓参りは午前中に行きたいし。
「レオ、仕方ないわよ」
「うん、まあね。まさかスライム退治を、しなきゃならないなんてね」
「本当よ。あれ、絶対に調査してないわよ」
姉上の言う通りだ。定期的にスライムの状態を調査しないといけないのに、それをしていないからこんな事になるんだ。あの叔父は一体何をしているんだ。
この領地はフューシャン湖の塩で潤っている部分も大きい。そんな大事な事なのに。
他の事もちゃんとしているのだろうか?
両親が大事に守ってきた領地なんだぞ。
馬車を走らせながら、周りを見る。以前より治安が悪くなっていないか? 領民の様子はどうだろうか? そんな事を考えながら、手綱を持ち馬車を走らせる。
まさか僕達が領地に来ているなんて、思いもしないだろうな。乗り込んで行って、文句の一つでも言ってやりたい気分だ。
でもきっと姉上の方が、腹を立てているだろうから僕は冷静でいないと。
「ほんっと、腹が立つわ!」
ほら、やっぱり怒っている。姉上は少し直情的なところがあるからなぁ。良く言えば、素直なんだ。
僕は、虎視眈々とチャンスを狙うタイプだ。逃げ場を作らないように、追い詰める。その為に考えるし、準備もする。
だから、待っていろよ。絶対に尻尾を掴んでやるんだ。
そう思って今まで我慢してきた。ちゃんと調べて、証拠を突きつけてやるんだ。
「レオ、何を考えてるの?」
「ん? 何でもないよ。ほら、川が見えてきたよ」
「ピカ、またよろしくね」
「わふん」
ピカがスライムを、まとめて浮かせて出してくれた。あれはどうやっているのだろう?
次の川で、ピカに教わろう。ピカって、やっぱ神獣なんだよな。あんな魔法の使い方を、思いつかなかった。
フューシャン湖から流れ出ている、もう一つの川へとやって来た。
馬車を止めて降りると、近くで農作業をしていた女性が話しかけてきた。
「お兄さん達、こんなところでどうしたんだい?」
農家のおばさんなのだろう。麦わら帽子を被って、エプロンを着けている。家の近所のおばさん達と同じ様な恰好だ。
もしかして領主の子供だと分かって声を掛けてきたのかと、警戒してしまった。でも、僕達の顔を知っている訳ではないらしい。
「川に水が流れていないって聞いたのよ」
姉上は躊躇せずに答えている。姉上は、度胸も良いし物怖じもしない。
「そうなんだよ。ほら、見てみなよ。川に水がないでしょう?」
そんな事を話しながら、おばさんと一緒に川を覗いている。




