174ー対スライム
「ロロ、満足したかな?」
「れおにい、しゅごかったのら!」
「そうか、良かったね」
「うん!」
「もっと飛んでいたかったな!」
ニコ兄、それを言っては駄目なのだ。あくまでも目的は、フューシャン湖の調査なのだから。もう、バレバレだとは思うけど。
リア姉とレオ兄は、家の事を何も言わなかったのだ。だから、俺も言わないでいた。ニコ兄もそうだ。
岩場に戻ると、そのままロック鳥は降りた。降りる時にも胃がひっくり返りそうだったのだ。
これはあれだ。ジェットコースターに乗った時と一緒なのだ。
またピカに乗って、下に降ろしてもらう。ピカさん、降りる時はロック鳥の背中からいきなりピョンと飛び降りたのだ。
先に一言言っておいて欲しい。心臓がヒュッてなったのだ。
「わふ?」
「ぴか、いってほしかったのら」
「わふ」
え? なにが? なんて言われてしまったのだ。こっちは乗った時と同じように、尾羽から降りると思うじゃないか。
ちょっと心臓がバコバコいっているのだ。
「アハハハ! ロロはびっくりしたんだよ」
「わふ?」
何に驚いたのか分からないらしい。まあ、いい。それよりも、これからどうするのだろう?
「レオ、フューシャン湖に行きましょう。スライムなら何とかなるわ」
「そうだね、行こう」
リア姉とレオ兄は、もう気持ちを切り替えている。俺よりずっと思う事があるはずなのに。
『もう行くのか? ゆっくりして行けば良いのによぉ』
なんだか、最初の時と随分態度が違うのだ。ちょっと俺はまだ足元がふわふわしているのだよ。
レオ兄とリア姉の話だと、本当はここまでスライムが増えるまでに冒険者ギルドへスライムの討伐依頼を出すらしい。
スライムだって生きている。放っておくとどんどん増える。だから時々間引くのだ。
多くなりすぎると今回の様になってしまう。逆に少なくなり過ぎると、川の水に塩分が残ってしまって周辺の農家さん達が川の水を使えなくなってしまう。
だから、時々様子を見て確認しないといけないのだそうだ。
今の領主だろう叔父は、それを怠っていたから異常増殖にも気が付かなかったのだろう。
ただ討伐するにも、スライムは物理攻撃が効きにくい。だから、魔法攻撃ができる冒険者でないといけない。それも、炎が使える人じゃないと駄目らしい。
そこまで限定してしまうと、数が少なくなる。その上、この街には冒険者が少ない。だから早めに依頼を出すのだそうだ。
ルルンデの街から冒険者に来てもらう事もあるらしい。
あの叔父がその依頼料を勿体ないと思ったのか、それともその事自体を知らないのか?
何れにしても、俺達には詳しい事は分からない。とにかく、スライムを退治するしかないのだ。
さて、俺はトコトコと奥さんロック鳥の方へと歩いて行く。
ヨイショと岩場を登り、奥さんロック鳥の足元までやって来たのだ。何故かピカだけじゃなく、ちびっ子戦隊まで付いて来ている。
『あら、どうしたの?』
「ねえ、卵をみたいのら」
『いいわよ~』
奥さんロック鳥が、少し体を浮かせて卵を見せてくれた。フワフワした胸の羽毛で大事そうに温めているのだ。
乳白色に淡い黄色の波模様のある大きな卵だった。流石にコッコちゃんの卵とは大きさが違う。
「ひょぉー! 大きいのら」
『ふふふ、そうでしょう? あなた、お名前は何ていうの?』
「ボクはロロなのら」
『そう、可愛いお名前だわ。ロロはなんだか懐かしい魔力の気配がするわね』
「しょう? ボク、まりょくりょうおおいのら」
『そうなのね。またいらっしゃいな。産まれたら見てあげてね』
「うん! みたいのら!」
「俺も!」
『あらあら、元気ね』
いつの間にか、ニコ兄も隣で卵を見ていたのだ。
どんな雛が産まれるのか、とっても楽しみなのだ。
『もう直ぐ産まれるのよ』
「それは、分かるのか?」
『ええ、こうしてずっと温めているとね、卵の中の変化が分かるのよ』
「ひょぉー! しゅごいのら!」
「な! スゲーな!」
『ふふふ、可愛い子達ね』
奥さんロック鳥はとても優しくて、お母さんって感じだ。
俺とニコ兄を見て、微笑んでいると思う。顔の表情は変わらないけど、そう感じたのだ。
「また、くるのら」
「おう、帰るまでにまた来るぞ」
『あら、この街に住んでいるのじゃないのね?』
「おう、隣領にある街から来たんだ。父様と母様のお墓参りなんだ」
『そうなの、こんなに小さいのに……』
「れおにいと、りあねえがいるから寂しくないのら」
「おう、マリー達もいるしな」
『マリー?』
「俺達と一緒に来ているんだ。でも、威圧で気を失ったからさ、宿屋で休んでいるんだ」
『やだ、あの人がやったのね。ごめんなさいね。本当にもう、何も考えてないんだから』
ロック鳥の夫婦とは、ここで別れたのだ。
この付近の道を通る人には威圧で脅したりしないと約束もしてもらった。
また帰る前に、会いに来られたら良いな。
俺達はロック鳥と別れて、その足でフューシャン湖から流れ出している川付近までやって来たのだ。
上空から見た通り、フューシャン湖から川に流れ出している部分の水流が滞っていた。
川の水量が見るからに少ない。湖からチョロチョロとしか流れ出していないのだ。
何かが水の流れを堰き止めている。
川と反対側、湖の方を見てみると水の色が違う。
湖の中央付近は綺麗なピンク色に見えるのだが、川に流れ出している部分はグレーの様な薄い紫の様な変な色になっている。
ロック鳥の話していた通りなのだ。良く見ると水の中で何かが動いている。




