170ーリア姉が?
「ふぉーちゃん、りーちゃん、こーちゃん、らめらよ!」
「ピヨヨ」
だって、あいつが悪いアルよ。なんて口々に文句を言っている。まあ、そうなんだけど。
でもあれは挑発だ。俺達が何もできないと思っているんだ。
素直にお肉を貰っておけば、直ぐにお腹も膨れるのに。
「食べた事のない物かぁ」
「何だろうな?」
「そもそもロック鳥が、いつも何を食べているのか知らないじゃない」
あらら、リア姉の言う通りなのだ。偶には良い事を言う。
「むむむ」
と、短い腕を組んで考える。ついでに片手を顎にやってポーズをとってみよう。どうだ? 俺のシブいポーズは? ポッコリお腹の幼児体形は加味しないでほしい。
「ロロ、真面目に考えてるのか?」
あ、ニコ兄。酷いのだ。超真面目に考えているのだ。
「ねえ、人が調理した食べ物なんて食べた事がないんじゃない?」
「ああ、そうだね。でも、どうやって作るんだ?」
「作らなくてもあるじゃない! ほら、マリーが沢山ピカに持たせているでしょう?」
おぉーッ! リア姉、どうしたのだ? 今日は冴えているではないか。リア姉らしくないのだ。
「ロロ、また酷い事を考えていたわね?」
「あい、ごめんなしゃい」
またバレてしまったのだ。どうしてだ? 今日は全部バレてしまうのだ。
「ねえ、人が調理したものって食べた事ないだろう?」
『なんだとぉッ!? 俺様に人の食べ物を食べろってんのかぁッ!?』
ロック鳥がカッと目を見開いて、凄みを利かせるような大きな声で言った。
え、駄目なのか? だって食べた事はないだろう? それにマリーの作ったスープは美味しいのだぞぅ。 俺はロック鳥が怒ったのかと思ったのだ。だけど違っていた。
『ガァァッハッハッハッ! ワァッハッハッハァーッ! そりゃ面白れぇーじゃねーかぁッ!』
なんだよ、面白いのか。いいのか? 気に入ったのか?
紛らわしいのだ。あの言い方だと、てっきり駄目だと思ったのだ。
「あ、そうだ。ポップントットの実もあるよ!」
『なんだとぉーッ!? ポップントットって何だぁッ!?』
知らないのかよッ! 思わずツッコんでしまうのだ。このロック鳥、面白いのだ。
んふふ、もう全然怖くないのだ。
これはもしかしたら、もしかするのだ。俺の野望が一つ叶うかも知れないのだ。
「ロロ、だから駄目だよ」
「あい」
まただ。またレオ兄に読まれてしまった。今日はおかしいぞぅ。
『それらは今あるのかぁッ!?』
「あるよ。ピカが持ってるんだ」
『ピカって神獣様の事かよ! 名前つけてんのかよッ! その上、神獣様に何持たせてんだ!』
「だから、食べるの? 食べないの?」
レオ兄も、もう強気なのだ。怖くもなんともないのだろう。
『実はよぉ、今卵を温めるのに手が離せねーんだ。それで俺様や、俺の可愛い奥さんも真面に餌を探しに行けなくてな。腹減ってんだ』
可愛い奥さんとか言っている。気の良い奴らしい。
それにしても、やっぱり卵を温めている。リア姉の言った通りなのだ。
何故だかリア姉が冴えている。これは怖いのだ。いや、そんな事を思ったらまたツッコまれてしまう。気をつけないと。俺は学習するちびっ子なのだよ。
『俺様の巣まで来れねーか? 愛妻にも食わせてやりてーんだ』
「巣が何処にあるのか、分からないじゃないか」
『直ぐそこだ。その岩場に入る道があるだろう』
と、ロック鳥が教えてくれた。そこは馬車でも行けるのか? 魔馬さん、頑張ってくれるのかな? ロック鳥が目の前にいるというのに、怯えもせずにジッと大人しくしている魔馬さん。お利口さんなのだ。
「ああ、一本道だね。その先なの?」
『そうだ』
「じゃあ、行くよ。奥さんもお腹が空いてるんだろう? 可哀そうだ。早く行こう」
『お、お、お前、良い奴だなぁッ!』
何を言っているんだ。最初から素直にお肉を貰えば良いのだ。
ロック鳥が先に帰って、愛妻だという奥さんに話すことになった。俺達は馬車で巣に向かう。なかなか、楽しいロック鳥なのだ。
ロック鳥がバサッと一度翼を動かしただけで、一気に上空へと浮上した。太陽を背にして大きく羽搏いて飛んでいく。あっという間だ。
そんな姿はとてもカッコいいのだけど、話したら駄目なタイプなのだな。
「なんだ、全然怖い奴じゃなかったな」
「本当よね」
「れも、ぴかがいたからかも」
「そうだね。ピカのお陰だ」
「わふん」
役に立って良かったよ。と、ピカさんが言っている。ピカさん、本当に格上なのだね。
神獣様なんて呼ばれていた。あの泣き虫女神の神使でも、一応偉いのだ。
「わふう」
「アハハハ!」
レオ兄もピカが何を話しているか、分かるのだと忘れていたのだ。
ピカが、一応じゃないよ、僕は歴とした神獣なんだよ。と言ったのを聞いて、レオ兄が笑ったのだ。
レオ兄はあの泣き虫女神を知らない。だから本当の意味を分かっていないだろう。
ピカさん、これから気をつけないとだ。
それから、魔馬さんは険しい岩場をいとも容易く馬車を走らせる。周りは大きな岩ばかりなのだ。その中に1本、岩場を通っている道がある。そこを走って行く。力強いのだ。
馬車に乗っている俺達の方が大変だ。ガタゴト揺れて、俺はお尻がピンチだ。
ずっとリア姉にしがみ付いていないと、転がりそうだったのだ。
「ふふふ、ずっとくっ付いていていいのよ」
なんてリア姉が言っていた。それは遠慮するのだ。




