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☆第6回ESN大賞W受賞☆11/4④発売☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第1章 ルルンデで生活するのら

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17ーレベッカ

「ニコ坊ちゃま、ロロ坊ちゃまとピカと一緒にハンナのところに行って下さい。ユーリアもよ」

「おう、分かった」

「おばあちゃん、分かったわ」

「ほら、ロロ。行こう」

「うん。ぴか」

「わふ」


 マリーは何か感じたのだろう。俺達を移動させたのだ。

 急いでハンナのそばへと移動する。

 ニコ兄が俺の手を引いてくれる。でも、俺はそんなに早く歩けないのだ。小走りになって付いて行く。気持ちばかり焦って、足が縺れそうだ。

 ハンナがいた。そばにはレオ兄もいる。もう少しなのだ。


「レオ兄!」


 ニコ兄がレオ兄を呼ぶ。俺が早く走れないからなのだ。


「ニコ、ロロ、ユーリアも。どうした?」


 レオ兄が気付いてくれた。でも、遅かったのだ。


「待ちなさい!」


 後ろで声がしたのだ。俺達を呼び止める声だ。それでもニコ兄は俺の手を引いて、レオ兄のそばへと急ぐ。ピカは俺のそばを離れず付いてくる。

 バザー会場の和気藹々とした雰囲気が、令嬢の声で一気に凍りついた。


「待ちなさいって言ってるじゃない! 止まりなさい!」


 やっと走り寄って、俺はレオ兄の足にしがみ付く。レオ兄が片手で、俺の肩を抱いてくれるがもう既に俺は涙目だ。

 ピカが俺の横で守るように立っている。


「ヴゥゥゥ……」


 ピカが威嚇している。駄目だ、威嚇の声を上げたら駄目なのだ。

 皆が注目する中、令嬢は腰に手をやり俺達を睨みつけている。


「僕の弟達が何かしましたか?」


 レオ兄が柔らかい口調で聞いた。そして、


「待ちなさいと言ったのよ!」


 ツインテールに結んだ髪をパサッと手で払い、最初から喧嘩腰で超上から目線なのだ。キッと目を吊り上げて睨んでいる。

 それでもレオ兄は、穏やかに話しかける。


「何かご用でしょうか?」

「用があるから待ちなさいと言ったのよ! その大きな犬を渡しなさい!」


 なんだと……!?

 俺は思わず片手でレオ兄の足を、もう片方の手でピカをギュッとした。

 いきなり何を言っているのだ? この子は意味が分かって言っているのか?


「この犬は僕達の家族なのです」

「そんな事知らないわ! 私が渡しなさいと言ったら、黙って渡せば良いのよ!」

「どうするおつもりですか?」

「連れて帰るに決まっているじゃない! 私の犬にするわ!」


 なんて横暴なのだ。噂以上だ。

 はい、分かりました。と、渡すと思っているのか?


「らめ!」

「何言ってるのよ?」

「ぴかは、らめ」

「ロロ、僕が話すからね」

「れおにい、だってぴかはらめなのら」

「分かっているよ」


 周りにいた人達がみんな見ている。ああ、まただ。と、いった嫌悪の混じった表情で令嬢を見ている。睨んでいる人もいる。

 この小さな令嬢は、街の人達にそう思われているのか?


「私に刃向かうつもりなの!?」

「刃向かうも何も僕達の犬です」

「うるさいわね! さっさと渡せば良いのよ! 平民のくせに!」


 ヒステリックな声を上げ、令嬢はピカに手を出そうとした。


「らめッ!」


 俺は令嬢の手を遮り、ピカの首に抱きつく。ピカを渡すわけないだろう。


「何よ! どきなさい!」


 綺麗にカールされた髪を揺らしながら、俺に向かって大きく振り上げる。その令嬢の手をレオ兄が掴んだ。


「おやめ下さい。小さい弟に何をするのですか?」

「グルルル……」

「離しなさいよ! 汚い手で触らないで!」


 令嬢が、真っ赤な顔をして掴まれた腕を振り払おうと叫んでいる。

 レオ兄が掴んでいた令嬢の手を離す。ピカも威嚇の声を上げている。駄目なのだ。ピカの背中を撫でる。怒ったら駄目なのだ。

 相手は子供なのだ。ピカの方が絶対に力も強い。もしも怪我でもさせたら、余計に面倒な事になってしまう。

 周りの人達が、俺達を囲み出した。みんな俺達を庇ってくれているのだ。だけど、騒ぎになってしまった。拙いのだ。


「レベッカ! 何をしているんだ!」


 令嬢の兄が気付いてくれたのだ。クラウス様が慌てて走って来た。令嬢と俺達の間に割って入る。


「お兄様! 邪魔をしないでください! 私はこの犬を連れて帰るの!」

「何を馬鹿な事を言ってるんだ!」

「ぴか、らめ」

「ああ、ロロ。分かっているよ」

「お兄様!」

「この犬はロロ達の犬だ。レベッカが連れて帰る事はできない」

「私が連れて帰ると言ったら、連れて帰るのよ!」

「やはりお前を連れてくるんじゃなかったよ」


 クラウス様が、何処かを見て合図をした様だった。すると何処にいたのか、護衛みたいな人達が素早くやって来た。

 そして令嬢をガシッと抱えて無理矢理馬車まで連れて行った。手慣れているぞ。それでも令嬢は……


「離しなさい! あの犬を連れて来なさい!」


 と、甲高い声で叫んでいる。これは思った以上に酷い。

 クラウス様が、肩を落とし大きなため息を一つ吐いた。


「すまない、迷惑をかけた」

「いえ、ピカは僕達の大事な家族なのでお譲りできません」

「勿論分かっている。君はロロの兄か?」

「はい。レオナルト・レーヴェントと申します」

「私はあのレベッカの兄だ。クラウス・フォーゲルと言う。すまないな、迷惑を掛けた。ロロもすまない」

「ぴか、らめぇ……うぇ……うぇ〜ん!」

「ロロ、もう大丈夫だよ」

「妹がすまない事をした。泣かないでくれないか」


 いかんなぁ……どうにも気持ちは3歳児だ。泣いてしまったのだ。恥ずかしい。ピカに抱きついて顔を隠す。


「ロロ、大丈夫だぞ」

「にこにい……ヒック」


 ニコ兄やレオ兄が、俺を抱き締めたり背中を撫でたりしてくれる。慰めてくれるのだ。

 注目を集めてしまったのだ。超恥ずかしいから、みんなで隅っこに移動したのだ。


「すまない。私の妹が申し訳ない事をした」

「いえ、クラウス様。もう大丈夫ですから」

「ロロ、また孤児院で会ったら私とも仲良くしてくれないか? もう妹にあんな事は言わせないからな」

「グシュ……くらうしゅしゃま、悪くないのら。れも、ぴかはだめー。えぇぇ〜ん」

「ああ、泣かないでくれ」


 クラウス様がしゃがんで俺の頭を撫でる。兄は良い人なのになぁ。どうして妹はああなった? 何を間違えたのだ?


「ほら、ロロ。おいで」

「れおにい……グシュ」

「もう泣かない。大丈夫だ」

「うん……」

「わふ」


 まさかこんなハプニングが待ち受けているとは、思いもしなかったのだ。俺は3歳児全開になってしまった。

 それからレオ兄とクラウス様は何やら話をしていたのだ。

 

お読み頂き有難うございます。

我儘令嬢の登場です。

ロロくん、3歳児炸裂です。(^^;;

宜しければ、評価やブクマをして頂けると嬉しいです。

本当に、嬉しいのですよ。

宜しくお願いします!

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