168ードルフ爺の悪影響?
「ロック鳥をなんとかしないと、街の人達も困るでしょう? 今実際に、川を確認できなくて困っているのだし」
「そりゃそうなんだが。けどな、兄さん達がいくらCランクだと言っても相手はロック鳥だ。無理すんじゃねーぞ。ちゃんと元気に戻って来るんだぞ」
「はい、もちろんです」
「ええ、無理はしないわ」
そうだ。みんなで揃ってちゃんと戻ってくるのだ。
きっと、リア姉とレオ兄には思い出があるのだ。両親と一緒に来た事があると話していた。その時の思い出があるのだ。何よりも、両親が治めていた領地なのだ。
「私達にとっては大切な領地ですもの」
「ああ、そうだね」
ほら、やっぱりそうなのだ。リア姉とレオ兄の気持ちを大切にしたいのだ。
俺にはない思い出がある。それを壊したくはないのだ。
今の領主はあの叔父なのだろう。一体何をしているのだ?
特産品である塩が採れないのだぞ。ロック鳥がいるのだぞ。なのに、何の対策もとっていないのか? 本当にムカつくのだ。
「ボクもいっしょにまもるのら!」
「俺もだぞ!」
「アハハハ! 心強い味方だよ」
どこでも、どんな時でも兄弟は一緒なのだ。離れるのは嫌なのだ。
俺は何も失いたくないのだ。
俺達は昼食を食べ、マリー達が休んでいるのを確認して馬車に乗った。ロック鳥のいる岩場へと向かうためだ。
チロにまた状態異常の耐性を強化してもらう。もしもそれでも状態異常になったとしても、チロがいれば回復してくれる。
おっと、忘れるところだった。ちびっ子戦隊も一緒なのだ。
「ピヨヨ……」
「キャン……」
覚えているかな? フォーちゃん、リーちゃん、コーちゃんの3羽の雛と、いっちー、にっちー、さっちー、よっちー、ごっちー、の5体のプチゴーレムだ。名付けてちびっ子戦隊なのだ。
午前中ロック鳥に、遭遇した時に自分達は何もできなかったと反省しているらしい。
それは、仕方ないのだ。だってロック鳥は空を飛んでいるのだから。
今回は、流石に出番はないと思うよ。でも、一緒に行くと言って聞かなかった。
その気持ちが嬉しいではないか。
「しかたないのら。とんれるから」
「だよな、ロック鳥は飛んでるから届かないじゃん」
「ピヨヨ」
「キャン」
気合でなんとかするアルとか言っている。それは無理なのだ。どうにもならないぞぅ。
どうも、このちびっ子戦隊は脳筋に偏っている気がするのだ。
特に、プチゴーレム達だ。フォーメーションを考えたり、自分達だけで訓練をしていたりする。
動いていないと身体が鈍るとか言っているのだ。どうなのだ? これは、誰に似たのだ?
「わふ」
「えー、しょう?」
ピカが、ドルフ爺に似たのだと言っている。真似をしているのだと。そんな事はないだろう。
だってドルフ爺は、もうお爺さんなのだよ?
「わふわふ」
「え、しょうなの?」
「ロロ、ピカと何話してんだ?」
「にこにい、あのね」
と、ニコ兄に説明したのだ。プチゴーレム達が脳筋気味なのは、ドルフ爺を真似しているからだとピカが話していると。
「あー、それはあるかもな」
え、なんですと?
だって何度も言うけど、ドルフ爺はお爺さんなのだよ?
「ドルフ爺な、ああ見えて筋肉がバッキバキなんだよ。毎日鍛練してるんだ」
「え……」
それは凄いのだ。
「毎朝スゲー走ってるんだぞ。それに、木剣に重りを付けて振ったりしてるんだ」
「え……」
それはちょっと引くのだ。
老人なのに。頭の天辺に髪がないって噂なのに。
「ロロ、髪は関係ないぞ」
「しょう?」
「ああ、そうだな」
なるほど、それならドルフ爺の影響を受けているのかも知れない。なにしろ、プチゴーレム達は毎日ずっとドルフ爺と一緒だから。
畑をパトロールしながら、ドルフ爺にめちゃくちゃ懐いているのだ。
「ふふふ、何の話をしているのよ」
まあ、緊張していても仕方がない。普通でいいのだ。
ロック鳥のいる岩場に近くなってきた。また緩い坂道を馬車は上る。
すると、遠くから翼を羽搏かせる音が聞こえてきた。
ちびっ子戦隊も反応している。今にも飛び出して行きそうだけど、ピカに止められている。
飛び出して行っても、どうにもならない。だって、届かないのだから。
「来たよ!」
御者台にいるレオ兄からは、見えているらしい。
「まだ遠くだけどね、もうこっちを見つけているんだ」
ロックオンされた。想定内なのだ。
大きく翼を動かしているのだろう。ゆっくりと羽搏く音が聞こえる。
どんどん近くなってくるのが分かるのだ。
「ぴか、いい?」
「わふ」
ピカには先ず、ロック鳥と話せるようにしてもらいたいのだ。
どんな魔獣よりも格上の神獣だ。ピカの言う事は聞くだろう。
ピカがレオ兄の横から上半身を乗り出す。そして、吠えた。
「ぅわおぉぉーーん!」
馬車を狙って一直線に飛んで来ていたロック鳥が、手前で旋回をし出した。
馬車の真上ではない。まだ少し距離がある。戸惑っているのか? 考えているのか?
ロック鳥って知性があるのか?
「ロック鳥はね、知性の高い魔鳥なのよ。長く生きた個体だと、人と話ができると言われているわ」
「ひょぉー!」
「そんな魔鳥がいるのか!?」
凄いのだ。いや、待てよ。コッコちゃん達だって、俺達の言葉を話せはしないけど理解しているのだ。意思表示もしてくる。魔鳥さんってみんな知性が高いのか?