166ーいたいいたいはらめ!
「それより、ロロ。ロック鳥に何をしたんだ?」
「わからないのら。らめっておもったのら」
「何か飛んだわよね?」
「おう! 白い光が飛んだぞ! ロロ、スゲーな!」
「えへへ~」
「ロロ、エヘヘじゃないよ。無自覚なのかな? ちょっと見せて」
見せてという事は、あれなのだ。レオ兄の鑑定眼なのだ。
「あれ? 全然分からないや。多分、風属性魔法だと思うけど……これは、帰ったらディさんに相談だね」
「でぃしゃん?」
「そうだよ。一度ディさんに見てもらおう。ロロの体に支障がなければ良いんだけど」
俺は何ともないぞ。確かに何かが抜けた感覚はあったけど。でも、全然元気なのだ。
「ロロのお陰だ。ありがとう」
「そうね、ロロがマリー達を守ったのよ」
「ボクが?」
「そうよ。よくやったわ」
そうなのか? 俺みたいなちびっ子でも役に立てたのなら、それはとても嬉しいのだ。
それからマリー達が目を覚ますまで、その場所で停まっていたのだ。
どれくらい経っただろう。心配で目を離せなかったのだが、マリー達がゆっくりと目を開けたのだ。
「まりー、えるざ、ゆーりあ!」
「ん……ロロ坊ちゃま……私は……?」
「マリー、大丈夫? 辛くないかしら?」
「どうなったのですか?」
エルザとユーリアも、ゆっくりと体を起こした。
「気を失っていたのよ。気分はどうかしら?」
「いたいのいたいのとんれけしゅる?」
「ロロ坊ちゃま、大丈夫ですよ」
「よかったのら!」
俺は思わずマリーに抱きついた。良かった。
「まりー! うぇッ、うぇぇーん! よかったのらー!」
「あらあら、ロロ坊ちゃま。心配掛けちゃいましたね」
「まりーも、えるざも、ゆーりあも、いたいいたいはらめなのら! うぇーん!」
「坊ちゃま」
「ロロ坊ちゃま、大丈夫ですよ」
大泣きだ。まさか自分でも、泣くとは思わなかったのだ。
でも、俺の小さなお胸がギュッて苦しくなって堪らなかった。誰も失いたくない。みんな一緒がいい。そんな気持ちが溢れ出したのだ。
せっかくお墓参りに来ているのに、マリー達に万が一の事があったら意味がないじゃないか。
マリーの亡くなったご主人や息子さんに、顔向けできない。
「ロロ、大丈夫だよ」
「れおにい……ぐしゅ。かんていがんれ見た?」
「ちゃんと見たよ。大丈夫だ」
「しょっか。良かったのら……ヒック」
「取り敢えず、宿に戻ろう」
「レオ坊ちゃま、すみません」
マリー達の事を考えて、宿へ戻ることにしたのだ。いくら大丈夫だと言っても、マリー達は耐性がないのだ。
この先に進もうとしても、きっとまたロック鳥が出てくるだろう。
なんの対策もなく進んでも、同じ事になるだけだ。
「坊ちゃま達は平気だったのですか?」
エルザが聞いて来た。大丈夫だと言っているが、どこか気怠そうだ。瞼が重そうに見える。
「ロック鳥が威圧を放つ前に、チロがみんなに耐性強化をしてくれたの。だから私達は平気だったわ。それがなかったら、どうだったか分からないわ」
「そうですか。それでも私達は気を失ったんですね」
「魔力量が違うみたいなの。だから、状態異常の耐性も違うのね」
そうなのだ。リア姉が言うように、俺達兄弟はみんな魔力量が多い。母からの遺伝なのかな? 多分、父も普通より多かったのだろう。
そのお陰なのだ。両親からのプレゼントなのだと、俺は思っている。
そう思うと、心がポカポカするのだ。
「私達は生活魔法くらいしか使えませんから」
「でも、ロック鳥をなんとかしないとだよな」
ニコ兄の言う通りだ。でないと、お墓参りに行けないのだ。
それからゆっくりと馬車を走らせて宿屋に戻った。まだ昼前だ。俺達が早くに戻ったものだから、宿屋の主人が聞いてきたのだ。
「どうした!? 顔色が悪いぞ」
「ロック鳥が出たのです」
「やっぱそうか。あの岩場だろう?」
「はい。僕達は大丈夫だったのですがマリー達が」
「え!? ロック鳥に威圧を放たれたんだろう? 兄さん達平気だったのか!?」
「僕達は耐性が高いみたいなので」
「スゲーじゃねーか! 流石Cランクだ!」
いやいや、俺とニコ兄はCランクどころか、冒険者ギルドに登録もしていないのだ。
俺達が無事だった事に驚いているのだ。これは俺達以外にも、被害に遭った人がいるのだろう。
「マリー、部屋で休む方がいいわ」
「いえいえ。リア嬢ちゃま、大丈夫です」
「駄目よ。無理しちゃ駄目」
「おばあちゃん、そうしましょう。まだ顔色が悪いわ」
そうだよ。無理しないで休んで欲しい。まだ真っ青じゃないか。
「そうですか? では、すみません。部屋で休ませてもらいます」
「おばあちゃん、大丈夫?」
「ほら、捕まって」
エルザとユーリアが、マリーを両側から支えて階段を上って行く。どうやら、マリーが1番影響を受けているらしい。
やっぱ俺が、回復する方が良くないか?
「れおにい……」
「大丈夫だよ。少し休んだら元気になるよ」
なら良いのだけど。
「それにしても、あのロック鳥よね。レオ、どうする?」
「姉上、2人で行ってみようか。ピカもついて来てくれる?」
「わふ」
「そう、頼んだよ」
いやいや、2人だけでなんて何を言っているのだ。
「駄目だよ! 俺も行くぞ!」
「ボクもいくのら!」
リア姉とレオ兄が強いのは知っている。でも、2人だけで行かすわけないのだ。




