164ーテイマー?
お腹いっぱい美味しい朝食を食べて、俺達は予定通りお墓参りに向かった。
また馬車なのだ。大分慣れたけども、これはお尻に悪いのだ。おれのむっちりムチムチの可愛いお尻が、カチンコチンになってしまう。
「れおにい、とおいの?」
「そんなことはないよ。街中を通るからゆっくり行くけど、それでもほんの2時間くらいかな?」
2時間。新幹線なら東京から大阪まで行けるぞぅ。新幹線なんてないのだけども。
馬車の御者台にはレオ兄とニコ兄。後ろには俺やリア姉とマリー達、それにピカとちびっ子戦隊だ。
昨日、ちびっ子戦隊もあの塩釜焼きのお肉を貰って食べたらしい。
マリーがいつの間にか持って行ってくれていた。良かったのだ。
「折角ですからね、食べさせてあげようと思って」
と、マリーが言っていた。これも母さまが昔、色々飼っていた名残なのかも知れない。
だからなのだと納得したのだ。ピカのこともそうだけど、チロやコッコちゃん達の時もすんなりと受け入れられた。
コッコちゃんの時やクーちゃんの時も、大きさには驚いていたけどマリーに戸惑いは全然なかったのだ。
はいはい、飼いましょうね~って感じだった。
昔、母さまのことがあったから、きっと慣れているのだ。
「ロロ、どうしたの?」
「りあねえ、おぼえてる?」
「何かしら?」
「かーしゃま、いろいろ飼ってた?」
「ふふふ、そうね。色々いたわよ。何だか分からない動物もいたのよ」
「ひょぉー!?」
何か分からないなんて危険ではないのか?
「母様には何故か懐いちゃうの。不思議だったわ」
「かーしゃまも、ていまー?」
「えぇー? そんなことはないと思うわよ」
「姉上、分からないよ。今から思えば、もしかしたらテイマーのスキルを持っていたのかも知れない。母上は魔力量も多かったし」
「そうなの?」
「うん、そう思うよ」
じゃあ、レオ兄や俺もそれを継いでいるのだ。
「えへへ」
「ロロ、なあに?」
「れおにいとボクも、ていまーなのら。いっしょなのら」
「あら、そうね。ふふふ」
ちょっぴり嬉しいのだ。俺は覚えていないけど、それでも母との共通点を発見するのは嬉しいことなのだ。覚えていないからこそ、嬉しいのだ。
馬車は街の中を通り過ぎ、なだらかな坂を上って行く。周りに家が少なくなってきて、道の周りには木が目立つようになる。
この街はフューシャの街というのだそうだ。フューシャの街にある塩湖がフューシャン湖。そのフューシャン湖で採れる塩を目当てにやって来る商人もいる。
それでも、ルルンデの街よりこじんまりとした街だ。人もルルンデほど多くない。王都へ行くのにルルンデの街までの、中継地点の様な感じなのだろう。
少し離れた場所に岩場が見えてきた。きっと話していた岩場なのだ。
「ニコ、念のため後ろに行っておく方がいいよ」
「えー、なんでだよ」
「ロック鳥が出て来たら危険だからね」
「レオ兄も一緒じゃん」
「僕はニコよりは耐性があるからね」
「分かったよ」
岩場が近くなってくると、レオ兄がニコ兄を御者台から後ろへ移動させた。
用心しているのだ。と、言うことはそろそろなのだ。
「ピヨヨ」
「キャン」
「わふ」
お、やっぱりそうだ。ちびっ子戦隊が反応している。それをピカが、まだだと言い聞かせている。
ロック鳥は鳥さんで飛んでいるのだ。ちびっ子戦隊には無理だぞぅ。いくらジャンプしても届かない。
何処かにいるのだろう、ロック鳥。この馬車の中からだと、見えないのだ。
「にこにい、みえないのら」
「だよな。見たいよな」
そうなのだ。ニコ兄と俺は好奇心旺盛なのだ。
2人で御者台の後ろから顔を出して見る。
「こら、ニコ、ロロ」
「レオ兄、だって見たいじゃん」
「みたいのら」
「危ないって言ってるだろう」
「大丈夫だって」
「うんうん。ボクも持ってるのら」
「え? ロロ、何を持ってるんだ?」
「ほらッ!」
ズズイと木の短剣をレオ兄に見せる。俺の武器だ。木で出来ているのが心許無いけど。来る時はこの短剣から白い光が出たのだ。
「アハハハ、ロロ。またそれを持っているんだ」
「らってれおにい、ピカーッてなったのら」
「ああ、来る時かな?」
「しょうしょう」
「アハハハ、あれはチロだろう?」
「キュルン?」
ピカの背中で寝ていたチロが、自分を呼んだ? と顔を上げた。
「ちろ、ピカーッて」
「キュル」
「ボクは、れきない?」
「キュル」
「ありゃりゃ」
まだ使ったことないのに、無理だよ。て、言われちゃったのだ。
「アハハハ。ほら、ロロもニコもちゃんと座ってな」
そんな話をしていたら、ピカさんがノッシと起きてきたのだ。そして、俺とニコ兄のお尻をお鼻で突いた。
「わふ」
「ほら、ピカも危ないからって言ってるよ」
「えー、分かったよピカ」
仕方ないのだ。ピカさんにまで注意されたら、言う事を聞いておかないと。
おや? なんだ? どこからか音がするのだ。
「れおにい」
「うん、ちゃんと座ってなよ」
「わかったのら」
レオ兄とピカの雰囲気が変わったのだ。
ちびっ子戦隊まで、起きてスタンバっている。
「何? レオ、ロック鳥なの?」
「そうだよ、まだ遠いけどね」
この音は、もしかしてロック鳥が翼を動かしている音なのか?
「ロロ、そうだよ。大きな翼で風を切って飛んでいるんだ」
どう表現すれば良いのか分からない音なのだ。確かに大きな翼なのだろう。
バッサバッサと、大きく動かしているらしい音が遠くから聞こえて来た。
どんどんと近くなって来て、その内木の葉っぱがザワザワと鳴り出した。




