162ーピカさん、無敵?
ピカさんは一緒に食べているのだけど、ちびっ子戦隊は厩だ。
流石に宿屋の中には連れて入れない。だって、珍しいコッコちゃんの雛と、プチゴーレムだから。
魔馬さんと一緒にご飯を食べて、寝ているだろう。
もし誰かがちびっ子戦隊を盗もうとしても大丈夫なのだ。何故ならちびっ子戦隊は強いから。ビリビリもあるらしいし。
俺がプチゴーレム達に作った、お帽子に付与されている。ディさんが精霊眼で、そう見たのだ。
とにかく、お腹がいっぱいになったら俺はもう駄目なのだよ。眠気が襲ってくる。
「ふわぁ〜……」
「もうロロがおネムだね」
「今日はもう寝ましょう。ニコも疲れたでしょう?」
「俺は大丈夫だぜ」
「あらあら、明日もありますからね。今日はゆっくり休みましょう」
そうそう。マリーの言う通りなのだよ。明日はお墓参りに行くのだ。
俺達は部屋のある2階へ上がって行った。今日はベッドが2つ置いてある部屋で、レオ兄だけでなくリア姉とニコ兄も一緒の部屋なのだ。マリー達はお隣の部屋らしい。
「まりー、えるざ、ゆーりあ、おやしゅみ」
お手々をフリフリしておいた。
「ぴか」
「わふん」
「うん、おやしゅみ」
ピカもベッドの横で、寝そべった。チロがいつの間にかピカの背中に乗っている。
チロはずっと俺のポシェットに入っていたのだ。あれ? チロはまだご飯を食べていないのだ。
「キュル」
「あー、ちろ。食べられなかったから」
「キュルン」
「チロは蛇だから、外に出ちゃうと周りが驚いてしまうわ。仕方ないのよ。我慢してね。ピカ、チロのご飯は持ってないの?」
「わふん」
リア姉が話してくれて、ピカが小さなお肉をコロンと出した。
「キュル」
よしよし、良かったのだ。リア姉に任せて俺は寝ちゃうよ。もう、瞼が勝手に閉じてくるのだ。
「ロロ、大丈夫だよ。もう寝ていいよ」
「れおにい、おやしゅみ」
「ああ、疲れたね。ゆっくりお休み」
そのまま俺は眠ったのだ。いつもと違うベッドだ。俺の好きなおひさまの匂いがしない。仕方がない。
そのままいつの間にか熟睡したのだ。
翌朝、ピカにベロロンと舐められ目を覚ました。
「ん〜……ぴか?」
「わふん」
おはよう、朝だよ。と、言っている。もう朝なのか。よく寝たような、あっという間に朝になったような。ベッドが違うからかな? 少し気怠い。
「ロロ、おはよう。疲れてない?」
横を見ると、レオ兄がいたのだ。俺の頭を撫でてくれる。
レオ兄の体温と匂いが恋しくて、モゾモゾと俺はレオ兄にくっついた。レオ兄も腕を回して、ふんわりと抱き寄せてくれる。
「体が温かいね。まだ眠いかな?」
「らいじょぶなのら」
俺はレオ兄の腕の中で、ピトッとくっついている。安心するのだ。
「姉上、ハンザさんが話していたロック鳥を確認したいから、少し回り道をして墓地に行かない?」
隣のベッドに寝ているリア姉に話しかけている。そうか、ロック鳥。大きな鳥さんだと言っていた。どんな鳥さんなのだろう?
「そうね、巣を作っているのでしょう?」
「ロック鳥が巣を作るとしたら、あの岩場じゃないかな?」
「そうね、あそこしかないわよね」
なんだ、リア姉やレオ兄はもう見当を付けているのだ。鳥さんといえば、木の上とかに巣を作るのではないのか?
「れおにい、岩に巣をちゅくるの? 木じゃなくて?」
「ロロ、よく知っているね。普通の鳥さんは木に作るのだろうけど、ロック鳥は岩場に作るんだ」
「マズイわね、墓地に行く途中にある岩場でしょう? 通れるのかしら?」
「もしかしたら、ロック鳥が出てくるかもね」
なんですと? なら、ロック鳥を見られるのか? 見てみたいのだ。大きな鳥さんを。
「わふ」
「え、しょお?」
「わふん」
「そりゃ、ピカは強いからだよ」
そうだった。レオ兄もピカが話している事が分かるのだった。
「何? レオ、ピカは何て言ってるの?」
「ロック鳥なんて大したことないって言ってるよ。アハハハ」
「ふふふ、神獣のピカより強い魔獣なんているのかしら?」
本当だ。そんな事考えもしなかったのだ。
ピカさん、もしかして無敵なのか? つよつよで最強なのか?
「わふん」
「あ、えらしょうなのら」
「アハハハ」
ピカが、当たり前じゃない。と、言っている。僕を誰だと思っているの? なんて、ちょっぴり偉そうなのだ。
確かに、ピカは神獣だ。普通の獣や魔獣はピカの相手にならないのだろう。
だけどロック鳥は飛んでいるのだよ、ピカさん。
「わふ」
「え、しょお?」
「アハハハ」
飛んでいようが関係ないね、なんてより偉そうだ。
さっきから、レオ兄がずっと笑っている。
「ピカって、神獣だもんね」
「わふ」
ま、心強いよ。ピカさん、頼りにしているのだ。
「さあ、起きよう。起きて朝ごはんだ」
「うん」
「ほら、ニコ。起きなさい」
え、ニコ兄はまだ寝ていたのか?
「んー、お腹すいた……」
「アハハハ、ニコ。朝ごはん食べよう」
「もう、寝惚けているのよ」
レオ兄に抱っこされて下りて行くと、マリー達がもう揃っていた。
「おはよ~」
「マリー、待たせちゃった?」
「いえ、大丈夫ですよ。眠れましたか?」
「うん、大丈夫だ」
「あらあら、ニコ坊ちゃま。まだ目が開いてませんね」
「ん、起きてるぞ。お腹すいたんだ」
「もう、ニコったら」
ユーリアがニコ兄の世話を焼いてくれている。2人はいつも一緒に畑へ行っているから、ニコ兄の事だけ『ニコ』と呼ぶんだ。
畑のおっちゃんやおばちゃんに変に思われないようにだって。
俺達の事も、坊ちゃまなんて呼ばなくていいとレオ兄は言っているのだけど。
「坊ちゃまは坊ちゃまですから」
と、言ってマリーは聞かない。よく分からない。
そんなこと、別に良いのに。と、俺は思う。マリーはマリーなのだ。




