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16ーバザー

「あ、マリーさん!」


 孤児院の方へ回ると、ハンナが俺達を見つけてやって来たのだ。


「ハンナ、今日はよろしく頼むわね」

「はい! 皆さんもようこそです! あたしは、ここの孤児院の子供達のお世話をしていますハンナです。宜しくお願いします!」

「私はアウレリアよ。リアって呼んでください」

「ロロちゃんのお姉様ですね! 大きなワンちゃんも一緒なんですね!」

「ぴか」

「ピカちゃんて言うの? よろしくね!」


 と、一通り自己紹介をした。持って来たバザーに出す商品を並べる。


「まりー、ボクちょっとらけしかない」

「ロロ坊ちゃま、大丈夫ですよ。クッキーも持ってきましたし。頑張って全部売りましょうね!」

「うん」


 孤児院の小さな庭が、混雑するくらい其々商品を並べている。皆、思い思いの品を持ってきている。孤児院の子供達が育てた、野菜や花もある。

 なにより子供達が楽しみにしているのは、領主夫人が好意で用意してくれた屋台なのだ。

 カットフルーツを売る店に飲み物の店、そして串にさした肉を焼いている店が注目を集めている。肉を焼く良い匂いがするのだから、仕方がない。

 俺はマリーが焼いてくれた肉が好きだから、フルーツの方に目が行く。


「ロロ、何見てんだ?」

「にこにい、あのふるーちゅ」

「ロロは肉よりフルーツか?」

「らって肉はマリーの焼いたのが1番しゅきなのら」

「そうだよな、俺もだ」


 俺とニコ兄は、マリーが商品を並べた台の近くでしゃがみ込んでいるのだ。

 俺のそばには、ピカが伏せながら大きな欠伸をしている。


「あれもお金がいるんだよな?」

「そうですよ。でも街で売っている値段の半分なんですよ」


 ハンナがやって来て、俺の隣りにしゃがんだ。ピカを恐る恐る撫でる。

 ピカは片目でハンナを見ながら、大人しく撫でられているのだ。


「え、そうなのか?」

「はい。領主様の奥様が援助して下さっているのです」

「ロロ、半分だって」

「ひょぉー」

「ふふふ、ロロちゃんは本当に可愛いわね。ニコちゃんも良いお兄ちゃんね」

「ニコちゃんなんて呼ぶなよ! ちびっ子みたいじゃん。ニコでいいよ」

「ふふふ」


 だってちびっ子だし。ニコ兄だってまだ9歳だ。一緒に冒険者登録が出来なかったちびっ子仲間なのだ。

 そのうち、チラホラとバザーの商品を物色する住民達が集まり出した。

 マリーがテキパキとお客さんの相手をしてくれている。

 この感じ、少し懐かしい。前世で1度だけ、コミケに出す友人の手伝いをした事がある。

 規模は全然ちがうけど、ワラワラと購入しに来てくれた人達を捌く感じで思い出したのだ。


「ロロ、もうすぐ無くなるぞ」

「うん」

「早くに売れちゃいそうですね!」

「ね〜」


 クッキーがあっという間に無くなりそうだ。マリーと一緒に小さなリボンをつけてラッピングしたクッキー。

 周りを見ても、食べ物は早くに売れている様だ。

 孤児院のちびっ子達がワラワラと寄ってきた。大きなピカに興味津々なのだ。


「ロロのワンちゃんか?」

「しょう。ぴか」

「ピカってんだ、撫でても平気?」

「うん」


 と、俺が言うと一斉にピカを取り囲んで撫でだした。


「わふ」

「ぴか、なでなで」

「わふん」


 仕方ねーな。とでも思っていそうだ。知らん顔をして大人しく伏せている。お利口さんなのだ。

 早くもクッキーが全部売れた頃に、バザーの広場に立派な馬車が横付けされた。

 あの馬車は……


「まりー、りょうしゅさま?」

「そうみたいですね」


 以前、マリーと来た時に見た馬車と同じなのだ。その馬車から、優雅に奥様が降りてきた。続いてクラウス様もだ。相変わらず、キラキラした坊ちゃんなのだ。

 あれ? 今日はもう1人一緒だ。

 奥様と同じローズブロンドの髪を、高い位置でツインテールにしていてふんわり大きくカールしてある。

 ツインテールを結んでいる、大きなリボンは着ているワンピースと同じレモンイエローだ。

 深いローズ色した瞳の、少し猫目気味の目は不機嫌そうなのだ。


「あ、やべ。レベッカ様だ」

「ハンナのとこに行こう」


 ピカを撫でていたちびっ子達が、逃げる様にハンナのそばへと走って行った。

 どうしたのだ?


「まりー?」

「大丈夫ですよ。ビオ爺に挨拶したらそう長くはいらっしゃらないでしょう」


 そうか? でも、ちびっ子達が逃げて行ったぞ。


「俺、聞いた事あるぞ」

「ニコ坊ちゃま、何をですか?」

「あのレベッカって令嬢だよ。スッゲー我儘だって聞いた」


 ニコ兄が手伝っている畑で、大人達がそんな話をしていたらしい。

 この街の領主様は伯爵で、領民思いの人なのだそうだ。奥様も嫡男のクラウス様も、領民に分け隔てなく接して気軽に声を掛けてくれると評判は良いらしいのだ。

 この街は近くにダンジョンがある。だから冒険者も多い。放っておくと冒険者崩れの無法者が多くなりやすい。

 でも、俺みたいなちびっ子が街を歩ける程度には治安は良い。街の整備や治安維持等にも、気をつけているというのだから評判通りの領主なのだろう。

 唯一、クラウス様の妹のレベッカ様がとんでもなく我儘だと。

 滅多にこの街には来ないらしいのだが、横柄な態度で見下した発言をするらしい。

 その度に奥様が注意をするのだそうだが、聞かないそうだ。


「そうなんですか?」

「うん、畑でじーちゃん達が言ってたぞ」


 クラウス様はリア姉と歳が同じ位だから、妹とは歳が離れているんだな。そのレベッカという妹は、ニコ兄と変わらない様に見えるのだ。


「ねえ、おばあちゃん。こっち見てるわ」

「これこれ、ユーリア。睨んだら駄目よ」

「睨んでないわよ。でもなんか嫌な感じ」

「あらあら、そんな事言わないの」

「はーい」


 ニコ兄が知っていたのだ。ユーリアだって同じ話を聞いた事があるのだろう。

 なら、印象は良くないだろうな。


お読み頂き有難うございます。

宜しければ、評価やブクマをして頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします!

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