153ー強いのだ
「わふッ」
ピカがズズイッと顔を出してきた。え? 自分は? 1番最初に倒したけど? みたいな。
「ぴかもちゅよい!」
パチパチパチ! と、賞賛の拍手を送ろうではないか。
「わふん」
これくらい、どうって事ないよ。なんて言って尻尾をブンブンと振っている。うん、ちょっぴり自慢気だ。
「ピカ、収納してくれるかな。街に着いたらギルドに売ろう」
「わふん」
「うる?」
「そうだよ。この三つ角アナグマは肉も皮も売れるんだ」
ほうほう、なるほど。それより、お隣の街にもギルドがあるのだね。
「小さな村じゃない限りギルドはあるよ」
そんな事も知らなかったのだ。ふむ、俺はまだまだ知らない事がいっぱいなのだ。
「むむむ……」
「ロロ、どうした?」
「にこにい、しってた?」
「何が? ギルドか?」
「しょう」
「当たり前じゃん、知ってたぞ」
なんですとッ!? 同じちびっ子仲間だと思っていたニコ兄が!?
「アハハハ。ロロ、どうして驚いているんだよ」
「らって、れおにい」
「ああ、ニコがそんな事を知っているなんてって事か?」
「しょうしょう」
「ロロ、ヒデーな」
「らって、にこにいはちびっ子なかまら」
「なんでだよ! 俺はちびっ子じゃねーって!」
「ぴぃょ……!?」
「アハハハ。2人共まだちびっ子だよ」
「レオ兄!」
ニコ兄がムキになっているのだ。
ニコ兄だって、まだまだちびっ子だ。だって、一緒にギルドに登録出来なかったちびっ子仲間なのだ。
俺は、ニコ兄の肩をポンポンとした。背伸びしちゃって可愛いのぅ。
「ロロ! 俺はもうちびっ子じゃないからな!」
「ほほ~ぅ」
「ロロー!」
「アハハハ!」
大人ぶりたいお年頃なのだね。うんうん、分かるよ。そんな時もあるさ。
なんて、ニコ兄と話しているとレオ兄が御者台に乗ってきた。リア姉はちびっ子戦隊を馬車に乗せている。
飛び降りたはいいけど、乗れないのだ。
「ちゅよかったね〜」
と、褒めておこう。
「ピヨピヨ!」
「ピヨヨ!」
守るアルよ! 楽勝アルね! と賑やかだ。
「アンアン!」
「キャンキャン」
こちらは……おや? 何やら円陣を組んでいるぞ。
まだフォーメーションが甘いな! 再考しなければ! なんて言っている。こっちは本格的なのだね。
どうやら、いっちーがリーダーらしい。やっぱレッドだからなのか?
「ほら、出発するよ。ロロ、座ってないと危ないよ」
「あい」
「俺、レオ兄の隣り!」
「ロロ、こっちに座りなさい」
「わふ」
ピカにまで、座ってないと危ないと言われちゃった。仕方ない。
トコトコとリア姉の隣りに行くと、ヒョイと抱き上げられた。
「抱っこしてあげるわ」
「いい、ぴかとしゅわる」
ガビーンとした顔をしないで欲しい。だってリア姉は、漏れなくほっぺにスリスリが付いてくるから遠慮したいのだ。
ピカと一緒に、馬車の1番後ろで外を見ながら座り込む。ふぅ〜、ちょっと白熱しちゃったのだ。
「あらあら、ロロ坊ちゃま。クッション使ってください」
「まりー、ありがと」
マリーがくれたクッションをお尻に敷く。うん、馬車の振動が少しはマシだ。
でも、このままだと俺のプリップリのお尻が、カチンコチンになってしまうぞ。
なだらかに隆起している平原の中の街道を馬車は進む。街道と言ってもこの辺りはまだ石畳のように舗装されている。一応ね。
石畳のちょっと綺麗で平らな感じなのだ。前世の舗装された道路に比べたら、天と地の差があるけど。
それでも、まだマシな方らしい。
もっと辺境の方へ行くと、街道も舗装されていないという。
まだ目的地まで半分も来ていない。まだまだガタゴト進むのだ。
馬車に乗っている間、する事がないのだ。揺れるから、刺繍なんてできない。外の景色を見ていても、代わり映えしないから直ぐに飽きるのだ。
その内俺は、ピカに凭れてウトウトとしていたのだ。
ピカのモフモフと少し高い体温はとっても眠気を誘うのだ。
ウトウトとしながら、マリーとハンザさんが話しているのが耳に入ってきた。
さっきの魔獣退治の話をしているらしい。
リア姉とレオ兄がカッコよかった。危なげなく倒していた。楽勝なのだ。
普段はもっと強い魔獣を相手にしているのだろう。
「それにしても驚いた」
「おやおや、何ですか?」
「あの雛達にも驚いたが、リアちゃんやレオ君も強いですね」
「そうでしょう? だから道中安心ですよ」
「ほうほう。それにピカですよ」
「ピカですか?」
「普通、犬は魔法なんて使えないでしょう? それに収納スキルもですよ。ピカは、街で噂になっていたワンちゃんですね」
噂とは、例の令嬢に狙われたという噂だ。ルルンデの街の人はみんな知っているのだ。
それに、やっぱ普通のワンちゃんじゃないって思うよな。だから、俺は顔を上げて言った。
「はんじゃしゃん、ひみちゅ」
お口の前に短い人差し指を立てて言った。プニッと唇にくっつけてみよう。
「ほうほう、秘密ですか?」
「しょう、ひみちゅなのら」
「ほぅッほぅッほぅッ、分かりましたよ」
よし、これでいいぞ。完璧なのだ。
「わふん」
「ん、らいじょぶら」
「わふ」
「ん、ふわぁぁ〜……」
大きな欠伸が出た。ピカが凭れさせてくれる。
お昼休憩までまだまだみたいだから、俺はちょびっと眠っちゃおうかな。




