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15ー神使

 泣き虫女神の説明だと、回復系をフルコンプしているそうだ。

 怪我や病気は勿論、毒や呪い等状態異常も回復出来る。凄いのだ。


「私の神使なのですッ! でもぉ、まだ赤ちゃんなのでぇ……」


 なんだよ、中途半端だ。まだ力は弱いらしい。それでも、心強いのだ。


「いずれは、ロロもできる様になる予定なのですッ!」


 俺なのか!? しかも予定なのか!?


「あ、それと言い忘れてましたがぁ。ピカはワンちゃんではないのです」


 なんだ、その目は? ニマニマしてちょっと自慢気だ。


「太っ腹なのです!」


 だから、何なのだ?


「なんとフェンリルなのですッ! ピカも私の神使なのです! 驚きましたか!?」


 普通じゃないと思っていたら……フェンリルなのか!?


「でもぉ……」


 また、『でも』なのだ。


「ピカもまだ子供なのです」

「え? 大きいよ?」

「本当はもっと大きいし、魔法も強力なのです!」


 ふむふむ。でも充分だ。とっても役に立ってくれているのだ。


「ありがと」

「キャンッ! ぎゃんかわッ!」


 今度は鼻血を出している。意味が分からないのだ。


「ああぁぁぁ! また時間なのですぅーッ!」


 はいはい。だいたいパターンが分かってきたぞ。グダグダだ。ギャーギャーと騒いで、最後はいつも時間切れなのだ。


 次の日から俺は、せっせとハンカチに刺繍をしていた。例のバザーに出す為なのだ。


「ロロ坊っちゃま、糸足りてますか?」

「うん」


 俺の小さな手では、一針刺すのもゆっくりなのだ。やっとハンカチ1枚できただけ。集中しすぎるとお口がタコさんみたくなるのは何故だろう?

 マリーは早い。マリーは俺の刺繍の師匠なのだ。


「ロロ坊っちゃまは丁寧ですから。私は大雑把なので早いのですよ」

「しょんなことない。きれいら」

「そうですか? フフフ、坊っちゃまにそう言ってもらうと嬉しいですよ」


 そんな感じで毎日チクチクしながら、バザーの日になった。

 マリーは10枚も刺繍したのに、俺はたった3枚しかできなかった。やはり、この手だとまだまだ遅いのだ。


「でも、ロロの刺繍は丁寧で綺麗だよ」

「れおにい、ありがと」


 そんな俺が刺繍したハンカチを手に取り、ジッとみているレオ兄。やっぱまだまだだよな。


「ロロ、これ何を付与したの?」


 と、顔を近付けて小さな声で聞いてきた。ついでに人差し指でほっぺを突かれた。ぷにッてさ。


「え?」

「付与されているよね」

「わかんない」

「ロロ、無意識なのか?」


 なんだ? リア姉とレオ兄に持ってもらう物には意識して刺繍しているけど、バザーに出す物には何も意識していないのだ。

 だから俺は、キョトンとしてしまう。レオ兄は俺のほっぺを、ぷにぷにするのを止めてくれない。


「そうか、ロロはそういうスキルを持っているのだと思うよ。でないと、こんなのできないよ」

「え……だめだめ?」

「駄目じゃなくて、僕や姉上みたいな冒険者はとっても欲しい物だね」


 そうなのか。ならきっとまた防御の効果でも付与されているのだろう。

 ああ、そういえばあの泣き虫女神がスキルがどうとか言っていたのだ。その影響なのか?


「多分、まだそう効果の高いものじゃないと思うんだ。でも……」


 レオ兄が何かを考えている。どうしよう。売ってもいいのかな?


「これ、1枚貰ってもいいかな?」

「うん」

「ギルドマスターに調べてもらおう。その方が良いね」

「れおにい、バザーはだめ?」

「ううん、悪い物じゃないから構わないよ」

「しょっか。よかった」


 そして、俺達は朝からみんな揃って教会へ向かった。みんな一緒にバザーに行くのだ。


「いいなぁ、今日もあたしは行けないわ」


 マリーの孫娘のエルザだ。街の食堂で働いているから、滅多に一緒には行けない。


「エルザ、帰りにみんなで食堂に寄るわね」

「リア様、本当ですか? 待ってますね」


 エルザは俺達には丁寧な言葉を使う。リア姉と一緒に育っているから、俺達家族に仕えていた頃のまんまなのだ。

 だから、リア姉の事も『リア様』と呼ぶ。マリーが嬢ちゃま、坊ちゃまと呼ぶのと同じだ。

 もうその呼び方は止めてほしいと、リア姉は何度も言っているが変わらない。

 今日はピカとチロも一緒なのだ。俺はピカに乗せてもらう。チロはいつも俺が出掛ける時に肩から掛けているポシェットに入っている。

 チロはまだ小さいけど、ヘビさんだから怖がる人もいるだろう。だから俺のポシェットの中だ。

 俺が大きなピカに乗って街を行くと周りの人達が見てくる。そりゃそうだ。大きなワンちゃんにちびっ子が乗っているのだ。

 そんな光景は滅多にないだろう。ワンちゃんじゃないのだけど。


「俺、教会に行くのは初めてだ」

「あらあら、ニコ坊ちゃまはそうでしたか?」

「うん、行った事ないぞ」

「街の小さな教会ですよ。坊ちゃまと同年代の子供がいる孤児院もあります」

「へぇ~、そうなんだ」

「この街の領主様の奥様が援助なさっている教会ですよ。今日も来られると思います」

「姉上、領主様の名前覚えた?」


 レオ兄がリア姉に聞いた。会った時に名前が出て来なかったら失礼だと心配したのだろう。


「覚えたわよ。フォーゲル伯爵よ」

「奥様はフロレンツィア様と仰います。ご子息のクラウス様も来られると思いますよ」

「マリー、よく知ってるわね。なんか今更貴族なんてね……」

「姉上」

「なんでもないわ」

「たしか、クラウス様はリア嬢ちゃまと同じ歳頃だと思いますよ。学園で会っていらっしゃるかも知れませんね」

「え……嫌だわ」

「もう、姉上」

「だって、余計な事とか噂話をされるの嫌じゃない」

「りあねえ、しょんな人じゃないのら」

「ロロ、そうなの?」

「うん。たぶんいい人ら」

「ロロがそう言うならそうなのね」


 道中そんな話をしながら教会に着いた。


お読み頂き有難うございます。

ネット小説大賞効果がまだ続いているようです。^^;

いやいや、謙虚に地道に頑張ろうと思う今日この頃です。

宜しければ、評価やブクマをして頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします!

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