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144ーチクチクと

(レオ視点です)



「もしかしたら、没落した貴族だった可能性はないかな?」

「クラウス君、どうしてそう思うんだ?」

「ディさん、いくら何でも孤児にいきなり執事をさせるのは、無謀すぎると思うのです。もしかして、最初からある程度の学があったのだとしたら、元貴族なら不自然ではないでしょう?」


 元貴族か。どうなのだろう? 僕達には分からない。


「そう言えば……ウォルターさんは母親が亡くなって、家を追い出されたと話していた事がありますよ。そんな父親に付けられた名前が嫌だったから、先代の旦那様にお願いして新しく付けてもらったと聞いた事があります」

「マリー、そうなの?」


 マリーが話してくれた。以前いつだったか、まだリア姉が幼い頃の事なのだそうだ。マリーがリア姉に、作法をお教えする事が出来ないと相談した事があったらしい。マリーは平民だ。貴族のマナーなんて知らない。

 でも、ウォルターは知っていたのだそうだ。その時にそう溢していたそうだ。


「家督争いに負けたのかな?」

「ディさん、それよりも母親が亡くなって追い出されたと言う事は、母親の立場が弱かったと考える方が妥当でしょう」

「ああ、愛人さんとか?」

「そうですね。この国では第二夫人を持つ事は許されていません。ですが、愛人を囲っている貴族もいますから」


 愛人か。自分達の両親を見ていると、そんな事は考えられない。とても仲の良い夫婦だった。

 でも、世の中にはそうでない人達もいるんだ。貴族なら家の為に婚姻して、愛情を持てない人だっているのだろう。そんな婚姻って、本人達も生まれて来る子供達だって幸せなのだろうか?


「レオ達のご両親は仲がよかったんだね」

「はい、とても」

「坊ちゃま達のご両親はお互い想い合って婚姻されたそうです」

「マリー、そうなの?」

「はい。お2人共婚姻の為に、かなり無理をされたと仰ってました。だから……奥様のご実家と、縁遠くなってしまったのだと、聞いた覚えがあります」


 父上の両親は、父が家督を継いで直ぐに亡くなったと聞いていた。でも、母上の実家の事は聞いた覚えがない。

 もしかして、婚姻に反対されたのだろうか?


「坊ちゃま、反対と言うよりも……」

「マリー、言うよりも?」

「旦那様の家の方が格下で、難しかったという様な事だったと思います」

「ああ、貴族にありがちだよね」

「ディさん、うろ覚えなのです。奥様はご実家の事は殆ど話されませんでしたから」


 そうなんだ。僕達は知らない事だらけだ。父上の方が格下と言う事は、母上の実家は伯爵より上の侯爵以上だと言う事になる。その令嬢と婚姻なんて難しかったのだろう。

 両親がどうやって知り合って婚姻したのか。母上の実家の事は何も知らない。

 僕達は、仲の良い両親に守られ、何の疑問も持たず幸せに暮らしていたんだ。


「良いご両親だったんだね」

「はい」


 姉上が王都の学園に入学が決まると、姉上に付いて家族全員で王都にやって来た。家族は離れたら駄目だという、両親の思いがあっての事だ。その為、父は王都と領地と半々の生活になった。

 父のいない日も多かった。それでも、僕達は不安に思う事はなかったんだ。

 少し寂しい気持ちはあったけど、でも母上の温かい愛情に包まれていたから不安はなかった。

 ロロはそれを覚えていない。今でも時々夜泣きをするのは、そんな両親の愛情を求めているのだろう。

 その日クラウス様は、また進展があったら知らせに来てくれると言って、ディさんと一緒に帰って行った。




 ◇◇◇



 次の日も俺は、朝からずっとチクチクと刺繍をしている。リア姉とレオ兄、それにディさんのおリボンだ。

 最後の1本に取り掛かっている。葉っぱの模様を上手く繋げて……と、俺の小さな指を必死で動かして、刺繍をしているのだ。思わず、お口がタコさんのお口になってしまう。


「あと少しですね」

「うん、まりー。がんばるのら」

「はい、とってもお上手ですよ」

「えへへ〜、まりーありがと」


 おリボンに刺繍するのは2度目なのだ。

 ハンカチ等布地に刺繍するのと違って難易度が上がる。だって、おリボンは細い。小さな細かい刺繍をしなければならない。

 俺のムチムチな短い指では、難易度が数段アップしてしまう。でも、あと少しなのだ。


 今日は、リア姉とレオ兄のランクアップの試験だ。朝からリア姉は張り切って出掛けていったのだ。


「がんばるのら!」


 と、言って送り出した。リア姉とレオ兄ならきっと合格するだろうと思っているのだ。

 試験にはディさんも立ち会うらしい。だから今日は、午後遅くにしか来られないと話していた。

 その間に仕上げてしまうのだ。朝からチクチク、チクチク。

 焦ってすると歪んでしまうから、落ち着いて冷静になのだ。

 マリーはお墓参りに行く準備をしている。持って行く物、道中の食事とかを用意しているのだ。

 お手伝いできなくて、ごめんなさいなのだ。

 沢山作って、ピカに収納してもらう。そしたら、いつでも出来立てだ。

 と、言っても簡単に食べられるサンドが中心になる。あと、マリー特製の温かいスープだ。


「温かいスープは大事です。温かい物で緊張が(ほぐ)れますし、疲れも取れますからね」


 と、言って沢山作っている。ここでまた、マンドラゴラが良いお仕事をしてくれたらしい。とっても味が浸みて美味しくなるそうなのだ。


お読みいただき有難うございます!

感想や誤字報告も有難うございます!

明日で第2章が終わります。長かった^^;

続けて読んで頂けると嬉しいです。

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宜しくお願いします?

今日はハルちゃんのイラストをどうぞー!

5月30日発売です!

挿絵(By みてみん)


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