14ーベリーパイ
「ロロはまだ甘い匂いがするね。赤ちゃんの時は、もっと甘い匂いがしたけど大きくなったんだなぁ」
「れおにい……ボク赤ちゃんの時も抱っこしてくれた?」
「勿論だよ。父上と母上も沢山抱っこしていたよ。みんなロロが産まれて喜んだんだ」
「しょう……」
俺にとってはレオ兄が父親代わりなのだ。リア姉は母親代わりとは言えないから、マリーかな。
レオ兄に抱っこされて下に降りて行くと、もうみんなベリーパイを取り分けていたのだ。
「ロロ! 早く食べようぜ!」
ニコ兄はもう手にフォークを持っている。俺の定位置、レオ兄とニコ兄の間にある子供用の椅子に座らせてもらう。
「私もロロを抱っこしたいわッ!」
「姉上、落ち着いて座りなよ」
「もう、いつもレオばかりズルいんだから!」
リア姉は抱っこすると必ずスリスリしてくる。しかも、しつこい。それが、俺はちょっとだけ嫌なのだ。
「さあさあ、ロロ坊っちゃまもどうぞ!」
「まりー、ありがと。お喉カラカラら」
「はいはい。果実水でいいですか?」
「うん」
マリーが俺の前に、三角に切り分けたベリーパイを出してくれる。
もらった果実水をコクコクと飲む。お昼寝の後は喉が渇くのだ。
「さぁさぁ、頂きましょう!」
みんなでベリーパイを食べる。フォークを入れるとサクッといい音がする。
今日のは、カスタードクリームも入っている。美味しそうなのだ。
「んー、美味しい〜!」
「とってもフルーティーね!」
リア姉とユーリアはもう食べている。俺はまだ切っているのに。
小さな手に、子供用のフォークを持ってベリーパイをあ〜んとお口に入れた。
「うまうま!」
「な、美味いな! お前も食べるか?」
ニコ兄がへびさんにベリーパイをあげている。サクッと音がした。
「キュルンッ!」
「アハハハ、美味しいだろ?」
俺の足元にいるピカも、もらって食べている。
プラチナブロンドのお口の周りが、ベリー色になっているのだ。
「ぴか、うまうま?」
「わふッ」
「あぁ、ピカの口の周りが大変な事になってるよ」
「わふ?」
レオ兄に言われて、ピカがベロロンと口の周りを舐めた。
「アハハハ。ピカ、駄目だよ。食べ終わったら拭こうね」
「ぶむむ」
笑いを堪えたのだ。ピカの口の周りを見て、吹き出しそうになってしまった。
「ロロもついてるよ」
レオ兄が俺のほっぺを拭いてくれた。大きな口を開けて食べても、何故かほっぺについてしまう。
今日の晩ごはんは、ベリーソースのお肉だ。楽しみなのだ。
へびさんが増えた。この子の名前はどうしよう?
「ロロ、普通の蛇さんじゃないと思うよ?」
「れおにい、しょう?」
「うん、そうだね。普通、蛇さんは鳴かないと思うよ」
そうなのか? でも、どこからどう見てもへびさんなのだ。
長さは30〜40センチ位かな? スカイブルーのつぶらな瞳がキュートなのだ。細い舌をチロチロと出している。
「ちろ」
「ロロ、何だ?」
「にこにい、ちろ」
へびさんを指さして言う。
「ああ、名前か?」
「しょう。舌をチロチロだしゅから」
うん、チロに決まりなのだ。まんまなんだけど。
「よしッ! チロ、よろしくなッ!」
「アハハハ、そのまんまじゃないか」
レオ兄、それを言ったら駄目だ。もう他に思いつかないのだ。
チロは、食べ終わったら眠そうな目になった。さっきまで俺と一緒にお昼寝していたのに。まだ赤ちゃんだからなのか、それとも弱っているのか?
「わふ」
ピカは大丈夫だと言う。だからもう少し様子を見るのだ。もしかして、ポーションとか飲ませる方がいいのかなぁ?
俺は作って家に置いてあったポーションの小瓶を手に持った。
「キュル……」
「あれ?」
今、反応したか? チロのお目々が俺の手元を見ているのだ。欲しいのか?
「のむ?」
「キュルン」
ちょっと待ってな。俺はマリーに言って小皿をもらった。そこに少しだけポーションを入れる。
「あい、のめる?」
「キュルン」
ペロペロペロとポーションを飲み出した。あれれ、もしかして好きなのか? やっぱ弱っているのか? 分からん。
「キュル……ケプッ」
「あ……」
ゲップしたぞ。もうお腹いっぱいなのかな?
と、見ていると「キュルキュル」と鳴きながら小皿を俺の方へと頭で押出してくる。まだ欲しいのか?
また少しポーションを入れてあげる。
「キュルン」
ペロペロペロと飲み出した。大丈夫なのか? 人間に使うポーションなんだけど。
「わふ」
あらそう? 大丈夫らしい。
結局チロは、もう1度おかわりをしてまた眠ってしまったのだ。
「ぴか、赤ちゃん?」
「わふ」
うん、分からない。ピカを触れば良いんだけど。まあ、大丈夫だろう。
その日の夜、眠っているとまた泣き虫女神に呼ばれたのだ。
「ごめんなさいぃぃー! ちょっと間違えてしまいまじだぁぁぁ!」
と、またギャン泣きしている。
「送る時にちょっと座標がズレてしまってぇ、獣に狙われてしまったのですぅぅ! だから危険な目に合わせてしまいましたぁぁぁー!」
ああ、昼間の獣の事か。しかし、これで創世の女神で主神なのだと言う。よく務まっているのだ。
「なきむし」
「びぇぇッ!」
「どんくしゃい」
「ギャンッ!」
またまたノックアウトなのだ。両手で顔を塞ぎながら、アワアワと天を見上げている。
「で、へびしゃんなの?」
「よく聞いてくれたのですッ! なんと普通の蛇さんではないのですよぅ!」
そりゃ、主神が送ってきたのだからそうなのだろう。
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