13ーナゾ
「びっくりした……ロロが無事で良かった!」
「ぴかがいるからだいじょぶなのら」
「うん、ピカ超強いな! ピカ、ありがとう!」
「わふッ」
しかし、良いお肉が沢山手に入ったぞ。
このイノシシに似た獣の肉は、俺には少し噛み応えがあるが甘みがあって美味しいのだ。
「ロロ、その頭のやつは何だよ?」
「ん〜……ナゾなのら」
ピカを見ると威嚇する訳でもない。俺の前でお座りをして、尻尾を振りながらいつものキュルンとした目で見ている。
ピカが、俺の頭に乗ったものをそっと咥えた。そして、俺に「はい、どうぞ」と渡されたのだ。
「ぴか?」
「わふ」
うん、分からんのだ。俺に渡されてもなぁ。
俺の両手に乗せられた、ピカと同じ色した生き物。
プラチナブロンド色した鱗がキラキラとしている。知性を感じるさせるつぶらな瞳は、青空の様なスカイブルーだ。尻尾の先は葉っぱみたいになっている。体は冷んやりしているのだ。
この色味ってあれだよな? 泣き虫女神と同じなのだ。
「むむむ……へびしゃん?」
「わふぅ……」
もしかして、ピカ。「マンマやん!」て、ツッコんでる?
だって、見た目は完璧にへびなのだ。とにかく、危険はないのか?
「わふ」
大丈夫らしい。弱っているのかな? クタッとしているのだ。
「わふわふ」
そうか、なら……
「まりー、お腹ペコペコ」
「ロロ坊ちゃま、それは大丈夫なのですか?」
「うん、だいじょぶら」
「じゃあ、お弁当食べましょう!」
ピカに、倒した獣を収納してもらってお昼を食べる。ピクニックみたいなのだ。
「ベリーも沢山摘んだし、肉も手に入ったし!」
「やだ、泣いてたクセにぃ」
「仕方ないだろ、ロロが心配だったんだ」
「ユーリアも余計な事言わないの。無事で良かったですよ」
マリーが俺を撫でてくれる。獣が出てきた時、真っ先に俺を助けようとしてくれたマリー。その気持ちがとっても嬉しいのだ。
マリーの作ったサンドは美味しい。
昨日の角兎のソテーをトマトや野菜と一緒にサンドしてある。プリップリな角兎の肉と、シャキシャキお野菜のハーモニーなのだ。ほんのりレモンの味がして爽やかなのだ。大きな口を開けて齧り付く。
「うまうまら」
「はい、沢山食べてください!」
へびさんは食べるかな? と、思って野菜を目の前に持っていくと、フルフルと首を振った。違うか。
じゃあ、肉はどうだ? パンに挟んである角兎のソテーを少し千切って見せてみる。
パクリと咥えてモグモグしている。
「あ、うまうま?」
「キュルン」
「お! 鳴いたじゃん? 美味いか?」
ニコ兄が同じ様に角兎のソテーをあげる。またパクリと咥える。
「おー! 食べた! 沢山食べろよ、いっぱいあるからな!」
「キュルン」
ニコ兄が世話を焼き出した。小さいからかな? 怖くはないみたいだ。大丈夫そうなのだ。
「ねぇ、おばあちゃん。今日はベリーソースがいいわ」
「ふふふ、そうね」
晩ごはんになるだろう肉のソースの話だ。俺も賛成なのだ。
肉も手に入ったし、マリーの作るベリーソースは絶品なのだ。
家に戻ると、マリーが早速獣を血抜きして肉を切り分けているのだ。ご近所にもお裾分けする為だ。
うちは上の2人が冒険者だと近所の人達は皆知っている。何故なら、姉達が持って帰ってきた肉を時々こうしてお裾分けするからなのだ。
お返しといって、果物を貰ったり焼き立てのアップルパイを貰ったりする。お互い様なのだ。
「おばあちゃん、近所に持っていくならあたしが行くわ」
「あらあら、 頼めるかしら?」
「うん、任せてよ」
ユーリアも、ちょっぴりお返しを期待しているのだ。
俺はまだちびっ子だから、帰ってきたら直ぐに寝落ちしてしまった。お昼寝なのだ。
この小さな体は、まだまだ体力がない。力だってない。早くも走れない。仕方がない、我慢なのだ。
俺がお昼寝から目が覚めたら、もうリア姉とレオ兄が帰って来ていた。今日は早いのだ。
「ロロ、聞いたよ。怖かったな」
まだベッドの中で微睡んでいる俺に、レオ兄が頭を撫でながら言った。心配掛けちゃったのだ。
「ん……らいじょぶ。ぴかがビュンってやっちゅけたのら」
寝起きでまだ舌が回らない。
「そっか。ピカは強いな」
「ん……」
「それにこの子は何だろうね?」
俺の顔の横で一緒に眠っていたらしい、今日頭に乗ってきたへびさんをレオ兄は言っている。
「なぞなのら」
「そう、ロロにも分からないのか?」
「うん。れも、らいじょぶ」
ピカが威嚇しないから大丈夫なのだ。
「そろそろ起きないか? お隣のおばさんがベリーパイをくれたよ」
「ベリー……アップルじゃない」
「アハハハ、今日はベリーだ。みんな摘みに行ったんだろうね」
そっか、だからニコ兄が知っていたのか。なるほど。
「おきる……」
まだ俺はポヤポヤだ。レオ兄が、ゆっくりと俺を起こしてくれた。へびさんはまた俺の頭に乗ってくる。
ちょっとだけ恋しくて、レオ兄に抱きついた。
「ロロ、どうしたの?」
「なんれもないのら」
レオ兄からお日様の様な匂いがした。温かいレオ兄の体温と、トクントクンと聞こえる心臓の音が落ち着くのだ。
「ロロは可愛いなぁ」
そう言いながら、レオ兄は抱き締めてくれる。両親もこうして抱き締めてくれていたのだろうか? 俺は何も覚えていない。
「みんな待ってるよ」
レオ兄がヒョイと俺を抱き上げた。思わず首に手を回してスリスリしてしまう。俺は甘えん坊なのだ。
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