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☆第6回ESN大賞W受賞☆11/4④発売☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第2章 おともらちが増えたのら

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120ー思い出

「へぇ~、この弓も良い物だね」

「この弓も父に貰ったんです。だから僕も同じ材質でと思って」

「この材質はもしかして……」

「はい、ララマニの木です」

「それは良い物だ」


 近くにある森の奥、暗い場所に生息すると言われる木だ。暗い場所で育つからなかなか育たない。その所為で年輪が詰まった良材となるのだそうだ。

 その年輪の幅が狭く、緻密故に狂いが生じ難いので加工しやすい。その上、光沢があって美しいと言われている。

 弓の材に最適なものとしてよく知られているのだ。


「冒険者になってから買った物を、しばらく使っていたのですが、どうも手にしっくりこなくて。だから僕も同じ材質の弓が欲しいんです」

「そうだね、弓は使い慣れたものが1番だ。この弓だと、少し小さくなってしまったのかな?」

「そうなんです。威力も足らなくて」

「レオが大きくなったんだ。10代は直ぐに大きくなるからね」


 リア姉やレオ兄は、少しでも父さまに貰ったものと同じようにと思っているのだ。

 リア姉とレオ兄は、俺にはない思い出があるのだ。笑ったり泣いたり怒ったり。そんな普通の思い出があるのだ。俺はそれが羨ましいと思った。


「ロロがいつも持っているポシェットもそうだよ」

「れおにい?」


 俺がお出かけの時に、いつも肩から掛けている小さなポシェットの事だ。ちびっ子の俺が肩からかけて丁度いい大きさなのだ。特別な物でも何でもない。

 今は、チロの寝床になりつつあるのだ。最近は、チロがいないなぁと思ったら、ポシェットの中に入っていたりするのだ。お気に入りらしい。


「それは、母上が作ってくれた物だよ」

「しょうなんら……」


 俺は、玄関に置いてあったポシェットを手に取った。

 知らなかったのだ。記憶のない頃からいつの間にか俺が使っていた物だ。そうか、そうなのか。俺にも、母さまの思い出があったのだ。


「ロロ?」

「れおにい、うれしいのら」

「ふふふ、ロロはいつも母様に抱っこされていたわ。そしたら父様が、私もロロを抱っこしたいとか言い出して」

「アハハハ、そうだった。ロロの取り合いが始まるんだ」

「ボクの?」

「そうよ、ロロ。父様も母様もロロが大好きだったのよ」

「しょっか……しょっか」

「良い話だ」


 ふふふ、なんだか嬉しい。心がポカポカするのだ。

 俺はまだ赤ちゃんだったから、覚えていない。俺の知らない両親だ。

 俺が前世で何かで読んだ話だけど、赤ちゃんはただお世話をしてもらうだけだと生きていけない、成長できないみたいな話を読んだ事がある。

 両手で抱き上げられたり、話しかけられたり、愛情を与えないと駄目なのだと。

 俺が今こうして生きているのは、両親や兄姉達から愛情を掛けて貰ったからに違いないのだ。

 リア姉が俺を、ひょいと抱き上げた。


「ロロは父様と母様の大事な末っ子なのよ。私達の可愛い弟よ」

「りあねえ……」


 良い話をしているみたいだけど、手はしっかり俺のお腹をモミモミしている。

 俺の頭の天辺をスーハーと匂っているだろう。バレているのだ。


「りあねえ、やめれ」

「もう、ロロったら冷たいんだからぁ」


 これが無かったら良い姉なのに。


「ロロは、まだ赤ちゃんの時の匂いが残っているから、姉上はそれが恋しいんだよ」

「ボクはもう赤ちゃんじゃないのら」

「そうだね、大きくなった」

「本当よ」

「それでもロロは可愛いよー!」


 今度はディさんが抱きついてきたのだ。止めてくれ。


「あらあら、中でお茶をどうぞ」


 出た。マリーの得意技なのだ。「お茶をどうぞ」の一言で場を仕切ってしまう。

 みんなマリーの言う通りにしてしまう。ある意味、必殺技なのだ。


「まりー、ボクはじゅーしゅがいいのら」

「はいはい、りんごジュースでいいですか?」

「うん」

「わふッ」

「キュル」

「あらあら、ピカとチロもですね」

「うん、ほしいって」


 もうマリーは、雰囲気で分かるようになっているのだ。

 これは、あれだね。話せないけど、ペットが訴えている事は分かるのと同じなのだ。


「コケコ」

「ククッ」

「え、れおにいなの?」


 コッコちゃんが、レオ兄の足元にやって来て訴えているのだ。


「ロロ、コッコちゃんは僕に何を言っているの?」

「れおにい、こっこちゃんがれおにいに卵をあたためてほしいって」

「僕に?」


 みんなでお茶をしてまったりとしていた時なのだ。コッコちゃんが2羽やってきて俺にそう言ったのだ。

 この子達は多分、いつもよく話してくる子達だ。

 レオ兄に卵を温めて孵してほしいと訴えているのだ。


「ろうして、れおにいなのら?」

「コッコッコ」

「クククッ」


 コッコちゃんが言うにはだ。

 オレンジ色した雛達を統率するリーダーが欲しいのだそうだ。その為に、是非ともレオ兄に孵して欲しいのだと。

 目的は分かった。気持ちはよく分かる。だけど、それは何故レオ兄なのだ?


「ボクじゃらめなの?」

「コッコォ」

「クックゥ」


 あらら、酷いのだ。俺が孵すと、またやんちゃなオレンジ色の雛が生まれるというのだ。

 確かにそうだろうけども。嫌なのか? 駄目なのか? オレンジ色の雛達だって可愛いではないか。


「コケ」

「クク」

「あー、らってむいしきなのら」

「コッコ」

「クック」

「わかったのら」


 オレンジ色の雛だって可愛い。それは当然らしい。でも、なにしろ身体能力が親鳥よりも高い。

 今日だって、いつの間にかボアの上に乗って蹴りを入れていた。

 だから、これからが不安なのだそうだ。また勝手に暴走しないかと心配しているのだ。


お読みいただき有難うございます!

誤字報告も有難うございます。助かっております。

明日も読むよ〜と、応援して下さる方は、是非とも評価やブクマをして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします!

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[気になる点] 70話のロロの認識では、レオに兄の弓は冒険者になってから買ったもの(槍は父から貰った)となっていますが、 この話でレオ兄がディさんに弓は「父からもらったもの」と伝えています。どちらが正…
[一言] 指揮官で暴れオレンジが抑えられるのか?行動隊長だと一緒に暴れる気が。かといって軍師で別行動では意味ない気が。カリスマが必要?
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