117ーディさん早朝出勤
「ピヨッ!」
「ピヨヨッ!」
「ピピッ!」
雛達まで俺の足元に集まってきたのだ。もうわちゃわちゃと訳が分からない。
小さな雛と土人形が入り乱れて、我先にと俺の足元に寄ってくる。
「ちゅよかったねー」
取り敢えずナデナデして褒めておこう。
「もう、意味が分かんないわ」
「アハハハ。姉上、ロロだから」
「まさか、土人形と雛なのよ」
「わふん」
「え、ぴか。むりら」
土人形にもお名前を付けてあげてよと、ピカに言われたのだ。
そんなの無理だ。俺はそんなにホイホイと名付けできるキャパはないのだ。
どこかに出てくるブルーの髪の魔王みたいに、そうホイホイとカッコいいお名前を考えたりできないのだ。
「きゅうん」
「くぅん」
あ、土人形がめっちゃ残念そうにしている。さっきまでブンブンと尻尾を振っていたのに、ペトンと力無く下ろしているのだ。
「あとれかんがえるのら」
「わふん」
だってピカさん。俺には無理。無茶を言ってはいけないのだ。
「アハハハ! 5体もいるからね」
「レオにい、むりなのら」
「ゆっくり考えるといいよ」
「レオ兄、こいつが畑を荒らしていたのか?」
そう言いながら、ニコ兄がそこら辺に落ちていた小枝でツンツンと突いている。
それは、リア姉が亀さんにやっていたぞ。二人はやっぱ似ているのだ。
息がないのだから、もう突いたって動きはしない。
固まったように横たわっているボア。
倒して直ぐに血抜きをしておけば、美味しく食べられるぞ。こんな時は、ドルフ爺だ。
「どぉーるぅーふぅーじいぃー!」
どこにいるのだ? 俺はドルフ爺を大きな声で呼んだ。すると直ぐ近くで返事が聞こえたのだ。
なんだ、近くにいたのか。
「おう! 倒したか!?」
「ドルフ爺、ピカが倒したぞ!」
「よし! 血抜きするぞー! レオ、そこの木に吊るすぞ!」
「分かった」
ああ、なんだ。その為の鉈なのか。納得なのだ。
それをじぃーッと見つめる小さな小さなもの。
ピカを模した小さな土人形達なのだ。真剣な眼差しで見ているのだ。食べたいのかな? ドルフ爺に注目しているのか?
ドルフ爺はこの辺りの畑のドンなのだ。覚えておくのだよ。
「おぉぉッ!? な、な、なんだぁ!? これはロロが作っていた土人形じゃねーか!? なんで動いてんだッ!?」
ドルフ爺が5体の土人形に気付いたのだ。驚いている。だよね、俺もびっくりしちゃったよ。ふふふん。
「ドルフ爺、あの土人形が攻撃してたんだ」
「なんだとッ!? そうなのか!?」
「ロロが作ったんだぞ」
「またロロか!? こいつら強いじゃねーか!」
「うん、びっくりしたのら」
『また』と言われてしまったのだ。何故に?
ドルフ爺は、驚きながらちゃんと血抜きはしている。今日の晩ご飯はボア鍋だね。ご近所にもお裾分けが決定なのだ。
ご主人さまー! と、言いながら土人形達が走って来る。ちゃんと、5体いる。
コネコネと作った土人形。そう、土でできた人形なのだ。なのにどうして動いているのだ? 俺には理解できないぞ。
ピョンピョンと跳ねる様に走って来る。尻尾も千切れそうな位にブンブンと振っている。俺が拘って作った尻尾なのだ。小さいのに、手足を動かして走っているのを見ると可愛いのだ。
「ちゅよいんらね〜」
「アン!」
「キャン!」
鳴き声はまだ子犬みたいなんだけと。みんなであんなに大きなボアを、足止めできるなんて凄いぞ。走りながらジャンプしてキックまでしていたのだ。
「ロロ、朝ごはんが途中だっただろ」
「あ、にこにい。しょうらった」
「戻って食べよう」
「うん」
「レオ兄、ロロと戻るよ!」
「ああ! 気を付けるんだよ。もしかしたら、まだいるかも知れないからね! ピカ、頼むよ」
「わふん」
さあさあ、戻ろう。朝ごはんの続きを食べよう。あのオムレツ、超美味しかったから全部食べたいのだ。
ニコ兄に手を引かれて戻る。ピカや土人形達と雛達も付いてくる。
コッコちゃんファミリーだけでも大所帯なのに、5体の土人形がふえちゃったのだ。ご飯は何を食べるのかなぁ?
「わふぅ」
「え、しょうなの?」
「わふわふ」
「分かったのら。1日1回?」
「わふん」
俺が作った土人形達は、俺の魔力がご飯なのだって。だから、朝に1日1回魔力を分けてあげてね。て、ピカに言われたのだ。もし忘れても2〜3日は大丈夫らしい。逞しいのだ。
しかしなぁ、まさかのまさかだ。まさか動くなんて思わなかった。寝耳に水なのだ。
「土人形、いつの間にか無くなってたもんな」
「うん、しょうなのら」
「もしかして、畑のパトロールをしてくれてたのかな?」
なんですとッ? それこそ、まさかのまさかなのだ。
「わふん」
「え……ほんとに?」
「わふわふ」
そうなのか。それはでも助かるね。土人形達は、本当に畑を守ろうとパトロールしてくれているらしいのだ。今まで獣を家に近づけない様に撃退してくれていたのだ。
俺に危険が迫らないようにらしい。なんて健気なのだ。
みんなで家に戻ると、家の前にマリーとディさんがいた。
今日はディさん早いのだね。早朝出勤なのだ。
「ロロ坊ちゃま、ニコ坊ちゃま、無事ですか!?」
「マリー、平気だよ!」
ニコ兄が手を振っている。するとディさんが、眼球が飛び出てしまうくらいに目を見開き、びっくり顔をしたかと思ったら、ビュンッと飛ぶ様に走って来たのだ。
「ロロ!」
ニコ兄と手を繋いで、トコトコと歩いていた俺の両肩をガシィッと捕まえられた。これって前にもあったのだ。
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