110ーお見通し
濃いオレンジ色のコッコちゃんは、親コッコちゃんと一緒に張り切って歩いている。
同じ雛でも、歩く速さも体力も違う。
俺が卵を温めて孵した雛は、ディさんが言った通り身体能力が飛び抜けているらしい。飽く迄もコッコちゃんの雛としての話だけど。
女神が言うには進化しているらしいのだ。
ディさんやコッコちゃんと一緒に畑の中を行く。
「この辺りの畑もニコが手伝っているのかな?」
「しょうなのら。じぇ〜んぶなのら」
「凄いや……」
「でぃしゃん?」
ずっと、ディさんの目がゴールドに光っているのだ。と、言う事は精霊眼でずっと見ているのだ。
お野菜好きのディさんにとっては、大切な事なのかな?
「この辺りの畑はキラキラしている。大切に育てられているんだね」
「にこにいが、がんばっているのら」
ふふふ、ニコ兄を褒められると嬉しいのだ。
一面が緑色だ。濃い緑や、淡い緑。それが続く畑の中をコッコちゃんを連れてゾロゾロと歩く。
人が所々に見える。時々手を振ってくれるから、俺も手を振り返す。
その中に、ニコ兄とユーリアの姿があった。
「あ、いたのら。にこにいー!」
俺は大きな声で呼びながら、手をブンブンと振る。
それにユーリアが気付いて、ニコ兄に知らせてくれた。
「おー! ロロー!」
ニコ兄が俺を呼びながら、走って来る。麦わら帽子を被っていて、首から汗を拭く為の布を掛けている。
いい感じで陽に焼けている。健康的なのだ。
「ディさんも! どうしたんだ!?」
「こっこちゃんがみたいって」
「え? コッコちゃんなのか?」
「うん、しょう」
「僕も見たかったんだ」
そう言いながら、ディさんはお野菜を吟味しているのだ。
どっちのお野菜が良いかな~? とか思っているのだ、きっとね。
「やっぱ、ニコの畑のお野菜が一番だね」
「本当か? それは嬉しいぞ」
「ニコはきっと、無意識に魔力を使っているんだ。ニコの畑のお野菜には、ごく微量の魔力が含まれているから立派で美味しいんだ」
「え!?」
なんですとッ!? 魔力が含まれているですと!? お野菜に魔力とは、驚きなのだ。
「俺、なんもしてねーぞ?」
「だから、無意識にやっているんだよ。ほら、前に僕が言っただろう? まるで『緑の手』とでも言うのかな? てさ」
そう言えば、言っていたような、なかったような?
「むむむ」
ちょっと腕組みして眉間に皺を寄せてみるのだ。お目々まで寄ってしまう。俺は、納得できないのだよ。
「ロロ、どうした?」
「らって、にこにいはポカポカぐるぐるしてないのら」
「あー! ロロ! それを言ったら駄目だぞ!」
だって、本当の事だ。隠しても無駄なのだ。
「そうだろうね〜」
ディさんがそう言いながら、ニコ兄を横目で見る。ディさんには、お見通しなのだ。
「魔力操作が出来ていないから、無意識でごく微量の魔力を流しているんだ。気持ちだよ。大切に育てよう。美味しくなって欲しい。て、思いだね」
ほうほう。なるほど。なら、意識して魔力を流したら良いのではないかな? そしたら、どこのお野菜も美味しくなるのだ。
「むふッ」
「ロロ、良い事思いついたとか思ってんでしょう? 残念ながらそれが難しいんだよ」
「むじゅかしいの?」
「そうなんだよ」
ディさんが言うには、お野菜や食べ物は本当にごく僅かな魔力だと美味しく立派に育つ。でも、少し加減を間違えてしまうと悪い影響が出るのだそうだ。
「ヒューマンが使う魔法は、魔素が関係しているんだ」
あれ? また引っ掛かったのだ。
「でぃしゃんが、ちゅかうまほーはちがうの?」
「そうなんだよ。エルフが使う魔法は精霊魔法と言われているんだ」
エルフ族は太古の昔から精霊を敬い守り続けているのだそうだ。今は見る事が出来ないらしいのだけど。
エルフ族が使う魔法は、自身が持つ魔力と精霊の力を借りて発動するから、精霊魔法と呼ばれているのだって。
ヒューマン族が使う魔法は、大気中に漂っている魔素と呼ばれる不思議成分と、自分の魔力とで発動する。
精霊魔法に比べると威力は劣るらしい。
「だからね、魔力にも魔素が混じってしまうみたいなんだ。それが多くなると植物には良くないんだよ。蘞味が出たり、酷くなると枯れてしまったりするんだ」
「へぇ〜」
「知らなかったぞ」
「うん、魔法学を教わらないと、知らないだろうね」
ほう、ディさんは物知りなのだ。
「それより、ロロ。ディさんと一緒だからいいけど、1人で畑まで出てきたら駄目だぞ」
おやおや? 魔力操作の練習をしていない事を、突っ込まれない様にごまかそうとしてないか?
「うん、まりーにいわれたのら」
「おや? どうしてなのかな?」
「獣が出るんだよ」
「しょうなのら。ぴかもこっこちゃんもしってるのら」
「獣か……」
ディさんがぐるりと辺りを見渡した。瞳もゴールドに光っている。
「なるほど、確かに出て来ているみたいだけど……」
「ディさん、分かるのか?」
「ディさんは、大抵の事はお見通しなのだよ」
と、言ってまたバチコーンとウインクをしたのだ。だから、やめれ。いい加減に目がやられてしまうのだ。
ディさんは、自分がイケメンなのを自覚していないのかな?
もしかして、エルフ族の中では普通なのか?
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