表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

だいすき

「まま」

「うん? どうしたの?」


 ついこのあいだ三歳になったばかりの幼子は、母親ゆずりの大きな瞳に疑問の色を宿らせていた。


「ぱぱは?」

「え? パパならそこにいるでしょ?」


 端正な顔に笑顔を浮かべながらそう口にした母親は、リビングの壁に掛けられている色とりどりのフォトフレームを指差す。


「その青色のお写真のパパは、ママを海に連れて行ってくれた時のパパ」

「その隣の桃色のお写真のパパは、ママと”けっこんしき”をした日のパパ」

「その下の、黄色のお写真のパパは……ママのお腹に……あなたが来てくれた時の……」

「まま? だいじょうぶ? いたいいたい? なでなでする?」


 幼子は自身が普段そうしてもらっているように、もみじのような赤く小さな手で母親の華奢な背中をそっとさする。

 溢れ出た涙を見られぬように背を向けていた母親だったが、嗚咽を必死に堪えながらふたたび笑顔を作ると、先ほどまでと同じ優しい声色で言葉を続けた。


「……ごめんね。その黄色のパパも、他のたくさんのパパも、ぜんぶぜーんぶあなたとママのことが大好きな、優しくて素敵なパパだよ」

「うんっ! ゆみちゃんもままとぱぱだいすき!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ