妹のような
彼女においてはその後であっても何かにつけて僕の部屋のチャイムを鳴らしまくった。
その頻度は少ない日で二回、多い日に至っては二桁回近くといったところだろうか。
それは親元を離れて大学に進学したばかりの彼女にとって、新天地での生活が不安に満ち満ちていたから――というわけでもなさそうだった。
「このお洋服にこのバッグって合うと思いますか?」
ええ、とても素敵だと思いますよ。
「新しいスマホケース買っちゃいました!」
オレンジ色の星がかわいいですね。え? 星じゃなくてヒトデ?
「学校の課題なんですけど――」
ごめんそれだけは無理です。
「カレーを作りたいんですけど、お手伝いってお願いしてもいいですか?」
それは別にいいですけど。ただ、包丁を手に持ったままうちに来るのはこれっきりにしてください。
「このキノコって食べれるやつですか? 学校の駐車場に生えてたんですけど」
今すぐに捨てなさい。あと手もよく洗いなさい。
と、いったふうだったのだが、一体この僕のどこをどう気に入ってくれたのだろうか?
それはわからないままだったが、とにかく今や彼女は僕に非常によく懐いてくれている。
僕も僕で、突然できた歳の離れた妹のような存在を、いつしかとても好ましく思うようになっていた。