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526.魔王夫妻の喧嘩が噂に

 大公女達が子どもを産んだ頃から始まった出産ラッシュは、ようやく落ち着きを見せ始めた。これ以上、保育園を建てなくて済みそうだと胸を撫で下ろしたのは、シトリーを始めとする教育関係者。逆にドワーフ達は、もう終わりかと嘆いた。


 長寿種族も大量の子が生まれ、それぞれの領地から出歩かなくなった。というのも、子育ての手が足りないのだ。外を出歩く時間があるなら、同族の子の育児を手伝った。お陰で保育園が足りなくても、ぎりぎり回っていたのだが。


「今度は学校が必要です」


 保育園を卒園する子は、そのまま学校に通う場合が多い。つまり保育園の数が増えた分、学校の数や席も増やす必要が出てきた。


「使わなくなる保育園を学校に直そう」


 ルシファーの鶴の一声で、ドワーフ達が大喜びで動き出した。預かる子の数が減った保育園同士を併合し、代わりに使用しない建物を壊す。その様子を見ながら、ベールが淡々と指摘する。


「改装だけでそのまま使えたのではありませんか?」


「ドワーフがそれで満足すると思う?」


 返してもらった本を読みながら、ルキフェルが静かに切り返した。質問で返され、ベールは「確かに」と同意する。資材は足りているのだから、好きにさせた方が良い校舎を建てるだろう。


 幼子に合わせた高さや大きさの家具も、新しく作り付けた方が使い勝手もいい。何より子どもが伸び伸び成長できる環境を整えるなら、多少の出費は目を瞑るべきだろう。彼の結論はここに達した。


 魔族にとって、子どもはまさに宝。子宝とはよく言ったものである。自分の子でなくとも、同族ではなかったとしても。子宝は尊重され大切に扱われるべきだった。


「ところで、ルシファーは落ち着いた?」


「いいえ。まだ閉じこもって泣いていまして……魔王妃殿下が慰め」


 ガシャン!


「もう! ぐじぐじといい加減にしなさい!!」


 派手な音にベールは言葉を途中で止め、ルキフェルは肩を竦めた。魔王の私室から漏れ聞こえたのは、リリスの怒鳴り声だ。どうやら妻に叱られたらしい。


「悪かった、直すから……」


「しつこいのよ」


 ボコっと妙な音も続いたが、二人が夫婦喧嘩を始めたのは確実で。呆れ顔のベールが結界で音を遮った。この程度なら魔王城の防衛システムに反応しない。外へ魔王夫妻の喧嘩が漏れれば、城下町でいい噂の種になってしまう。ベールの判断は正しかった。


 だが、少し遅かったかもしれない。数日後に魔王夫妻が大喧嘩?! と誰もが知る話に発展するが、すぐに誰もが気づいて苦笑いした。


 魔王陛下は魔王妃殿下に弱い。尻に敷かれているので、謝って終わりだろう、と。


 その予測は過たず、大公達によって肯定された。噂を振り撒くのも、長寿で退屈する魔族の王の仕事のひとつ。そんな屁理屈を捏ねたルシファーが、ベールやアスタロトに呆れられるのは、さらに数日後だった。

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