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【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第29章 魔の森の大祭

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509.瑠璃竜王の力の一端

 降ってくる攻撃をすべて弾き返したため、ルシファーの周囲は酷い有り様だった。大地はささくれ立ち、風によって突き立てられた剣や氷が散乱している。高温で舐めた大地は光を反射し、火傷のような痛々しい姿を晒した。


 ドン、とデスサイズの柄を突いたルシファーがにやりと笑う。これで終わったかに見えたが、じっと見ていたベールとアスタロトは気づいた。次に反応したのはベルゼビュートと翡翠竜だ。己の結界越しの違和感に、ルシファーも眉を寄せた。


「遅い! いくよ」


 ルキフェルの号令に近い声に反応し、ルシファーの周囲に魔法陣が踊り出す。巨大な魔法陣が回るが、その文字や円を構成するすべてが、小さな魔法陣を構築していた。


「僕の最高傑作、発動!」


 ルシファーの背後や足元に残った攻撃跡が、魔法陣を構成するパーツだった。青白い光を放つ魔法陣は、ルシファーの姿を隠すように取り込む。


「綺麗ねぇ」


 感心したような声を上げたのは、リリスだった。イヴも大きく頷く。レラジェは「うわぁ」と呟き、顔をしかめた。


「これは派手なのが来るわ」


 防御に特化したベルゼビュートの結界が、ふわりと展開した。大掛かりなルキフェルの魔法陣の発動とほぼ同時だ。民を守るより、ルシファーとルキフェルの二人を隔離した。これで何か起きても、内部でケリがつくはず。


「ベルゼビュート、これでは戦いが見えなくなります」


 ベールに指摘され、慌てて結界を拡大した。狭い領域を囲えば、粉塵や煙で覆われてしまう。それでは魔王チャレンジの醍醐味が失われるからだ。彼女もこの戦いを楽しんで観戦しているのだから。


 多少の犠牲が出ても、それは前で観戦した者が悪い。自衛できないなら、後方で見るべきなのだ。自己責任の考えが徹底された魔族では、当然の対応だった。


「打ち返される角度を計算しての、二段構え……ルキフェルらしいですね」


 アスタロトは唸りながら、同じことが出来るか計算を始める。だがすぐに首を横に振った。ここまで緻密な計算を重ね、ルシファーの動きまで見通すくらいなら、そのまま次の攻撃をした方が楽だ。そう割り切って苦笑いを浮かべた。


「決着がつきます」


 ベールがやや低い声で呟き、じっと目を凝らした。光と煙、塵に覆われた魔王が姿を現す。空中で結果を待つ瑠璃竜王は、水色の瞳を瞬いた。


「我が身に傷をつけたこと、誠に見事な腕前だ!」


 ルシファーは、己の頬や腕に残る傷を隠さない。動けなくなるようなケガではないが、結界を貫かれた証拠を堂々と晒した。自己治癒が働いて、傷が薄くなる。


「うん、ありがとう。僕も満足した」


 ルキフェルはするりと人化した。背に羽を残したまま、ツノや爪は消し去る。勝敗はついたと、自ら幕を引いたのだ。


「ここまでやって、膝を地につけられないのかぁ」


 残念と笑うルキフェルは、すっきりした様子だった。リリスが手を叩く音が響き、一斉に拍手と喝采が贈られる。地上に降りたルキフェルの頭を撫でたルシファーは、デスサイズに体重を乗せた。まるで杖のように寄りかかり、溜め息を吐く。


「本当に出し切ってきたな。久々にヒヤリとしたぞ」


 最高の褒め言葉だと受け取り、ルキフェルも笑顔を浮かべた。


「次は、アラエルか」


 申し出た順番通り、鳳凰が前に進み出る。いつも背に乗せて運ぶピヨは、じっと彼の背を見送っていた。


「魔王陛下、胸をお借りします」


「鳳凰との戦いは一万年振りか? 期待している」


 アラエルはオレンジと赤に彩られた翼を大きく広げ、威嚇するように体を膨らませた。

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