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499.準備で誰もが大忙し

 魔族は楽しいことに目がない。お祭りと聞けば、数日前から仕事が手につかない程だった。それでも大きな問題にならないのは、彼らの寿命が関係しているのだろう。


 短くとも数百年。長いと数万年を生きる彼らにとって、数日程度は瞬く間に過ぎる。お祭りは魔王城の中庭と城門前の広場を開放することに決まった。いつもの定番の場所だ。


「テントはどうします?」


「数カ所でいいわ。魔法陣で固定するわね」


 テントを運んだデュラハンの問いかけに、ベルゼビュートは明るく応じた。今回の現場指揮は彼女が任されたのだ。張り切るベルゼビュートは、数箇所に休憩用テントを用意した。柱やロープで固定すれば、子どもが転ぶ。母親になった経験を活かし、テキパキと整えていく。


 城門自体も飾り付けが行われていた。こちらはベールの担当らしい。


「用意した房はこちらに。その布は広げて旗の向こうにある手すりへ掛けてください」


 現場設計を終えたルキフェルは、城門の陰で睡眠をとる。完全に昼夜逆転の生活になっていた。水色の髪はかなり長くなり、肩甲骨の下まで届く。解いた髪を風に遊ばせ、器用に座ったまま眠った。


 ベールは時々、養い子の様子を見ながら差配を続ける。城門はお祭りでステージとして使用される予定だった。開催宣言をルシファーが行う。その後使わない城門で、各種族が演し物を企画していた。


「これは却下。炎を使うのは危険です。こちらは改善を前提で許可しましょう。ただし、角を丸く削るよう伝えてください。剣舞? 今回は子どもが多いので、切れない剣なら構いません。は? 踊るだけなのに本物は要りませんよ。きちんと指導しなさい」


 一番忙しいのはルシファーだが、大変なのはアスタロトかも知れない。各種族との調整や、演し物の申請確認に追われていた。その頃の魔王様は、森で狩りの真っ最中だ。


 海へ行き、祭りの通達を行う。参加希望者は巨大プールへ転移させる予定でいた。プールは池を作って改良する。その後はひたすら食料調達だった。


「アドキス、そっちはどうだ?」


「追い立てます!」


 巨大化した翡翠竜が魔物を追い掛ける。驚いた魔物が走るのを、ルシファーが一網打尽にした。さすがに全滅させるとまずいので、ニ割は逃す。動物もかなり増えたらしく、一緒に捕獲された。


「足りるかな」


「あ、ワイバーンです。コカトリスと喧嘩してますけど」


 コカトリス? 一時期減って心配したが、また増えている。数を申告すれば、ある程度は間引いても構わないはず。魔力で網を作り、翼を広げて空で待機した。飛んでくるコカトリスを捕まえながら、網に混じったワイバーンを排除する。選別しながら、ワイバーンを地上へ打ち落とした。


「ワイバーンは一定数の駆除申請が出てたな」


 先日処理した申請書を思い出しながら、半数ほど落とした。翼膜を切り裂いたので、ジタバタ暴れるワイバーンを、魔熊の親子が襲う。狩りの練習らしい。母熊が見守る中、子熊達は勇猛果敢に飛びかかった。翼まで入れると倍近くある、凶暴な鳥を仕留めて誇らしげだ。


 すぐに他の魔獣や魔物が集まり、手分けして持ち帰る。その度にルシファーに挨拶をした。応じながら、さっさとコカトリスの毒抜きを終わらせる。


「では戻るか」


 ワイバーンも数匹掴んだ翡翠竜アムドゥスキアスが飛び、白い翼を広げた魔王が並ぶ。見送る魔熊の子は伸び上がり、興奮した様子で大きな声で鳴いた。


 その頃、リリスと大公女達は祭りのために、道具の点検をしていた。


「シャイターン、戻しちゃダメよ」


 覚えたばかりの魔法が嬉しいシャイターンは、用意した食器や道具を戻してしまい、母リリスに抱き上げられる。おいたはダメ、叱られながら大きな欠伸をした。

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