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【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第27章 春の芽吹き

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476.あなたが容疑者なのです

「失礼します。ご報告……っ!」


 入室したのはサタナキア将軍だった。慌てて回れ右して帰ろうとするが、ルシファーに呼び止められる。


「いま、オレを見て帰ろうとしなかったか?」


「全員お揃いなので、重要な会議中でしたら後にしようかと」


「報告があるのに?」


「急ぎではございません」


 頑なに誤魔化そうとするサタナキアだが、やはりルシファーを見ない。


「構わん、報告しろ」


 命令されれば、断れない。魔王軍の総指揮官はベールだが、事実上の最高指揮官は魔王ルシファーなのだ。軍属である以上、命令に逆らう権限はサタナキアになかった。


「……行方不明者の捜索ですが、犯人と思わしき人影の目撃情報が、またしても一致しました。見間違えではございません。対策をお願いいたします」


 最低限の報告だけを済ませ、頭を下げて反応を待つ。ルシファーは無言で腕を組み、視線をルキフェルへ向けた。


「サタナキア、ご苦労だった。下がって良い」


 ルシファーの許可が出て、彼はそそくさと執務室を後にした。ルシファーに内緒で話を進めることに関し、将軍であるサタナキアに命令できるのは……大公だけだ。


「だから僕は嫌だったんだよ、もう!!」


 癇癪を起こしたルキフェルがそう言い放ち、あっさりと状況を説明し始めた。隠し事が苦手な性分に加え、自分が主犯のように問い詰められる状況が気に入らないのだろう。


「ルシファーの指摘通り、獣人の行方不明事件を隠してたよ。行方不明になったのは、現時点で五人」


 片手を広げて人数を示したところで、溜め息をついたアスタロトが口を開いた。


「仕方ありません。ご説明は私が行います。悪かったですね、ルキフェル。ベールも帰っていいですよ」


「……あたくしは?」


「帰って構いませんが、そもそもベルゼビュートは無関係でしょう」


 苦笑いするアスタロトに指摘され、やっぱり残るとソファーに腰掛けた。面倒だから関わりたくない反面、自分だけ知らないのも癪に障るのだ。


「ルシファー様、ソファーに座りませんか」


 むっとした顔で腰掛けたルシファーだが、組んだ腕は解こうとしない。気に入らないと態度や表情で突き付ける主君に、アスタロトは覚悟を決めた。


「実は……ルシファー様が容疑者になっているのです。それで事件や事情の説明を伏せさせていただきました」


「は?」


「容疑者……」


 不満の顔が一転、ルシファーは間抜けな声を上げて固まる。ベルゼビュートも単語を繰り返した唇を、慌てて手で覆った。いけない言葉を発したと言わんばかりの態度だ。ちらちらとルシファーの表情を窺った。


「行方不明者はすべて獣人。猫獣人が二人、残りは虎、熊、兎です。全員、魔の森に立ち入ったことが確認されています。問題はその際、白い人影が同行していたことです。証言は複数人から上がり、誰もが口を揃えて断言しました――顔は見えませんでしたが、『魔王陛下のような純白の長い髪』だったと」


 ベルゼビュートは「うそぉ」と呟いて、またもや己の口を手で覆った。疑いの眼差しを受けながら、ルシファーは考え込む。当然、心当たりはない。魔王と見間違うほどの純白……心当たりがなかった。一番近いのは銀髪のベールだが、髪の長さが全然違う。


「長かったんだな?」


「はい。長身で膝下まで伸びていたようです」


 淡々と説明するアスタロトは、無表情だった。魔王ルシファーを疑っているとも、逆にまったく関係ないと信じているとも取れる。いや、完全に信じていたら相談したはず。ルシファーは溜め息を吐いた。


「オレじゃないぞ」


「さあ、どうでしょうね」


 肯定しないアスタロトの口元に、笑みが浮かんだ。

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